偽ガルガンチュア現る その5
おまたせ!次で御大のご登場です(笑)
「さて、次は何処へ行く?」
四角い立方体の巨大船は、跳躍機関の燃料も満タンにして、次の目標(カモ?)を探していた。
「ねえ?この前の星間帝国お世継ぎ問題なんだけど。あれ、最後までフォローしなくてよかったの?何か尾を引きそうな面々がいたのよ」
質問された、星間帝国担当だった男。
いとも気軽に、
「あ?そんなの知らねーさ。俺達のプランで見事に問題は片付いたじゃねえか。後のことなんか知ったコッチャない。トラブルは消えた、その時だけでも。それでいいじゃねーか」
「はぁ……そんなことだろうと思ったわ。イヤに分厚い計画書なんて向こうに出すから、今回は本気かと思ったのに……あんたは、また性懲りもなく口だけ詐欺をやったのね!?」
「それが悪いことか?星間帝国なんて、政権基盤すら盤石じゃないし、銀河帝国のような懐の深さもない中途半端な帝国だぜ?俺達が介入しても、あるいは見てるだけだったとしても、どのみち長い政権じゃねーよ、あそこは。今回、過激で実力行使すらしかねない集団や、その一歩手前で虎視眈々と見てた腹グロ集団は潰せただろ。後は、次の皇帝陛下の仕事だ。俺達は今の皇帝陛下から頼まれたトラブルシューティングを実行しただけ……いや、プランを提出しただけ、だな。帝国の寿命が少しは伸びたんだ、感謝されるべきだろ?」
「はぁ……それが本音ってわけね。あんた、やっぱ生まれながらの詐欺師だわ。数年後に、私達全員に指名手配がかかるのは間違いないわよ。あんたのせいで、またこの船の悪評が1つ増えるのよ……こら!分かってるのか?!」
「い、イテテテテ!耳を引っ張るな、耳を!俺の耳は、先祖の遺伝子を受け継いで尖り気味なんだから痛みが大きいんだよ!あーあ、ばあちゃんが〇〇〇〇星のじいちゃんとなんかくっつかなきゃ良かったんだ。同じ人種同士でくっついてたら、俺も無駄に悪事方面に頭が切れるなんてことにはならなかったろうに……生まれが違ったら、今頃は銀河守護隊の精鋭になってたかも……」
「はいはい、寝言は寝てから呟いてちょうだい。まあ、あの仕事は、あの伝説の宇宙船と存在に関係してるって事で信用してもらった上での口だけ詐欺だからねぇ……御大が登場する前にトンズラするってのは全員が賛成したんだけどさ。あたし達、とんでもない存在に喧嘩売ったのかも知れないのよ?もし、例の巨大宇宙船と、伝説の存在が、あたし達に気づいたら……とりあえず、どこかの巨大太陽に宇宙船を隠して、しばらくほとぼりを冷まさない?それでなくとも、この船とあたしたち、10できかない数の星系と星間連合、星間帝国から指名手配受けてんのよ」
「うむ……俺も、ほとぼりを冷ますのは賛成だ。お前は、もう一稼ぎしたいんだろうが、もう少し待て。なにか嫌な予感がする。俺の勘は、悪い方には滅多に外れないから、ここは太陽に隠れろ。この嫌な予感が消えたら、その時にまた、動き出そう」
この男、初期の予知能力でもあったのか。
ともかく、四角で立方体な巨大宇宙船は、巨大太陽の近傍空間へ急ぐ。
第一惑星より内部の、普通なら溶けるか焼けるか、それとも太陽に引かれて落ちていくかという、巨大コロナが近くに来ることも有るという通常なら危険地帯で、その巨大宇宙船は身を潜め、隠れる事となった。
「近すぎないか?いくらなんでも。通常のポイントより、二回り以上も近いぞ。探知はされないだろうが、このままじゃエネルギーロスもスゴイことになる。一年は隠れていられないぞ、この消耗率だと」
「大丈夫だ、ここなら。これ以上、安全なポイントに出るなら嫌な予感が強まる。実を言うと、もう一回りほど中のポジションに行きたいくらいだ……ここでも嫌な予感は消えん……少なくはなっているがな」
「ここより一回り内側?バカ言わないで!太陽コロナに飲み込まれて、この船ごと燃え尽きるわよ!」
男の勘は、正しい。
伝説の船、その名をガルガンチュア……伝説の存在、その名をクスミ……彼らは今しも、この銀河に近づいているところだった……




