球状生命体との交渉。 どうやら、仮説は正解だったようです。
長くなりましたので、切ります。
テレパシー発信から数秒後、返信が来る。
さすが、良きにつけ悪しきにつけ行動的な種族だな。
〈地球人と言う見知らぬ種族よ。抗議は受けるが、我々とて生き延びるための保険という意味でタンパク質生命を探し続けるのは種族のさだめ。それを根本的に解決できるのなら、どういう方法があるのか?〉
ふむ、言ってることは割合まともだな。
もっと独善的な奴らと思ってたが、そうではないらしい。
こりゃ、何とかなるかも。
〈そのための討議も交渉も用意がある。まずは、こちらを受け入れて欲しい〉
〈わかった。こちらの受け入れ準備が整ったら、また知らせる〉
さて一段落だ。
こちらも惑星に降下する準備をするか。
「とりあえずの話はついたぞ。みんなで球状生命体の元へ乗り込む。フロンティア、搭載艇に全員、乗船で行くぞ」
「はい、マスター。護衛は最大限で行きますか?」
「いや、俺のサイコキネシスも強力になってきたし、他の各自も相当な戦闘力だしな。まあ、護衛は不要だ。何とかなるよ、最終的には、お前って本体もいるしな」
「了解しました、マスター。では、個人バリアは最低限、装備してくださいね」
〈こちらの準備は完了した。大気圏降下してきても大丈夫だ〉
3時間後か。案外早かったな。
よし!
搭載艇、発進だ。
ということで俺達は球状生命体の星へ到着した。
宇宙空港には俺達の搭載艇の他に宇宙船がいない。
超VIP待遇か、あるいは危険な宇宙船と見られて単独監視されているのか。
こりゃ、両方かな?
俺達の案内にと人員が派遣されてきたようだが……
これが球状生命体か。
初めて見るが、なるほど、球状のカプセル体のような肉体が中に浮いている。
これは予め聞かされていなかったら元々がタンパク質生命体だとは思えないよな。
あ、コミュニケーション方法を聞いておかねば。
〈お初にお目にかかります。私は地球人。後のクルーは、同じタンパク質生命体が一名、不定形生命体が一名、後は人工頭脳です〉
〈地球人と言われる、知らぬ星の方。クルーの中に汚らわしき汚泥のメンバーがいるようですが?〉
〈不定形生命体ですね?私は汚らわしいとも汚泥のようだとも思いません。好ましい姿だと認識しています。ところで、そちらは通常のコミュニケーション方法としてテレパシーで大丈夫ですか?我々はテレパシーに慣れていますが、なんなら音声でも大丈夫ですよ?〉
〈通常は我々も音声で会話する。しかし、互いの言語に精通するまで時間がかかるのでテレパシーで会話をお願いできるかな?〉
ふむ、ホームグラウンドなのか、ちょいと上から目線だな。
まあいい、話はこれからだ。
〈では、テレパシー主体で行くとしましょう。討議と交渉ですが、特別な施設で行いますか?〉
〈そうだ、我々の星の最高会議のメンバーが揃っている施設があるので、そこで行う用意をしている。案内するので、ついてきて欲しい〉
ってなわけで俺達は案内人の光球に連れられて、およそ生命体が建てる建造物とは思えないほどの大きな建物の前にやってくる。
ここは宇宙空港からも見えていた建物なんだが大きすぎて距離の感覚が狂うほどの威圧感を感じる。
〈この中で星間連合の代表達が君たちを待っている。討議も交渉も、この中で行って欲しい〉
〈分かった。案内ありがとう。君に幸運があるように〉
案内人とは、ここでさよならする。
ここが星間連合の会議場だとすると、わりとまともな星間連合じゃないかな?
と思えてきた。
少なくとも、家畜と主人の関係じゃ無さそうだな。
俺達は建物の中に入る。
建築物として、やはりタンパク質生命体の基本は守られているようだ。
球状の身体では不要な階段や窓など地球人の俺からすると普通の作りになっている。
さっそく会議場の中に入る。
拍手も歓迎の言葉もないが、様々な生命体が席に付いているのが見て取れる。
その中には球状生命体の代表もいる。
おや?
議長らしき生命体もいるのだが球状生命体ではない。
俺達の予想は良い方へ裏切られたが帝国制度じゃない星間連合なら、なぜ不定形生命体に、あんな酷い仕打ちをしたんだ?
俺達は会議場に一際明るく輝いていた一つの席、どうやら俺達のために空けてくれていたであろう席へと近づく。
空いているのは一名分、ただし、離れた場所に、観客用にと数名分の席が空いている。
後は、あそこへ座れってことだな。
俺はフロンティアへ目配せする。
フロンティアは早速、俺以外を引き連れて観客席へ行く。
俺は議会の席に座った。
議長が何か喋る。
と同時にテレパシーで内容が伝わる。
同時翻訳だな。
〈ここに見知らぬ星、地球から来た客人を迎えることが出来て光栄に思う。彼は不定形生命体に対する我々の攻撃に不満を抱いて、この星へ抗議にやって来たという。その抗議は受けようと思う。その関連で球状生命体の養分補給のやり方や、それに伴うタンパク質生命体の補充も、問題として交渉・討議したいとのこと。地球の方よ、それに間違いありませんな?〉
〈はい、間違いありません。私は、どういう形であれ他の生命体を攻撃するのは間違っていると断定します。宇宙そのものが過酷な環境なのだから全ての生命体は互いに助け合うことが正しいと思っています〉
〈そうですか……不定形生命体の件は、こちらとしても不幸な出来事だったと感じています。星間連合が、今のような形式になったのは数百年前のこと。それまでは球状生命体の星間帝国でした。その頃の過ちを正そうと我々も動き出していはいますが不定形生命体の星の場合、問題が主星の中でしたから解決できなかったのです〉
〈太陽の中に打ち込まれた制御装置は我々が取り出して無効化しています。これからは太陽も小さくなり、やがては元に戻るでしょう〉
〈おお!それはかたじけない。本来、我々がやらねばならないことを肩代わりさせたようで、お詫びしよう〉
〈まあ、それは解決済みなので、もう良いとして。球状生命体の栄養補給の件ですが現在では、どのようになっていますか?〉
球状生命体の代表と思わしき個体が発言する。
〈お恥ずかしながら昔と変わっていません。吸血行為と衝動は我々が昔の固形物の摂取から脱却した時に選んでしまった悪癖です。それも、味の違いからか我々の先祖によく似た生命体の血を好み、それから離れれば離れるほど味が落ちて摂取できなくなるという……〉
〈ふむふむ。それでは、テストとして私の血液をサンプルで提供しますので球状生命体の皆さんの好みに合うかどうか、チェックしてみて下さい〉
〈地球などという聞いたこともない星の方ですよね?遺伝子的にも適合するとは思えないのですが。ああ、これがサンプルですか……んー、よい香りです。極上の血液だ。酔ってしまいそうなほどに芳しい……って?!なぜ?!なぜに、あまりに遠すぎて聞いたことも無い星の生命体の血が、こんなに美味そうに感じるのか?!〉
やっぱりな。
最初の疑問は解消。
じゃあ、最後の疑問に移ろう。
〈やはり、でしたか。不定形生命体に聞いたのですが球状生命体の方々も、この星に発生して進化した生命体ではない、とのこと。もしや主星からの移住、そして、それに使われたのは、もしかして宇宙船ではなくて転送機ではありませんか?〉
〈な!なぜ、我が種族の過去を、そこまで知っているのか?!それも、転送機での移住など我が種族でも知らぬ者が多いというのに?!〉
〈はい、よーく知ってますよ。私も、その元々のタンパク質生命体種族を先祖に持つ者ですからね〉
長くなるので、続きは明日に。
謎解きと、解決法が明かされます。