特殊能力、開発します。 2
だんだん、本筋に入ります。
その変な会社(?)はジャンクフード屋と同じビルに入ってた。
僕は1F(ジャンクフード屋は1Fにある)からエレベータで最上階(8F)へ。
「ここか……特殊能力開発研究所(株)だって。怪しさ爆発してる会社名だね」
お目当ての部屋を見つけたけれど、ドアを開ける勇気が湧いてこない。
だって、あまりに社名が怪しすぎるんだもの。
どう見ても、通常のESP訓練所や訓練学校の関係じゃない、普通の事務所に思える。
もしかしたら、詐欺?
そんな事を思い、ドアを開けるのを躊躇してたら、突然に目の前のドアが開いた。
「興味あるんじゃないかな?入りたまえ」
そう言って、眼の前の男性が僕を招き入れる。
びっくりしたけれど、僕がドアの前に立ってたから、興味を持って来たんだろうと推測したなと思われる。
おどおどしながら部屋の中へ入ると、その会社の経営方針やら特殊能力開発の様子やらがパネルになって表示されているのが目に入った。
「どう?君の精神は無限の可能性がある。最初の数回は無料だから、体験だけでもやってみないか?まあ、今日は君の潜在能力だけを計測させてもらうんで、能力開発は次回からになるんだけど」
にこやかな顔をして、その男性は僕に語りかける。
まあ、今日は計測だけとか言うから、体験だけやってみようかな?
「はい、とりあえず無料体験だけやってみます。どのくらいの時間がかかりますか?」
一時間もかからないということで、僕は変な形をした寝椅子に近いようなものに座らされる。
変なコード束なんかは伸びてないので安心したけれど、この寝椅子でデータを取ってるみたい。
およそ20分少々、退屈になってきたところで、計測作業は終了。
「お疲れ様、こっちもデータ解析の時間があるんで、今日はこのまま帰ってもらって良いよ。あ、これ、1Fのジャンクフード屋で使える割引券。半額になるんで、使ってね」
おお、これは儲けた!
思わず知らず、良いものを貰ったんで、僕はウキウキ顔で部屋を後にする。
次の日。
放課後、僕は特殊能力開発研究所(株)のドアの前にいる。
ドアをノックして、ガチャリとノブを回し、僕は部屋の中に入る。
「こんにちわ、昨日、測定してもらった者ですが」
「お、早速来たね。じゃあ、計測結果の検討と、君の能力開発についてお話しようか」
昨日も対応してくれた男性が、話しかけてくる。
ネームタグに「郷」って書いてあるのが目に入った。
「あの、珍しいですね、郷って普通は名前に付けたりしますけど」
「そうだろ。珍しいんで一発で憶えてもらえるんだよ、これが。営業としては嬉しいね」
そうか、営業職としてはお客に名前を憶えてもらえるのが利点となるんだ。
そんなこと思いながら僕は他のスタッフさん(女性)が書類の束を持ってきて郷さんの横に座るのを目にする。
ネームタグには「ライム」と書かれてる。
まあ、顔立ちも、この国の女性一般の顔立ちじゃないし、外国人なんだろうな。
カタコトで話すかと思いきや流暢に話しかけてくるのでびっくり。
「では、東堂 卓さん、ですね。あなたの計測データについてお話します。それから、これからの特殊能力開発スケジュールについても、お話します。スケジュールについては、そちらのご希望も取り入れることは可能ですので、なんなりと言ってくださいね」
へぇ、良心的だな、ここ。
最適な訓練や伸びがいのある方面しか訓練しない軍や訓練学校が多い中、こういうのは珍しい。
「あ、はい。まあ、できれば、なんですが……僕は微弱なテレパシーしか持ってないんで希望としてはサイコキネシスやテレキネシスみたいな力が欲しいなと……」
僕が希望を言うと郷さんが、
「ふむ……受動的なテレパスとしては伸びしろは高いけれど……潜在的な力としては能動的なテレキネシスやサイコキネシスも持ってますね、東堂さん。ご希望は能動的な力の方を開発したいとのことですが、どうです?このさい、全般的に能力を高めるってことで」
え?ESP能力を新規開発して旧来の力も含めて全般的に伸ばすって?
「そ、そんな事、可能なんですか?僕の知っている限り、弱い力を少しづつ伸ばすことは出来ても新しい力を開発して全般的に伸ばすなんてことができるとは思えませんよ?」
そう、そんなこと聞いたこともないし、何処の星でも国でも、そんなことが可能になるような理論が発見されたなどというニュースは聞いたことがない。
こりゃ、本当に騙されたかな?
「普通は無理だと思うでしょ?ところがどっこい、うちの会社の新型機器なら可能です。ただし、ごくまれに相性最悪で無理な人はいるんですが。でも昨日の計測時に君は頭痛がするようなことはなかったでしょ?それなら大丈夫です」
昨日の計測作業は、その新型機器との相性も測ってたのか。
ってなわけで僕は初日とは違った、フード型をした枕(?)を備えたベッド状のものに寝かされる。
ベッドに寝た状態でフードが降りてきて、どうやるのか僕の体の形状に最適化された状態に変形したベッドと、頭の前後にフード状の枕が挟まった状況が出来上がる。
「あ、眠かったら寝てて良いですよ。約一時間後、自動的に終了となりますので」
あまりに良い寝心地で、僕はぐっすりと寝てしまった。
気がついたら開発作業とやらの一日目は終了。
僕は熟睡したようなスッキリした頭で家に帰った。




