偽ガルガンチュア現る その8
現場と本社の時間的なズレを描いてみました(笑)
とある星間帝国では、混乱が始まっていた。
「ええい!皇帝が代替わりされて祝賀ムードに湧いていたはずなのに、どうしたことか?!何処かの植民星が独立しようと抵抗運動起こしたのなら、いつものように鎮圧軍を送り込んでしまえば良いのに、何をやっとるのか?!」
皇帝補佐が現れ、どたばたの現場に一喝すると徐々に混乱が収まっていく。
「どうしたのか、何が起きているのか、私に説明できるのものは?!」
部所の責任者らしきものが部屋の奥から現れ、冷や汗を拭きながらも説明しようとする。
「これはこれは、皇帝補佐閣下。大混乱をおさめていただき感謝の念に耐えません。混乱の原因をご説明いたしますと……」
「すると何か?全くの原因不明ながら、帝国辺境部で定期通信が絶たれていると。原因究明のため、担当官を送り込むとか、もしものために鎮圧軍を送るとか、手は打ったのか?」
もってまわった言い方が激しい部所長のせいで、何が起きているのかが分かるのに時間がかかったが、問題は原因が全くと言っていいほど掴めていないこと。
星間帝国内の定期通信は、もうルーティンワークに近いものであり、近況報告と共に、
「異常なし」
の言葉で終えるのが普通になっていた。
それが、この数日間、定期通信どころか通常の軍や政府間の通信すら不通になっており、原因不明だという。
「はい、まずは通信系統の故障、あるいは、可能性は低いのですが反乱分子の破壊活動かも知れぬということで、小隊規模の鎮圧部隊と共に調査官を送りました。ところが……」
「その調査官も含め、鎮圧部隊からの通信すら途絶えたと言うことか……分かった。それ以上の規模の鎮圧軍や鎮圧用兵器部隊を動かすのは部所長権限では難しいだろう。報告書をあげてくれれば、私が動いて皇帝に大隊規模の鎮圧軍と鎮圧用兵器部隊の派遣を具申してやろう」
「あ、ありがとうございます!なにとぞ、なにとぞお願いいたします!このままでは、私の地位が……」
「心配するな、まかせておけ。こんなことで左遷などしない。帝国は、まだまだ若い皇帝のもとでさらなる発展をしていくのだから」
自信有りげに言った皇帝補佐の言葉に、部所長は感激したのか涙すら浮かべている。
数日後……
「兄上、ご忠告どおり、大規模派遣軍と鎮圧用兵器部隊を二小隊ほど送り込みます。それでよろしかったですかな?」
皇帝となった弟の補佐の座に着いた自分が実務に励み、帝国皇帝としての政務と外交の纏めを弟の皇帝に任せれば良いとの前皇帝の父からの言葉で、兄弟も、その取り巻きも納得した。
まあ、以前から自分には皇帝という頂点は無理だという自覚はあったので、対外的に愚かなふりをして皇帝の資格なしと言われるように仕向けていた。
裏方で皇帝を助けるほうが俺には向いているなと思い、今の地位での働きを喜んでいるのも事実。
「お前が現在の皇帝なんだから、臣下に兄上などと言わなくて良い。私的な場だから良かったものの、玉座にあるものが迂闊だぞ。まあいい、忠告より大規模ではあるが、それでも万が一ということもあるからな。皇帝判断として間違ってない。後は、鎮圧部隊からの報告を待つばかりなんだが……何か嫌な予感がする……」
「兄上、いや違った、補佐。嫌な予感とは?」
「これは個人的なことなんだがな……我々の想像を超えた存在が迫りつつあるような恐ろしい、避けることも防ぐことも無理というものが、この帝国に迫りくる予感がするんだ……我が星間帝国の全武力をもってしても防げない力とは何だ?という話はあるんだがな」
ハハハ……という軽い笑いを兄弟で交わしつつあった頃……
帝国辺境部では、鎮圧部隊と鎮圧兵器部隊が、散々な目にあっていた。




