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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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もう一人の楠見 その十 最終話

この話、終わります。

次のネタは何にしますかね?(笑)


「ナンバー101。君、ここへ呼ばれた意味が分かっているんだろうね?君の説明が足りないので、宇宙省長官である私どころか、政府高官のお偉方が揃っている前で査問委員会が開かれることとなったのだ。当然、君の書いた報告書も読ませてもらったが……あれは何だ?君に作家の才能があるなどという報告は受けておらんのだが……」


はぁ……101ことヤマノ コウイチはタメイキをつく。

やっぱ、こうなるのか……と半ば諦めの境地でもある。

おもむろに口を開くと、


「まあ、普通に考えれば、こうなりますよね。ちなみに長官、私の書いた報告書は一字一句、全て真実です。嘘は一言一句書いておりませんし、跳躍航法、いや、こちらでは恒星間航行でしたっけ?テスト結果は改造前と改造後の詳細データを添付しておりますので、実験機、今はカロン号と名付けましたが改造された現在でしたら、例え子供であろうとも今すぐに宇宙へ飛び出し、銀河宇宙を自由自在に飛び回れます」


そう、101ことヤマノは実験データの詳細で膨大なものを報告書に添付していた。

実験機であるカロン号の改造前データでは超空間への突入と反射の影響が船体と乗員に多大な負荷がかかることが判明して数光年の跳躍しかできないという結論に達していた。

改造後は通常航行用にも使えるフィールドエンジンとの相互作用により改造前とは安全度も跳躍可能距離も大幅に増している。

改造前が最大10光年以下が安全に航行する速度限界だとするなら、改造後の安全速度限界は数万光年。

数万光年という規制は、それ以上になると到着推定位置との誤差が無視できなくなるという一点における規制であり、それ以上も可能である(自分の現在ポジションを把握することは宇宙航行にとって必要不可欠なため、これが保証されない超遠距離跳躍はお勧め不可、というわけ)


「では、ナンバー101へ質問したい。君の言うカロン号、いわゆる恒星間航行実験機が、あんな姿になっているのは何故なのかね?いくら何でも君が自分一人で宇宙船を改造したなどという冗談は通じんよ」


これは科学技術省大臣の言葉。

彼は現場上がりの叩き上げから回りの推薦で科学分野の長になった人物であり、その見る目は確かだった。


「そうですね……報告書には書いていない事項ですが質問の回答とするなら……実は私、この銀河どころか銀河団、いや超銀河団すら越えるほどの力とテクノロジーを持った宇宙船、そして、その宇宙船を束ねる人物に出会いまして……」


そこから話は長くなった。

しかし全て真実を語る101ことヤマノの話には迫真に迫っており、誰もが興味を惹かれる。


「まあ、そこから色々ありまして……彼らと分かれて私はこの星へと帰ってきた訳です。ちなみに長官。データを見れば一目瞭然ですがカロン号、いわゆる恒星間航行実験船は自殺せよと言われているようなもの。最大エネルギーで最高距離を跳躍なんかやった日には私の肉体は水風船のようにベシャッと潰れて死体すらまともに残らない状況になっていたでしょうね。まあ、これからは安全で安心して宇宙航行できるようになるでしょうが」


「ちょっと待ち給え、ナンバー101。君の報告書と、あのシルエットすら大幅に変わった実験船を参考にすれば我々はこの星系から銀河宇宙へと伸びる道を進むことができるだろう。で、君が出会った超絶と言っても良い性能の宇宙船だが、その性能の一端でも良いから手に入れることは出来なかったのか?銀河団や超銀河団を超えたいとは思わんが銀河を渡ることができるなら我々の未来は一際輝かしいものになるだろうに」


宇宙省長官が、それ以上の成果を求めるのは仕方ないことかも知れない。

それを聞いて少し暗い顔色になるヤマノ。


「長官……今の状況でも素晴らしい未来が開けているのが想像できませんか?銀河宇宙には我々とは違う様々な形態や生活環境の生命体がいるのです。我々は、その生命体全てに尊敬と愛情を持って接することを経験し、精神的な成長をしていかねばなりません。我々が精神的に成長し、見た目が自分たちと違う生命体にも愛情と尊敬を抱く事ができるようになれば、その時にこそ銀河を越える資格が得られるとは思いませんか?まだまだ我々は銀河宇宙に出たばかりの幼稚な子供に過ぎません。いつの日にか銀河を越える日を夢見て、一歩々々進んでいくしかないんです」


ヤマノ、ここでガルガンチュアから渡されたデータチップを出す。


「ここに、カロン号に搭載されている物も含めた新型の宇宙船の設計基本データがあります。宇宙船だけではなく、その搭載する機材や資材についても詳細に説明されています。正直に言いますと、これをこの場で提出するかどうか迷いました。ガルガンチュアから、これを渡された時、有効利用してほしいとだけ言われましたが、ある意味、これは賭けだと思っています。今、これを見て他の星系に攻め込めると思った方々もいるでしょう……いえ、否定しても私には分かります。このデータチップは、ここに置きます。私は自由に名前を呼び、呼ばれることに目覚めてしまいましたので今ここで宇宙軍としての自分は引退したいと思います。これから私は宇宙で生きていきたい……星の平和を願いつつ、外から見ていることにしますよ」


認識票と名札(ナンバー101と書かれている)を外し、101ことヤマノは部屋を出ようとする。

あわてて護衛部隊がヤマノを止めようと駆け寄ってくる。

しかし彼らがヤマノに触れることは出来なかった……


「こうなると思いました……最後に言っておきます。ガルガンチュアでは私自身も鍛えられました……今の私はテレパシーとサイコキネシスの巨人となっています。ま、この言い方も止めだ止め!俺を止めることなど不可能ですよ、皆さん。銃撃も不可能ですからね、そこの影から狙撃しようとしてる護衛官!」


ハッとして、あわてて姿を現す狙撃要員。


「では、おさらばです。宇宙でトラブルがあった時、いつでも呼んでくださいね。一目散に駆けつけますから。あ、それから長官。俺を犯罪者として指名手配しようと思ってますよね。宇宙船カロン号はもらっていきますが、そちらがちょっかいかけてこなきゃ、こちらも好き好んで交戦しません。私の仕事はトラブルシューターですからね」


その言葉を最後に元ナンバー101、今はヤマノ コウイチとなった人物は故郷の星に帰ることはなかったと言われる。

ただし、その船、カロン号に助けられたという宇宙船や人、生命体は膨大な数になったとのこと。

誰言うと無く、キャプテンヤマノとカロン号の活躍は、この銀河宇宙に広まっていった。

100年後、未だに現役で活躍しているカロン号とキャプテンヤマノの姿を人々は目にすることとなり……


「あ?いつまでも若いですねってか?どうもね、ガルガンチュアで暮らしてた時に体質が変わっちまったようでね。普通に死ねない体になったようだ……」


と、にこやかに話すキャプテンヤマノの姿があったという……


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