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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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星間戦争 3

今までのストーリーとは少し違い、この話でガルガンチュアの登場は無い予定。


一部のものが悪夢とする、そして、また一部のものが待ちに待っていた瞬間が来る。


「艦長、探査反応ありました。この前の戦いで脱出した敵の残存兵がいる可能性が高いと思われます。ただし、敵艦の反応としては小さく、宇宙戦闘機、あるいは搭載艇のような小型艦だろうと推察されます」


ここは、あの搭載艇で逃げてきた勢力とは敵対している連合勢力の宇宙艦隊。

殲滅したはずの敵艦隊に、搭載艇で脱出した者たちがいるようだと戦場検分の結果が出たため、その追跡を行っていた艦隊である。


「複座の宇宙艇だとしても、そんなに多い数は逃げられなかったと思ったんだがな。まあ良い、今度こそ完全に息の根を止めて、この宙域から、あの汚れた奴らを駆逐してやるまでだ」


宇宙戦争は星系と星系の距離の関係もあり、やたらと長い年月の戦争となる事が多い。

この戦いもそうだった。

最初は珍しさと相手の慣習や文明が変わっているのが面白く、互いの交流が活発になるが……


こいつ、マナーも常識も無い社会にいるのか?まるで原始人じゃねぇか。


とか、


こいつ、臭すぎて近寄る気にもならん!この臭さでは、俺の星には近寄れる者はおらん!


とか、通常だったら相手を思いやって隠すような(自分にとっての)悪い点を堂々と相手に言い放つという、社会的にもマズイ事態が起き始める。

まあ、まだ星系政府の上層部がマトモな者ばかりなら、こんな最悪な事態にはならなかっただろう。


それは、どちらから言い始めたのか定かではない。


いつの間にか、相手星系の悪感情だけが独り歩きしていて、それがついに上層部、政治家のトップである大統領にまで飛び火した。


「もう、我が星にとり、あの野蛮人たちの星は交渉相手にはなり得ないと判明した。奴らは、生まれついての野蛮人。それ故、我々の奴隷として教育を受けさせてやるのが愛情ではなかろうか」


などと、国家のトップが言い放つ。

売られた喧嘩は買うぞとばかり、


「あの、体臭も臭ければ口臭も臭い、そればかりか、それを倍加しようと臭い匂いのする汚水を身体に塗りたくっている歩く大迷惑な星の人間など、一度滅ぼして、我々の社会の常識とマナーを教え込んでやろうではないか、諸君!」


と、銀河規模でメディアを発行する会社へ、わざわざ記者を自分の星へ招待させてインタビューを受けさせるということまでやる始末。


互いの文化に「侮辱されたら、殴り返せ」という脳筋思想があったのが災いし、とうとう互いに宣戦布告。

互いの近隣星系を巻き込んで、大規模な星間戦争が始まって、早や百年……


もう、何の理由で戦い続けているのかも知らない世代がいる中、戦争は日常化して、互いの兵には、敵は倒さねばならぬエイリアンと刷り込み洗脳をするまでになっていた…


そんな、恨みは深い敵同士が、宇宙文明にようやく届いたばかりの星を巡って争うこととなる。


「艦長、跳躍終了予定ポイントに、小さいですが宇宙戦闘機の集団らしき小隊が待機しているようです。逃げた搭載艇に積まれていた数とは、とても思えぬほどの多数ですが、これはもしかして、我々の調査が及んでいなかった文明の星系防衛隊では?」


艦長は、敵は憎いが、そこまで自分の感情を優先させるような浅慮な人物ではなかった。


「艦隊、現在のポイントで停止だ。宇宙戦闘機など、この艦隊で蹴散らすのは簡単だが、敵の勢力ではない未知の文明であれば話は別だ。ここはコンタクトを取り、向こうと話しあってみようと思う。うまくすれば、逃げた敵の残存兵を引き渡してくれかも知れん」


この時点で、宇宙文明最初期とも思えるような星系での戦闘は、とりあえず回避された。

しかし、問題は山積みだ。


互いに相手を許すなどという段階は、とうに過ぎている星系の争いに巻き込まれた格好となったが、それでも宇宙へ出る助けをくれた恩人を裏切るわけには行かず、かと言って、見るからに性能差がありすぎる相手の宇宙艦隊に、こちらから攻撃を仕掛けるわけにも行かず……星系政府の上層部は、ほとほと困り果てていた……


ちなみに、言葉の問題はクリアされている。

戦争をやっていても互いに宇宙文明として発展しているので、共通の宇宙語が通じる。

だからこそ、文化が違いすぎるのは厄介だが……


宇宙軍司令となっているアンドレード司令は、個人的には戦いたいのだが、そうなると星系そのものの滅亡が待つだけなのは常識として理解できる……苦しい決断だが、戦いを避けるためには、


「大統領、私と部下二人、この星に今までお世話になりっぱなしだった3名を、敵艦隊へ引き渡してくれ。我々がいなくなれば、奴らは、この星系へ手出しする意味も、理由すら無くなる」


一大決断ではあるが、大統領は否と応じる。


「どうしてだ?!我々3名が星系を去れば、この星に敵対する勢力は事実上、無くなる!そうすれば、さすがにあの艦長も無法はせんだろう」


大統領は、重い口を開く。


「そうして得た平和が、どれだけ続くと?貴方方との交渉記録は全て公開しているし、我が星系が、あちらの艦隊にとり敵方となった証拠など、いくらでもある。なにより、我々の文化が裏切りや変節を許さないのです」



「……という事で、我が星系は、貴方方との敵対を決定しております。抵抗は無駄でしょうが、例え小さなレジスタンスでも、貴方たちには迎合しないでしょう」


大統領は、敵宇宙艦隊に向け、そう話す。

今は小さな力しか無いが、無害だからと放っておくと、そのうち噛み付くぞ、と、痩せ犬が吠えているようなものだ。


「理解できないな、大統領。なぜ、そこまでして敵をかばう?テクノロジーを譲ってもらった相手だからか?そこまで感謝するようなことではないのだぞ、若い文明には、我々だって様々な技術協力をしている。敵の残存兵を引き渡してくれれば、我が艦隊は、そちらを攻撃しないし、する理由もない。その後の交渉で、我が星系のテクノロジーの一部引き渡しも可能となるんだぞ」


旗艦艦長は、全権代理としての発言を繰り返す。

あまりに若い宇宙文明とわかり、これを攻撃して滅亡まで追い込んでしまうと、戦後に銀河大法廷で追求を受けかねない。

正直、さっさと3名の残存兵捕虜を引き連れて基地へ戻りたかった。


「我々の文化が、一度決めた同盟の脱退を許さないからです。契約を破るというのは、我が星の文化では最も卑劣な行為。それを自分から行なえというのは、死よりも恥ずかしいことをやれという意味になります」


そう、この星では、契約や同盟など、相手のある約束で文書化までされたものを覆すというのは、卑劣極まることとされる。

特に、恩のある相手を敵方に売り渡すような行為は、例え大統領の地位を与えられていようが、それを行った瞬間、地に落ちる。


大統領の名前も吐き捨てるように言われ、スカベンジャー(死肉漁り)と同じ意味になるほどの軽蔑対象となる。


旗艦艦長は、とりあえず、監視として数隻の艦を星系に貼り付け、基地へ帰還して上層部の判断を待つと決定する。

上層部の判断次第では、この若い宇宙文明も風前の灯となるだろう……


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