死にゆく太陽に…… 7
太陽エネルギーを奪っていた先の文明に残っていたものとは……
さて、久々にガルガンチュア本体に活躍の場が来るだろうか。
このところ、宇宙船どころか俺達クルーだけで間に合うトラブルばっかりだったから……腕がなる!
「我が主、また悪い顔をしてますよ。なんですか、その久々に暴れられるって考えてるような黒い笑いは」
プロフェッサー、俺の心を読むんじゃないよ、まったく。
エネルギー流入先の星系は、ずいぶん古い星系のようで。
「マスター、ここに住んでた種族達は、もう遠の昔にこの星系を離れてしまったか、それとも絶滅してしまったかのどちらかでしょうね。遺跡だけは残っていますが、それも長い年月で侵食され、あるいは温度差で特別強化コンクリートまでが破壊され、砂や岩に戻ってしまっています。このような星に、なぜ、あの太陽からのエネルギーが流れ込んでいるのでしょうか?」
文明が去った星か……
それでも残しておかねばならない「何か」あるいは「何物か」のため、あの太陽からのエネルギーが必要だったんだろうな。
さて、と。
「フロンティア、ガレリア。あの星に有るはずの、エネルギー流入先を突き止めてくれ。多分だが、そこしか施設として生きて稼働しているところはないだろう」
数分後。
「主、見つけたぞ!主の推測通り、生きて稼働中の施設を探したら、ドンピシャだ!」
「ありがとう、ガレリア。んー、データをを見る限り、地下施設だな。じゃあ、捜索隊……と言うか探査隊?あのエネルギーで、どうあっても維持したいものを確認してやろうじゃないの」
「マスター、行くのは止めませんが、それでも単独行動は止めて下さい。せめて3名以上でお願いします」
「分かったよ、フロンティア。それじゃ、郷とプロフェッサーを選ぼうか。ほら、行くぞ、2人共」
「了解です、我が主」
「Ok、師匠。久々の現場だぁ!腕がなるぜ」
「まあ、無難な人選でしょうね。行ってらっしゃい」
転送で、俺達3人は惑星上の、エネルギーを消費して稼働している施設の近くへ送られる。
「ここか……事務所の跡が残っているが、地上部は壊滅状態で崩れてるな。肝心なのは、地下施設か」
「師匠、それは良いのですが地下への入り口って何処です?それらしいものが見当たりませんが?」
「郷、そんなのは探すまでもない。こうやるんだ」
サイキックパワーを、ちょいとレベル上げ。
徐々に表土が厚さ1mほど直径100mの筒形で持ち上がり、ちょいと横の遺跡へ被さる。
「はい、そこに地下への階段の跡が見えるから、あそこから入るとしようか」
「我が主、力技は美しくないですよ」
「力技?そこまで集中もサイキックパワーも注入してないよ、プロフェッサー」
「はぁ、順調に人間離れしているようで……もうすぐ「わがあるじ」ではなく「わがしゅ」と呼ぶ時が来るかもしれませんね」
「おいおい、プロフェッサー。俺は神にはならないし、なりたくもないってのに。人々の願いを聞くだけの存在になんか、絶対にならないからな!」
「あくまで自主的にトラブル解決したいだけなんでしょ、結局は。師匠らしいと言えば師匠らしいですけど」
そんな軽口を叩き合いながら、俺達は地下への階段を降りていく。
どうやら、生命体がいた頃にはエレベータ等の施設もあったようだが(垂直な立坑があった)今はそんな物が動いているとは思えない。
まあ、足が疲れてくるようなら、サイコキネシスで俺達を浮かせて階段を猛スピードで降りていけば良いだけの話。
30分ほども降りて、未だ目指すフロアに到着しないので、俺は郷と力を合わせて、サイコキネシスで階段を降りる方を選ぶ。
「わが主、人工頭脳でさえ恐怖を感じる一歩手前の速度で階段を落ちていくのは……」
「師匠!そっちの速度に合わせてついていくのがやっとでした。危険なものが襲ってきたらどうするんですか?!」
「ん?その時には、近くにいる超小型搭載艇が排除してくれるだろ?まあ、その前に、施設以外で動いてるものはないとデータに表示されてたぞ」
「あ、ご存知でしたか……。師匠、初めに教えてくださいよ、もう」
さて、そろそろ到着。地下のどん詰りだ。
地下30階くらいになるか?
こんなところに施設を作る必要があるなんて、何がここにあるんだろうか?
通路を少し歩く。
予想通り、ここには部屋がない。
その稼働施設のみ、この階のフルスペースを占領してるという事だ。
ドアもない入り口を通ると、お目当てのものが見えてきた。
それは……
「何ですか、これ?師匠は推測つきます?」
郷は、人工生命ってやつを見たことがないようだな……あれ?郷って改造されていたんじゃなかったっけ?
「郷、君が入ってた改造カプセルは、これに似ていなかったか?こいつは人工的に造られた生命体。この試験管のバカでかいヤツの中でなきゃ生存できないんだよ……とは言え、殆どが死滅してしまってるな。生きているカプセルは……こいつだけか」
俺は、他の無数のカプセルが破壊され、または破壊されていなくとも中の人工生命体が死んで久しいカプセルの列の中に、たった1つだけ未だに稼働中のカプセルを見つける。
「し、師匠……こいつ、いや、この人も人工生命なんですか?俺には、人工的に造られた生命体には見えないんですが……」
郷、感情に溺れるな……まあ、気持ちは理解できるが。
「人工生命体だよ、郷。それは間違いない……唯一つ、これだけが、創造者であり、この施設を秘密裏に作った者の誤算でもあり目指すものでもあったんだろうが」
俺には、郷の次の言葉が予想できる。
「師匠……お願いがあります。この人工生命体、助けられるなら助けてやりたいんですが……お願いします!」




