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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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もう一人の楠見 その三

ちょっと長いです(昨日書いた分と今日の分との混合)


「そろそろ恒星間航行用エンジンに中程度の負荷をかけるテストを行う。超空間ジャンプの設定は?」


「はい、設定座標入力完了しています、キャプテン。何時でもテストに入れます」


「やりたくねーなー……イヤな予感がひしひしと迫ってくる気がする……ええい!しゃーない、やるぞ!船速知らせ!」


「はい、キャプテン。ただいま、光速の約20%近い速度です。計算上、中距離の超空間ジャンプに問題はないかと思われます」


「よし、十秒後に超空間ジャンプテスト開始だ!……3,2,1、超空間ジャンプ、起動!」


ナンバー101は横っ面を殴られたような……というよりも体全体を巨人の拳で殴られたような衝撃を受ける。

一瞬の衝撃だったが101の体には影響が残った。


「げほっ、ごほっ……ヤバイ、少し血が混じってる。中距離ジャンプで、これかい。船外作業服を装着してなかったら本当に大怪我してたかも。後は長距離ジャンプのテストを残すだけなんだが……アンドロイドくん、マジで聞くけど本当に中止は不可能?中距離ジャンプで、このダメージだぜ。長距離ジャンプなんて実行したら間違いなく俺は死ぬだろう」


「まことにご愁傷さまですとしか言えませんが……宇宙省長官の決定は変えられません。あと、キャプテンは、この計画で死んでも悔いはないという宣誓書にサインしたのでは?」


「う、それを突かれると……長距離ジャンプ、やった途端に死亡確定とは……やだなぁ、死にたくないよ、本気だぞぉ!誰か助けてくれーっ!」


「キャプテン、いくら叫んでも、ここは宇宙空間。叫びを聞いてくれる人など、いるわけが」


そこまでアンドロイドが喋った瞬間!


《助けを求める思考波を受信した!こちら宇宙船、ガルガンチュア。俺のテレパシーと非常によく似た思考波を受信したので、そちらへ向かっている。そちらの現在位置を確定したいので、しばらく集中して思考してほしい》


「な、何だぁ?思考波?テレパシー?SF小説や漫画じゃあるまいし、この大事な時に空想系は止めてくれ!……って、今、頭の中で声がしたんだが、アンドロイドくん、じゃないよな。一体全体、何が起きようとしてるっていうんだ?!誰か答えてくれぇ!」


《そちらの現在位置の特定が完了した。数分後には近くへ行けるだろうが、こちらの大きさから考えて、そちらに少しポイントを移動してもらったほうが良いだろうと思われる。今よりも惑星二個分ほど下がってほしい。衝突や融合などという最悪の事故は無いにせよ、余計な不安を与えたくない》


「惑星二個分ほどポイントを移動しろだと?」


「キャプテン、私にも聞こえました。これは人間の、ごく一部に見られる「特異能力」と呼ばれる物の一部ですね。テレパシーと言いましたが宇宙空間でテレパシーを、それも特定した人間や宇宙船に向けて放つなどという事ができる者がいるなどとは聞いたこともありません。もしかして、これは全く異なった惑星から来た生命体かも!」


「ガルガンチュアなどという宇宙船は聞いたことも見たこともないから、外宇宙からの生命体ってのは間違いないだろう。それより、指定通りに数ポイント後退するぞ。これで良いだろう。数分後に近くに来ると言ってたが……」


数分後、実験船の近くにガルガンチュアが出現する。


「うわ……もう、驚きすぎて叫び声も出ない。何だ、あの巨大な物は。あれが宇宙船だって?宇宙要塞でも、もう少し小さいだろうに」


「惑星クラスの超巨大宇宙船に、衛星サイズの巨大宇宙船が三隻、合体しているようですね。どこの誇大妄想狂が、こんなものを造り上げたのでしょうか?」


「いやいやいや、そんなこと言ってる場合じゃなくてな……おや?惑星サイズの方にポッカリと穴が空いたぞ?」


《こちらとランデブーするにも双方のサイズが違いすぎて無理だろう。搭載艇の出入口を開けたので、そこから入ってくれ。幅も長さも余裕はあるだろう》


「あのデカさの穴で搭載艇用?おいおい、どこまで規格外なんだ、あの船は」


恐る恐ると言う感じで、そろそろとガルガンチュアに入っていく実験船。

広い発着場には巨大な宇宙船の群れ。


「直径500mクラスか。これで搭載艇?巨大宇宙空母じゃねぇか、この船」


「いえ、そう断言は出来ないかと。これが攻撃用なら、あまりに数が多すぎます。これを有効活用するなら、そうですね……ざっと見た限りの攻撃力として、この銀河の全兵力を相手にできるかと」


「うえ、そこまでか。あ、そうか。これは中心となる母艦で衛星サイズの宇宙船が後三隻あるんだっけ?そう考えると、たしかに一つの銀河と戦争できそうだな、こりゃ……」


自動的に誘導ビームに導かれて指定された宇宙船発着場所に着陸、


「トラクタービームかと思われますが、ガッチリと固定されています、逃げることは不可能ですね」


アンドロイドの言葉に逆に安心するナンバー101。


「ま、そこまでするのなら簡単に殺しはしないだろ。船を出て、あちこち見学してみよう」


「出迎えないのですか?」


「ここまで高度なテクノロジー持ってるんだ。乗り物なんかも特殊なんだろう。考えてみろよ、宇宙船の端から端まで行くのに小型宇宙船が必要な大きさだぞ?」


「それもそうですね」


1人と1体は宇宙船から出て、回りを見渡す。

実験船が平板な円盤形状なのに比べて、回りの宇宙船はみな球状。

直径500mの球というのは壮絶というしかない大きさ。


「見渡す限り、同じ形の宇宙船ですね、キャプテン」


「ああ、一体、このエリアだけで何万隻あるのやら……本当に一個の銀河相手に喧嘩売っても勝ちそうだな、これは……」


《こちらの歓迎会の準備も完了したので君らを転送する。あ、準備も何も必要なしだ》


その声と共に一瞬にして見知らぬ部屋(巨大ドーム?)へと移動させられる1人と1体。


「やあ、君が、あの緊急テレパシーの発信者か……え?俺、か?」


船長と思しき人物が近寄ってきたかと思うと……101も絶句する。


「え?俺がもう一人?俺に兄弟はいないと聞いていたんだが……いやいや!こんな巨大な宇宙船に乗ってる兄弟などいるわけない!俺達の星は、未だに隣の星系すらも自由に行けていないんだから!」


「え?お二人とも、どうしたんですか?不思議な物を見たような顔……え?師匠!サプライズは止めてくださいよ。ドッキリなんでしょ、これ?」


楠見は真剣な顔で、


「郷、こりゃ宇宙の奇跡だ。天文学的な確率で、ここに超銀河団という隔絶された距離をもって2つの全く違った惑星において同じ人間が誕生したんだろう……地球では約数千年前になるだろうが。俺は加齢を止めているが彼は通常に年をとっているから、数千年の年月の差があるってわけだ、彼と俺の間には」


「へぇ……瓜二つの人間が出会うはずのない距離を超えて出会ったってわけですな。じっくり見ても服装以外は相違点が見つかりませんよ。双子と言われても信じますな、こりゃ」


ようやくショックから立ち直った、ナンバー101。


「初めまして、名前は番号で101と言います。正式名もありますが、遺伝子番号と血液詳細データを混ぜたもなので、非常に長ったらしい憶えにくいものです。俺のことは101と呼んで下さい」


「ああ、よろしく、101君。そちらは、そうか、アンドロイドだね。高性能だが今ひとつというところか……アンドロイドくん、自分の意識はあるか?」


「いいえ、傍からはそう見えるように仕草や言葉遣いをしておりますが、自分が自分たる意識というものは持っていません。ただし、現在データからの推測機能があります」


「うーん、惜しいな。どうだろう?自分が自分たる意識を持ちたくないか?君は自立思考の一歩手前まで来ている」


「アップデートではなく、アップグレードということでしたら、喜んで。新しい機能は、ぜひとも欲しいです」


「よし、そうと決まればプロフェッサー、お前の出番だ。俺の相棒にふさわしい、自意識を持ったアンドロイドに仕上げてやってくれ。このアンドロイド君、もう一人のお前になる条件は揃っている」


「あの、何のことでしょう?相棒とか条件とか?」


頭を捻っているナンバー101。


「まあ、それはあとでゆっくりと説明するよ、101君……もう一人の自分が番号で呼ばれるのって何かおかしな気分だな。正式な名前……そうか、番号制が徹底されてて昔から続いてるから、それを変だと思わないのか……まあ、これもゆっくりと後から考えよう。ともかく、まず101君のトラブル解消だ。跳躍航法時のトラブルだって?」


「そうです……跳躍航法?超空間ジャンプじゃないんですか?跳躍航法が正式名称ですか、はあ。それはともかく跳躍航法時の人体と船体が受ける衝撃の緩和・吸収方法があれば、それを教えてほしいんです。普通に長距離跳躍やったら船体も酷い衝撃受けますが、それより自分の体が持ちません」


「跳躍時の衝撃緩和ねぇ……フロンティア、一つ聞きたい。自力で跳躍航法を発見した文明がある。これなら俺達のデータを渡してもロックはかからないよな?」


「はい。種族の精神的成長あるいは、その種族が跳躍航法を発見しているかどうかがデータロックの基準です」


「それなら話は早い。今から君らの宇宙船を改造させてもらうが良いか?改造後には、どんな跳躍距離でも船体や人体に影響なしという宇宙船になる」


101の表情が明るくなる。


「本当ですか?!ありがたい!感謝します。改造など何処もかしこも何をやってもらっても構いません!どうぞどうぞ」


ナンバー101、この時の自分を止めたいと思う事が将来にあるとは思いもしなかった……


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― 新着の感想 ―
[一言] 世の中には自分に似ている人が3人いると言われるが、この世界では後に「この宇宙には自分と同じ存在が3人いる」とか言われるようになるかも( ´-ω-)y‐┛~~
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