宇宙台風 その10 最終話
最後は、ちょっとお涙頂戴のラストになっちゃいました……
宇宙台風消滅のニュースは、それこそ超光速で銀河全体に広まった!
「カワギシくん、どう思う?これって、やっぱり、僕の思う存在が介入したのかね?」
「うーん……神ならぬ身には判断のしようがないんですが……結果だけ見ると、かの存在と宇宙船が介入したってのが正解なんでしょうけどねぇ……これが事実だとしたら、安心すると言うよりも、空恐ろしくなるんですけどね」
「え?そりゃまた、どうして?」
「だって、考えてもみてくださいよ。テイラー様にも成しえない事をなせる存在、宇宙に生きる存在としてはごくごく小さな存在である我々としては宇宙台風にすら影響を及ぼせる存在って、もう神にも匹敵する存在ですよ……それこそ、テイラー様の統一銀河教団を崇拝するより現世利益が確約されるってもんでしょ?」
「カワギシくん、その答えは、ここだけにしてくれよ。まあ、確かに大正解なんだろうけどね。もう、統一銀河教団の意味も無くなっちゃたしなぁ……」
「ストーップ!それ以上は言っちゃいけません!前にも言いましたよね、今、テイラー様に飽きられてしまったら、我々と信徒、教団そのものが崩れますよ」
「だよねぇ……これからは嫌々ながらも教団のために働かなきゃいけないのかぁ……」
「あのですねぇ……今現在、いくつの星系と支部が、この銀河にあると思ってるんです?それこそ、大きさとして、教団員だけで小さな星間帝国くらい成立するんですよ。そのトップにある貴方が、やる気を出してくれなくてどうするんですか?!」
気分のままにあっちこっち仕事と仕事を変えるのが趣味でもあったテイラー。
しかし、それも宗教の教祖でおしまいとなりそうだ。
後は、早く身を固めてしまえとばかりに周りから攻められる運命が待っているとは、それこそ神ならぬ身のテイラー……己の未来は予想できなかった……
変わって、こちらガルガンチュア。
《だから、そうじゃなくてね……ああ、それじゃ宇宙台風に逆戻りだ!……ちょっと待ってね……》
「エッタ、バトンタッチだ。ようやく話が通じて、自分が精神生命体の幼体だって納得してくれたんだが、ちょっと厄介でね、この子。どうあっても、自分の居場所は、ここ、3次元宇宙だと言い張るんだよ。まあ、親とはぐれて宇宙をさまよってたんで、食べ物も玩具も、全てがこの宇宙にあると思いこんでしまったんだろうなぁ……説明と、超空間からのエネルギー摂取方法、教えてやってくれ。まずは、それからだ」
「はい、ご主人様、了解です。はいはーい、精神生命体の赤ちゃんですよねー、あー、可愛い可愛い。大きさも、中心部だけなら直径100km前後じゃないですか。まー、将来が楽しみですねー……」
「ふぅ……何とか宇宙台風状態から通常の精神生命体状態へと落ち着かせたぞ。しかし、俺もまさかとは思ったが、あの宇宙台風が、幼体の精神生命体が興奮状態になった状態とはねぇ……」
お疲れ様です、と声をかけながら、ライムと郷が。
「はい、お茶です。今回は、いつにも増して緊張感、漂ってましたよね、キャプテン。そんなに厄介ですか?精神生命体って、宇宙の管理者たちの一族じゃなかったでしたっけ?」
「ああ、ありがと、ライム。あー、麦茶が美味い……厄介ってのはね、相手が幼体だからだよ。赤子と地頭には逆らうなって諺もあるくらい、いくら精神生命体とは言え、物の道理も何も理解できてない赤ん坊状態じゃね。宇宙台風の状態から落ち着かせて、根気よく話を聞いてみれば、生まれたのは、ほんの数十万年ほど前だとさ。親が近くに居たんだけど、突然の宇宙嵐で保護空間ごと銀河団を超えちゃったらしいんだな。超自然の力とか言われて恐れられてたらしいんだが、手近な星やデブリを食い尽くしてしまって、食欲のあまり、宇宙台風状態で移動しつつ周辺銀河を食べてたらしい」
「はぁ、何と壮絶な生命力ですな。で、師匠。ひとりぼっち迷子の精神生命体の赤ちゃんですが、どうする気ですか?」
「ああ、それは考えてある。さすがに若すぎて、今のあの子では、仲間と連絡とることも不可能だろう……だから、俺がやってやるのさ」
《宇宙の管理者!ここまで思考次元上げたら聞こえるはず。さまよってた、君らの仲間だろうと思われる幼体を発見、保護しつつ、超空間エネルギーの摂取方法も教えている。一刻も早く、引き取りにきてくれないか!》
「さて、これで返事待ちとなるわけだが……」
〘噂のガルガンチュアと、お前が度々、我らの会議で議題となるクスミか。今回は礼を言おう、その子の親からは再三再四、救助と捜索の要請が出ていたのでな。その子が食い散らかした周辺銀河も、我々で修復するので安心してくれ。しかし、そっちに行っておったとはな……想像以上の強度を持つ宇宙嵐が保護空間を襲ったとみえる……まさか、超銀河団を超えた先に飛ばされるとは……〙
「我が主。今、何かの大いなる力と思われるものにより、より小さな力が吸収されて、無くなりました……精神生命体でしょうか?」
「ああ、そうだ、プロフェッサー。呆れるほどに遠くまで飛ばされてしまった赤ん坊を保護しに来た、宇宙の管理人たちの一人だよ……さよなら、赤ちゃん。親御さんが待ってるぞ」
赤ちゃんが居なくなっちゃたぁ!と叫ぶエッタをなだめつつ、楠見は、あの赤ん坊の将来を思うのだった……




