偽ガルガンチュア現る その3
舞台となる星間帝国の解説(笑)
ここは、とある銀河の、中規模な星間帝国。
現在の帝国皇帝は、愚かではなかったが頭の切れる男でもなかった。
まあまあ、中の中くらいの堅実な帝国運営と、帝国臣民の統治には成功していた。
皇帝には銀河制覇の野望もなく、かと言って帝国を解体して銀河春秋時代になるのを許すようなことも考えてはいなかった。
内政に力を入れたため星間帝国の内政は充実し、文化発展は加速し帝国内部の平和は盤石となる。
反乱の芽すら起こる気配もない、安定した、安らかな数十年が過ぎる。
皇帝その人も老いには勝てない。
まだまだ矍鑠たる皇帝陛下、しかし、自らは老いが迫ってきていると感じ、跡継ぎの問題が浮上してくる。
子供は二人。
長男は、皇妃(正妻)との子供。
皇妃は友好を結んでいた辺境の小さな星系出身で平民の出。
次男は、愛妾との子供。
愛妾とは言いながら、出身は中央星区にある比較的大きな惑星連合国大統領の娘。
友好的とは言え、向こうから押し付けられた格好の姉さん女房である。
しかし、嫁いでからの愛妾は甲斐甲斐しく、皇帝の横よりも後ろにいるような控えめな女性だった。
問題は、この2人の息子の出来具合。
長男は、幼い頃は賢かったが、長じてからはフラフラと遊びに出ることも多く、その行動も決して褒められるようなものではなかった。
対して次男は、これは幼い頃から一貫して生き馬の目を抜くような頭の切れを示し、長じてからも兄のサポートに徹した裏方の仕事も率先してやるような性格をしている。
誰が見ても、次の皇帝には次男が良いと思うだろう……しかし、帝国皇室典範には、こうある。
”皇帝の座を継ぐのは長男が第一。もし、長男がその座にふさわしくないと思えば、皇帝会議において参加者の半数を超える賛成を得なければ、その座を追われることはない”
普通に考えれば、まず長男を皇帝に据えて、その政治に不満があれば皇帝会議でその座を剥奪するしか無い。
しかし、それでは満足しないのが次男を皇帝に据えるべしという勢力。
愛妾本人ではないところが悩ましい点で、中央星区の惑星連合勢力が暗躍している。
長男側も、星間帝国の暗部が長男側に付き、惑星連合勢力との暗闘が続く。
朝の典型的なワンシーン。
家族揃って朝のひとときを……などという微笑み溢れるような景色ですら、その裏では長男を毒殺しようとする側と、それを止めようとする側の隠れた戦いがあったりする。
皇帝も二人の妻も、その二人の子供も、もう疲れていた。
妻も息子も、互いは反発しあっているわけじゃない、勝手に回りが考えすぎて実力行使までやりだしたので止めようがない。
「それもこれも、ワシが優柔不断だからか……そろそろ、譲位しても良い頃じゃし、本気で、どちらが次の皇帝になるか決めなばな」




