銀河のプロムナード外伝 5
楠見の、とんでもなさがじわりじわりと……
ロンブ・ローゾ氏の動きも、早い部類だった。
その日のうちに王宮へ早馬を飛ばして火山噴火の災害発生を告げ、とりあえずの災害救援部隊結成と救援物資の調達について、ローゾ氏が王から制限なしの部隊長扱いのお墨付きを貰っている。
部隊結成と招集は次の日に、物資の調達は三日で必要量を集めているのは奇跡的だと後の資料は告げている。
馬車も一週間もかからずに必要量を揃え、牽く馬たちも馬車と同じ日数で集めているのは相当な手際の良さだ。
それでも、そこから出発するのに一日かかり、被害を受けた町に到着するのに半月……合計で一ヶ月弱かかっている(これでも通常とは段違いの速さ)
ローゾ氏の救援部隊が町に入ると……
「なんじゃ?火山噴火で大打撃受けた町のはずじゃな。どうして、こんなに被害が少ないんじゃ?アドミラルは?アドミラルは何処におるのか?!」
ローゾ氏が疑問に思うのは当然。
町の主要道路はキレイに片付き、通常の場合よりも馬車が進みやすいくらい。
裏道も、そこに建っている建物すら、壊れている建築物は確かにあって被害があるのは確かだが、それ以外はキレイなもの。
少々の被害なら手直しや補強もされており、避難所となっている教会やギルド支部についても活気がある。
それよりも……
「おい、怪我人をどうした?どこに収容しているのか?救援物資や薬草、医者も連れてきたのだ。早く医療所へ案内してくれ!」
そこいらを歩いている市民に声をかけると、あいよとばかりに走って案内してくれる。
到着した大きな医療施設では……
「や、ローゾ君、遅かったね。とりあえず、応急処置まではやっといた。建物や道路の整備は大半が終了、避難民の収容所も、とりあえず作っておいたんで、よろしく!俺は今から、火山の方を何とかしてくるから!」
「いや、だからアドミラルよ……そなた、どういう能力を……ああ、こういうトラブル解決が日常茶飯事だと言っておったな。しかし、これでは大きな災害とは言えんぞ。怪我人も、ここにいる者は数人だろう」
「違うぞ、ローゾ君。数百名の怪我人がいたんだが、俺が応急処置で治した」
と言うと、楠見は、またすっ飛んでいく……未だに小規模な噴火が続く火山めがけて。
「もう行ってしまいよった。どうかの、具合は?」
ローゾ氏が声をかけた怪我をした市民は、明るい声で答える。
「いや、酷い目にあいました。普通に昼飯食べてたら、いきなり地震が起きて、次の瞬間、どっかーん!ですからね。ワシも飛んできた大岩で頭をうって瀕死の大怪我!」
「その割に元気じゃの。どうしたら大怪我が治るんじゃ?」
「いやね、あの神様の代理人のようなお人が空飛んできて、それから凄かったですなぁ……あたり一面、灰と砂と岩だらけだった町が、みるみるキレイになり、灰も砂も岩も空中に浮いて、自ら町の外へ出ていったんですよ。嘘みたいに思えるでしょ?でも、これ本当の話ですぜ。ワシの頭の傷も、手を近くにかざしてくれただけでみるみる傷が塞がり、血が止まり、挙げ句の果てがベロンとめくれ上がってた頭の皮まで元に戻っちまったんですよ。他の怪我人たちもそうです。手や足が折れていようが治らないほどの火傷だろうが、全て元に戻す勢いで治してた……あのお方、何者ですか?神に祈るだけで何もしてくれない教会の神父様と違い、あのお方は何も要求せずに全てを治し、全てを片付けてくれたんでさぁ。あの方こそ神ご自身?それとも神の代理人ですかい?」
どうやらアドミラル、とてつもない力を発揮したようだなとローゾ氏は推測する。
さっき、火山を何とかするとか言っとったが、まさか……
ローゾ氏が火山の方へ目をやると、信じられない光景が映った……
さっきまで火を吹いていた火山の噴火が止まっている。
それどころか、町のそばまで流れてきていた溶岩流、それがどこかへ行こうとしている……
「何じゃ?何が起こっておるのか?アドミラルは何をやっておるのか。何を、どうすればこんな事ができるのか……あやつ、有能どころの話じゃない……もしかしたら、召喚したのは本当の意味で最強の存在かも知れんな」
溶岩流が流れ着いたのは、大きな湖だった。
おまけとして、その湖に湧く地下水が、いつの間にか温泉になっていたと後で分かった。
その町が、その湖に温泉旅館を建てたと言われ、その温泉は様々な病に効いたという……




