男って、つらい生き物です…… 3
通常の生活描写に混じる違和感……(笑)
朝の散歩も終了し、ティゲルは店の奥へ。
「おじちゃん、おばちゃん。忙しかったら手伝おうか?」
気軽に声をかけるティゲル。
しかし、名物「宇宙ようかん」と「宇宙抹茶」は、誰にでも作れる、淹れられるというわけでもなく……
「ありがとね、ティゲルちゃん。でも大丈夫、フロラちゃんも手慣れてきてるんで、この頃は宇宙抹茶もフロラちゃんが率先して淹れてくれてるから」
「店内の方も忙しかったら……って、こんな四角四面野郎じゃ客が怖がっちまうな、すまねー。どうしても、愛想は雑になっちまう」
顔にトレードマークのような特徴があるティゲルに客あしらいが出来たとしても、客のほうが一目散に逃げるだろう。
おばちゃんから、朝イチの糖分補給と言われて、宇宙芋ようかんをもらったティゲルは、自室へ戻る。
「はー、このご面相じゃ、茶屋での客あしらいは無理だよなー。まあ、腕っぷしだけは強いんで、つぶしはきくんだがな、俺。それにしても、だ。この金額、どうしたら良いのかねー……俺には過ぎた金額なんだよなー……」
古びたスーツケースから、大事そうに通帳を出すティゲル。
パラパラとめくる……
ほとんどは、入った途端に出す自転車操業状態。
しかし、最後に入金された金額だけ、桁が段違い。
「こんなの、俺にどうしろと?人生、アッパラパーで生きてきた俺だぞ?自慢じゃないが、生きていくだけなら無一文でも俺は生きていける!しかしなー、こんな大金、どうしろってんだ?あの人は……」
一山当てたと豪語していたティゲル。
その言葉は嘘ではなかった。
しかし、その裏には誰かがいるらしい……
貴金属鉱脈を含んだ小惑星など、探しても見つけられるものではないだろうに……
笑顔の中に小さな矛盾と苦悩を抱えながら、ティゲルは一日を過ごしていく。
また次の日。
ティゲルは、あてもなくブラブラと町の周辺を散策する。
旧くからの店を見つけては久しぶりと挨拶し、新しい店を見つけては始めましての挨拶。
あっちこっちで買い物をして顔と名前を売りまくる。
「まあ、こういう時に懐があったけーのは有り難いわな。その点に関しては、あの人に感謝だな」
お昼時の忙しさが一段落し、茶店に客もまばらになった頃。
ティゲルは差し入れ代わりに、あちこちで買ったものを厨房に。
「いつも、店の商品じゃ飽きるだろ。ちょいと遠出してきたんで、色々買ってきた。新商品の参考にでもしながら、みんなで食ってくれや」
「ちょいとティゲルちゃん。でっかい袋に……どんだけ入ってるんだい、こりゃ。明日の休憩分もあるじゃないか。ちょいと、あんた!今日中じゃ食べ切れないから、小型保管庫へ入れといておくれ。今日明日で悪くなりはしないだろうけど、念の為だよ」
「ん、それがいい。ティゲル、ありがとな。おめー、人が変わったみてーだが。ホントに、あのワルガキが大人になったようなティゲルか?数年ぶりに帰ってきたら別人じゃねーかよ」
「いやいや、人間は変わるもんだ。孔子いわく、君子は豹変す、てなもんだな」
「お兄ちゃん!本当にお兄ちゃんなの?あたしにも信じられないくらい、お兄ちゃん、変わったわよ」
「それを言うな、フロラ。人間、とてつもないことに出会うと変わらざるを得ないってことなんだ。もう、ワルガキのティゲル兄ちゃんじゃないからな」
トントンと軽い調子で階段を登り、ティゲルは自室へ。
後に残されるのは、ポカーンという表情の3人。




