その星には今日も強い風が吹く 2
今回は、星の歴史と地上の様子。
ここで時を遡り、所も変える。
ここは強風が吹き荒れて止むことのない(止むのは年に数日のみ)地上世界。
文明どころか生命すら長らえるのが難しい環境に、それでも生命はあった……
最初は波が高いなどというレベルのものじゃない高波が常に発生している海の海上ではなく、海中。
海上に近い浅い海中では高波にさらわれてしまうので、海中深く、生命は発生し、安定して栄えていく。
深海から中層まで生命の満ちた海には、そのうち強風に対応して浅瀬まで進出する種族も出てくる。
最初は中層から浅瀬へ、おっかなびっくり進出していった生命体(魚類?)は当然、高波にさらわれて砂浜や崖へと運ばれる。
岩に叩きつけられて開きになる奴もいるが、少しの傷で生き残り、強風の中で地上と海の両方に適応する種族もでてくる(両生類?)
そのうち、身体を平べったくして風に負けない移動力を手に入れる四足歩行の陸上適応者が出現。
ただし、平べったい身体のままでは移動速度も遅く、よちよち歩きに近いものにならざるを得ない。
次に、身体は通常のサイズ、幅も長さも高さもある爬虫類のような生物が現れる。
最初は強風に負けてしまい、歩き出そうとすると転倒し、使い物にならない。
それでも段々と、背びれのように見える扇形の薄膜を張った器官を持つようになり、移動を阻害する強風を逆に利用する種類も登場。
どうやって移動するかと言うと、移動したい方角へ風が吹いているなら簡単、風を遮る方向へ帆のように見える器官を動かし、そのまま風に押してもらったり、短距離なら浮くくらい、移動に力を入れずにすむようになる。
逆風の場合は?
帆の角度を工夫して、ジグザグに進むような形になる(効率は悪いが、風に逆らうように自分の体力で進むより楽)
様々な方面へと進出することとなる、この種族は、後に帆を羽に代えて、この強風の星に初めて登場する鳥類となる。
あくまで地上の闊歩にこだわる種族は、最初、地上にはびこる背の低い木や雑草類を利用して自分たちの巣を造り、そこを基点として動き回る事となる。
ここから、地上種と地下種へ分裂していくこととなるが、地下種の歴史は前回語ったので、これまでに。
地上種は、巣の安全のため、巣の回りに壁を築く事を覚え、それを厚く、高くしていくことを子孫たちにも教えていく。
いつの間にか、あちこちに小さな壁に守られた巣が連立し、それが集まって集落となり、村となり、町となる。
歴史は地下と同じで繰り返すが、地上には風の影響がありすぎて、地下ほどの進化は無い。
壁から出る探検隊や、外敵から町を守る守備隊などが結成されるが、壁から出るというのは生命の危険に晒される。
他の町との交流が、なかなか活発にならないのは仕方ないが、この強風が他の町との戦争も制限しているのも確かだった。
地上での確実な移動手段が確立されるまでは、地上では大都市になり国になるような進化は時間がかかる……
その間に地下では大都市、国への進化が完了して、ちょっとした高層ビルや舗装路も完備されていく。
ついでに地上からの採光と換気の問題も徐々に解決されていく。
ようやく地上世界が大都市や国家としての概念を得るようになったのは、地下世界とは1000年ばかりズレた頃。
かたや近代、かたやローマ帝国のような、あまりにズレた常識と国家感覚。
この2つが出逢えば衝突と戦争……
予定されているような結果であった。




