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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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もう一人の楠見 その一

平行進化というか、別の超銀河団の別銀河団、別銀河で出会う二人を書きたいと思いまして……


ここは、とある星。

今しも、この星では初の恒星間飛行を成し遂げようと、実験機である宇宙船の打ち上げを待つ。

この宇宙船に乗っているのは、メインパイロットとなる人間と、その補佐及びコ・パイロットとなる優秀な人工頭脳を搭載したアンドロイドの一人と一体。

アンドロイドに搭載されているのは最新の理論により計算機としては最高水準まで到達した人工頭脳で、知性はないが明らかに現状から推測を行うレベルにあるのは間違いない。


「調子はどうだね?ナンバー101。人類初の恒星間飛行に挑戦するんだ、気が高ぶるのは仕方がないが、その時には冷静に頼むよ」


この星では人間は数字で呼ばれる。

おかしいと思うのは、この星生まれではない者。

幾百年も、このような名前の付け方をしていれば、それが普通になる。


「はい、宇宙省長官殿。気分は高揚しています。自分は同年代の子どもたちよりも幾分、夢見がちなこともありまして、幼年学校や少年学校では心ここにあらずという授業態度で先生に幾度も注意されていたほどですから。夢がかなって、この実験宇宙船に乗れるとは……感慨無量です」


「そうか。ちなみにこれは実験機であるから、何か重大なトラブルが起きる可能性は高い。君の現場対応能力の高さと、君の補佐をするアンドロイドの高性能さがあるなら大丈夫だろうと思う……頑張ってくれたまえ、我が愛する星のために!」


「はい、我が愛する星のために!なんとしても、この計画は成功させてみせます!」


「うむ、良い結果を待っている。以上だ」


パイロットの番号が101なのに、それより上の番号は選ばれなかったのか?という疑問が湧くだろう。

もちろん、101より優秀な者たちが揃っているのは事実。

しかし、突然のトラブルや、宇宙飛行中に起こりうるだろう事件などを全て考慮すると、現場対応能力がひときわ高いナンバー101が選ばれるのは当然。

後の者たちは101より全般的に優秀ではあるが、不意のエンジントラブルや宇宙塵との衝突、果ては航行中に燃料が全て無くなったと仮定された無理難題でも、101だけは他の候補者たちよりも数段高いレベルで生き延びられる回答を出した。

今回は実験機だ。

宇宙省の高官達、そして、この星を管理・運営している者たちの頂点である最高司政官でさえもナンバー101をパイロットに選ぶのは当然のこと。


「キャプテン、全計器の数値が誤差範囲内に収まっています。発射に問題ありません」


アンドロイドの声が響く。


「お、そうか。ありがとう。では、ラストのカウントダウンに入る。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、イグニッション!」


轟音を上げて宇宙船打ち上げ用の巨大な超音速航空機が飛び立っていく。

その背中には航空機よりは一回り小さな、いわゆる「空飛ぶ円盤型」の宇宙船がガッチリと固定されている。


巨大な航空機は、その背中の荷物をものともせず、ぐんぐんと滑走路を進んでいき、滑走路の切れる少し前で、ようやく離陸する。

ふわりと浮かぶように離陸した航空機は、そのまま高度を上げていき大気圏上空15000mまで上がる。

さすがに巨大なターボプロップ・エンジンも、この高度では出力が上がらない。

もう少し、もう少しと高度を上げつつ宇宙船切り離しポイントの高度へと近づいていく。

高度20000mへ到達。


「宇宙船パイロットへ。高度20000mに達した。切り離しを行うので、そちらのエンジン始動を行ってくれ」


航空機パイロットが宇宙船へと指示を出す。


「了解した。ここまで運んでくれてありがとう。君らに幸運がありますように」


「よせやい、幸運が必要なのは、そっちだろうに。無事に戻ってこいよ!以上」


これにて宇宙船と航空機との通信は終了する。

後は切り離された宇宙船が……少しエンジン始動に手間取ったようで高度は落ちたが、持ち直して高度を上げ、惑星脱出速度まで加速する。

惑星圏を抜け、衛星のそばを通り抜け、隣の惑星もフライバイ。


「キャプテン、星間航行エンジンは順調に動作しております。あと、10時間ほどで恒星間航行用エンジンのテスト予定宙域に到達する予定です」


「そうか、ではコースと速度は、このままで。実験を行うポイントに到達したら起こしてくれ。昨夜から緊張で寝てないんだ。丁度いいから宇宙で眠る実験も兼ねるよ」


「キャプテン、もう惑星間航行は普通に行われております。今さら睡眠実験でもないと思いますが?」


「固いこと言うなよ、アンドロイドくん。これからは当分の間、俺と君の2人だけで恒星間を飛ぶことになるんだ。まあ、のんびりやろうぜ、のんびりと」


「キャプテン、それだから上に立てなかったんですよ、その性格。もう少し真面目にやってればナンバー10を通り越して一桁ナンバーにもなれたでしょうに」


「うるさいよ、アンドロイドくん。現場で理屈ばっかりこねて杓子定規に拘っても何にもならないの!俺は寝るからね、ポイントに到着したら起こしてくれよ……」


「はぁ……あんなチャランポランなのが大事な恒星間航行の実験パイロットとは……私の計算機は暗澹たる未来を予測していますよ……」


ちなみにアンドロイドの語彙数は人間並み。チューリングテストをやっても姿を見せなければ人間だと思うレベル。

これで自立思考が出来ないのだけが惜しい。


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