銀河のプロムナード外伝 6(終わりと、その後)
この話は、今回で終了!
次からは通常回です(笑)
アドミラル……改めて考えると。とんでもない奴を召喚したもんじゃと思う。
見た目は中年の、くたびれた男に見えるが騙されてはいけない。
能力、あやつ自身は自分で鍛えた能力でありスキルやギフトなどではないと言うておるが、スキルやギフトで説明できるような能力ではないな、確かに。
最初の依頼、魔王帝国の侵攻(間違いだと分かったのも、あやつが知らせてくれたこと)を原因から解消したのも、あやつじゃ。
それどころか、後に魔王帝国との和解に至る道筋までつけてくれよった(あやつが戻ってから数年後のことじゃ)
魔族や魔獣が高等生物であり、言語まで持っているとの認識がまったくなかった我々人類の誤りを正し、それによる経済の落ち込みが始まると、いくつかのアイデアを出し、おまけに、国家の収支報告書の瑕疵、そして貴族や王族の無駄遣いと無能さを指摘し、断罪に近いやりかたで王族、貴族の領地からの収支を改善させる。
これには私も参加させられたが、あやつのやり方は見るのも聞くのも初めてのことで、役人や大臣、官吏らも最初は戸惑うことばかり……
私にも魔術や錬金術にて様々な物を作らされて、自分でも何をやっているのか分からなくなってはいたが……使用法を聞いて初めて理解できるような物は、二度と作れんだろうが。
ちなみに、「サンプル」?とかいう名前で様々なものを作ったが、算盤、貨幣計数器、リヤカー、一輪車……他にも様々な大小の物を作るよう指示された。設計図なる図面はあるが、この書き方も初めて目にするものだし、読み方が複雑で、教えてもらわなければ理解不能(設計図が読めるようになれば、これは同じものがいくらでも作れますぞと職人たちは騒いでおったが)
次は北の領地の火山被害。
中央では気づかぬ領地だが、付近にある火山が噴火し、えらい被害だったらしい……らしいというのは、私が率いた救援隊が到着した頃には、ほとんどの災害復旧が終了していたからだ。
アドミラルは、すぐに飛び出して、独りで災害の復旧と怪我人の応急処置に当たったという。
私の救援部隊が到着する一ヶ月足らずの間に、噴火の灰や岩、砂に覆われた町を掃除し、数百名にも及ぶ怪我人を治療し(大怪我してる者や手足が折れている者も大やけどしていた者もいたろうが、全てが擦り傷程度まで治療されていた……応急処置だと?これは応急処置とは言わん)挙げ句の果てに、町の近くまで流れてきた溶岩流まで流れをひん曲げて近くの湖に。どうやったのか未だに推測すらできんが、その湖に湧いている湧き水が温泉に変わっていることも無関係ではないだろう。
ここまででも、とんでもないとは思うが、更に……あやつは国の内乱までおさめてしまいおった。
国王の弟が直轄領を治めていたのだが、周辺の領地を収める貴族たちを抱き込んで反乱を起こしよったのだが……それを聞いたアドミラルは、俺に任せてくれ、との言葉で単独で反乱軍と対峙し、数時間後には反乱を鎮めてしまいおった……
それまでは国王や官吏、貴族たちもアドミラルを国家で雇いたいと熱望していたようだが、ここまで有能すぎると恐ろしくなったのだろう……私に、
「どうかアドミラルを召喚した元の地へ戻してやってくれ!勇者や英雄、有能な官吏などは欲しいと思うが、アドミラルは優秀過ぎて、この国だけでは、その力を使い切れないのが身にしみた。あのような存在を使いこなすのは、もはや神や神の如き存在しかおらん。ただの人間や小さな国家ごときでは、あの才能の欠片ほども使い切れんのだ。頼む、ローゾ卿!」
と、国王や反乱を起こしたはずの王弟、各貴族、役人や官吏、職人の親方クラスまで私に頭を下げてきよった……
次の日にはアドミラルを元に返す儀式を行ったが、やけにすんなりと術が発動したのは、どうしてだろうか?
呼び出すのには、あれほど苦労したというのに……
戻ると分かったアドミラルは何か嬉しそうで、それでもやり残したことがあるような複雑な顔をしていたな……
ともかく、あやつが帰ってから、また様々な災害やら戦やらあったが、あやつの前例があったせいか皆が明るい顔で対処していたのが印象的ではあった……
この国は、あやつが生まれた宇宙のような段階まで進めるのであろうか?
それとも、この星が1つの国になる時に、他の国のように吸収されて無くなってしまうのだろうか?
まあ、それが分かるのは随分先だろう……私も長生きしとる方だが、それでも、そんな未来には生きていないだろうが……
ちなみに、この星が統一国家となり宇宙へ乗り出すのは、それから500年先のこと。
楠見、妖精王アドミラルの伝説が、その時まで残っていたかどうかは定かではない。




