偽ガルガンチュア現る その2
さあ、偽のガルガンチュア誕生です(笑)
その宇宙船は、巨大だった。
何しろ、全長が80km以上、船腹は半分近い40km弱。
全体の形が四角の立方体という点が普通とは違っていた。
異様な形の宇宙船は、その進路を変えるため、船体のあちらこちらに小型イオンロケットノズルを取り付けて自由自在の方向へと宇宙を旅する。
ちなみに、跳躍航法についても超大型輸送船の跳躍エンジンを2基搭載し、その巨体と重量を超空間へと跳ばすエネルギーを確保している。
そのコントロールルームには、船長を始め副長、医療部長、通信士、そして、そこには似合わない格好をした、様々な種族で作られたグループがコントロールルームの隅に作られた会議室でなにやら怪しい会議を行っている。
「えー、では次の目標について。ほれ、お前の担当星区だったところだ。今度はうまくやらないと、この船の燃料代にも事欠くようになるぞ。燃料切れで動けない宇宙のトラブルシューターなんて格好つかないだろうが」
「分かってるよ、今度は成功するさ。えー、次の目標星区では重大トラブルに見舞われているそうで。それが、内戦から派生した星間帝国の世継ぎ問題。帝国皇帝の子供は2人いるんだが、これが絵に書いたように暗愚な兄貴と、それに対するような頭の切れと行動力を持つ弟。最初は皇帝も兄貴の方を次の皇帝にと計画していたらしいが、あまりに素行や世間の評判が悪すぎるんで、弟を……ってお家の事情」
「ふん、事情は分かった。俺達が介入する余地は?介入して、そこで得られる利益は、どのくらいと予想する?」
「それがな……それぞれ母親が違うんで、母親の実家や親戚、それと下々の民にも様々な意見があって、決まりは決まり、一度は兄を立てて皇帝にして、その補佐を弟にさせればよいという派閥と、まだるっこしい!弟が皇帝になれば全て解決するって派閥。こいつが二大派閥でな、こいつから様々な細かい派閥が誕生して、あっちでもこっちでも小競り合いやってるらしい。俺達が介入する事は充分に可能だし、それで勝ち組に乗っちまえば報奨金は燃料代なんか目じゃねぇ額になろうってもんだ」
「まあ、相手は星間帝国皇帝一家の内紛だからな。勝てると分かれば、いくらでも支払ってくれるだろうさ。で?問題は、どうやって、この問題を解決するかってぇ事なんだが……」
「そう、そこが問題よ。まずは売り込みなんだが、ここはほれ、例の伝説を利用させて貰おうじゃないか」
「伝説?ああ、惑星ほども有る巨大な宇宙船で、銀河から銀河へトラブル探して幾万光年……なんて、俺達の上位バージョンみたいな存在がいるってやつだろ?しかし、伝説を利用するって言っても、あっちは惑星規模の宇宙船に衛星規模の宇宙船が数隻合体してるって、もう想像することも難しい存在だろうが。俺達の宇宙船、いくら大きいとは言え、そんな化け物クラスとは比べられないぞ」
「さあ、そこだ」
「え?どこだ?」
「ギャグじゃないって。その伝説の宇宙船、大きすぎて惑星近傍空間どころか、星系の近くにも留まれないとのことじゃないか。当たり前だが、そんな星系の外れにしか置けない宇宙船など、どんなに巨大だと言っても見たことある奴そのものが少ないよな。そこで、だ」
「え?お前、もしかして、とんでもないこと考えてないか?」
「とんでもないことなのかどうかは、相手による。伝説ってのは、ごくごく少数の素晴らしきこと、偉大なことを成し遂げた人物や国、ものによっちゃ星や星系まで含まれたりするんだが、伝説の宇宙船が、この銀河にやって来てるかどうかってのは、未だにこの銀河で惑星規模の宇宙船を見たって報告がない以上、まだ来てないんだろうな……だから、その前触れと言うかなんと言うか……伝説の宇宙船の関係者ってことにしようじゃないか、俺達と、この船が」
「お前、ときたまだけど、とんでもない事を思いつくな。その巨大宇宙船が本当に、この銀河に来たら、どうするんだよ?責任取れと言われても何も出来んぞ」
「まあまあ、落ち着きな。俺達は伝説の宇宙船の露払いをしてやるだけなんだ……でかいトラブルシューティングしようってわけじゃない、小さな事はこっちに任せてくれってことだよ」
「星間帝国のお家騒動を解決するのが小さなことかね?まあいい……伝説の宇宙船が現れる前に、ちゃっちゃと片付けてトンズラと行こうか。船長!行き先が決まったぞ!韋駄天号、巡航速度だ!」
それなりの大きさの有る韋駄天号、進路を微調整するためにイオンロケットノズルを数基、数秒ばかし吹かす。
数分後、進路を固定した韋駄天号は、跳躍機関を作動させて星の海の中へと跳んでいった。




