特殊能力、開発します。 1
新しい話、始まります。
まずは日常風景から。
ここは、とある銀河の、とある星系。
別段、特徴のあるような銀河や星系じゃない。
そこに、ここだけ変わった星があった。
その特徴とは、星の住民の特殊能力。
いわゆる、超能力というやつなんだけど、星の住民の約8割を超えているESP能力保持者率。
まあ、殆どが極端に集中してようやく目の前の人物の表層意識が読めるとか、脂汗流してようやく1gの物を浮かせられるとか、そのレベル。
しかし、その中には異常とも言えるレベルの超能力者もいるのは当然で……
「どうだ?もう降参して土下座しろ。こんなところで死んでしまったら、何も良いこと無い人生だろうが」
ボロボロの僕を相手に、相手は勝ち誇る。
くっそー、僕にも力さえあれば!
最初は他愛もない諍い。
列に割り込んだとか、そんなこと。
相手も僕も意固地になり、喧嘩になったらいきなり相手がサイコキネシスあるいはテレキネシスを発動してきた。
僕のESPレベルなんて、最低のE。
サイコキネシスもテレキネシスもありはしない、微弱なテレパシーのみ。
極端に集中して、ようやく相手の考えがぼやーんと見えてくるような、読心術のほうが正確だろうというような微弱な力でしか無い。
相手の方は、多分だがテレパシーは持たず、サイコキネシスかテレキネシス。
それも、一瞬で発動させて、ここまで相手を傷つけることが可能になるなど、どう見てもレベルC。
才能の違いというのを、まざまざと見せつけられた僕が、それでも立ち上がろうとしていると、どこかで警察官の声が。
どうも、野次馬が警察に電話してくれたようだ。
「けっ、命拾いしたな。これからは、弱いくせに粋がるなよ!」
捨て台詞を残して、スタスタと逃げていく相手。
僕は警官に助けられ、事情を聞かれる。
周囲の人が、僕が相手に割り込みを注意したのが最初だと証言してくれた。
僕は、擦り傷や切り傷(あまり深くはなかったが、スッパリ切れている皮膚が数箇所あった)の手当をしてもらい、家に戻る。
体中が痛かったけど、僕はとりあえず食事を取り、お風呂は無理ということで、早めに寝ることとする。
ベッドに寝てると無性に腹が立って、怒りが湧き上がる。
ああ、もう少し、僕に力があったら……
理不尽な要求や、今日みたいな悪いやつに負けるようなことはないだろう。
しかし、ESP能力ってのは先天的な能力だというのが学校でも教わる常識。
一応、訓練すれば伸びるんだというのは経験的にあるようで、軍や専門的な訓練所、研究所もあるんだけど、そこでもレベルが極端に伸びるようなことはないというのが定説。
僕の最低レベルEは、どうやったってDレベルに到達するのが関の山で、その上のCレベルなんてのは遥かな高み。
生きてるうちにCレベルになるなんてのは無理な話だと、我ながら思ってる。
まあね、あいつはCレベルの念動力持ちだけど、世の中には、いや、歴史的には、それ以上のレベルの人たちだっている(いた)
今、生きてる人たちの中ではレベルAという、もう人間離れしてる人たちが、片手で数えられるくらいだけど存在してる。
過去には、それを超える、もうESP能力が肉体を持って生きてるとも言える、レベルSなんて人たちもいたと記録には残ってる。
僕の力が小さいのは理解してるんで、レベルAやSなんて無茶は言わないけど、少なくともレベルBになったら……ってな淡い希望は抱いてる(無理なことは承知してるけれど)
朝、切り傷は別として擦り傷は治ってたんで、学校へ。
登校時、校門に立ってた教師に怪我の理由を聞かれ、
「ちょっとしたトラブルです。相手が念動力持ちだったようで……」
そこまで言うと、教師は納得したという顔で通してくれた。
僕は正義感が強かったんで、こういうトラブルには、けっこう遭ってるから。
授業は普通に終了し、下校。
帰りに、少しお腹が空いたのでジャンクフード屋へ。
この店、店名が「ジャンクフード屋」という、あまりに洒落がキツイ、フードショップ。
粉物、ハンバーガー、揚げ物、ヌードル系と、あまり毎日続けると体に悪そうな食べ物ばっかり売ってる店。
飲み物も、刺激の強いものを中心に、カロリーも高めなものばかり。
学生や、若い人たちが主として集まってる店。
まあ、金のない奴らが多いんで、その点でも単価の安い、カロリー高めの食事が欲しい人たちには、うってつけなんだろうね。
その店で、小腹を満たすため大きめのハンバーガーを食べていると、ふと目に着いたチラシが。
そこには……
「あなたの潜在能力、目覚めさせませんか?自分で気づかない力、開発します」
ってなアオリ文字が。
特殊能力開発研究所?
怪しさ爆発の名前だけど、最初の数回は無料で受講できると書いてある。
気に入って本気で受講するとしても、月数千円で大丈夫と……えらく安いが、大丈夫か?
まあ、自分の微弱な力が少しでも強まるなら……
という気楽な考えで、そのチラシの某研究所とやらへ行ってみることにした。