表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
478/813

或る男の、真に稀有な日々 4

街の散策と取材日記です。


ああ、久々の街歩きだな……

私は、そんな事を思いながら歩き始めた。

まず目についたのは食べ物屋の多さ。

海外の食べ物屋もあるが健康食品として「グリーンスムージー」なる飲み物屋まであったりする(まあ、そこへ入っていくのは女性とか、男性でも健康に留意しているような人々だったりするが)

変わったなぁ、この街。


手近な食べ物屋(鳥を焼いたものを食べさせる店のようだ)に入る。

注文を取りに来るというシステムを初めて経験するが、これは便利だ。

私の知っている配給システムでは一列に並んで順番が来たら、目の前の大皿や小皿を取るだけで選択の自由など無かった。


メニューとかいう紙を渡され、この中から選ぶらしいが、とりあえず私は、この店のおすすめセット、という物を注文する。

しばらく待っていると給仕がやってきて、私の目の前に大皿一枚と、何やら色の着いた飲み物を置く。

受け取ると同時に金を払うシステムのようで、私は小銭を言われたとおりに払う。


「ごゆっくり」


という給仕の声を聞きながら私は見も知らぬ色付きの飲み物を凝視する。

でかいグラスになみなみと注がれた飲み物は深い琥珀色の綺麗な色、底から立ち上る細かな泡により、なんとも美味そうな見た目をしている。

香りは今まで私が嗅いだことがないものだ……

少し口をつける。


「!!」


そのまま飲み物を言葉もなく喉へと落とし込む私。

大きなグラスが数秒にして空となる。

飲み物のお代わりを注文して次に大皿に乗った鳥肉の串焼きを食べてみる。

美味い、これも美味い!

またたく間に大皿を空にした私は、おすすめセット以外の鶏肉串焼きを数点、注文することに。

飲み物が置かれ、次の皿が全て揃ったところで私は改めて呑み、かつ味わう。


店を出た時、私は、この国が民主化された喜びを感じ取っていた。

これだ、これなんだ!

飲食の豊富さと満足度は一流国の証だぞ!

私は革命前の我が国の貧困さを改めて感じていた。

次の店に気の赴くまま入り、またオススメがあれば注文し、前の店とは違った飲み物を注文する。

流石に私も飲食店での新しい注文方法に慣れた。

とりあえず数件の店を体験し、この世のものとは思えぬ天国の味を体験した後、足元がふらつき出したので家に戻る事となる。


過去とは、あまりに違う食事風景とメニューを満喫した私は、そのままベッドへ倒れ込む。

数十年間、味わうことのなかった深い眠りというやつを私は初めて体験した。


次の朝、飲食店とは違う店を探す。

私の家の周辺は、どうも飲食店ばかりのようで、私の探す店達は少し遠出しなければならないようだ。

探している店のため道順を聞きたくて、そこいらを歩いている人に話しかけるが、どうにも会話が続かない。

私も戸惑ったが考えてみれば当たり前だ……

我が国は革命前は外交下手で通っていた国家のワーストワン!

そんな国の国民達が同国人とは言え初対面同士で会話が続くわけがない。

仕方がないので街を巡回している警邏に道を聞くことにする。

革命前の警邏は、話しかけるな!

の雰囲気があっちこっちから漂う、見るからに危ない暴力集団だったが今は違う。

編集長言うには、


「革命前と後で一番変わった職業は警邏だよ。革命後の警邏は、ともかく力で抑えるのではなく市民と仲良くやるという基本事項に変わっている」


だそうなので、私も思い切って道を聞いてみる。

親切にも途中まで道案内してくれるとのこと。

あまりに私の憶えている警邏と違うので、それを聞いてみたら、


「以前は、やりたくなくても上からの命令で市民を力で押さえつける仕事をしていたが今は市民の喜ぶ顔を見ながらの仕事となっている。今のほうが幸せだ」


とのこと。

何だ?

あまりに革命前と違いすぎないか?

違いの差に私は目眩すら起きそうだった。

商店街と言うそうだが様々な店が立ち並ぶ一角へ来た。

私が憶えていた、この一角は政府の広報を作る印刷局とか市民のためとか言いながら監視員がたむろする少々、危険な区画だったが。

おお!

海外の作品すら扱う書店まであるではないか!

もちろん、私の著作も並んでいる。

何か底知れぬ感慨に打ち震えながら書店の中を彷徨う私だった……

結局、書店を詳細にチェックしていたら店主に挨拶され、私の著作を示して、


「これは私の書いたものです」


と言うと激しく感動されてしまい急遽、サイン会なるものの打ち合わせが始まることとなり、翌日から数日間、私は読者の求めに応じて著作にサインをしまくった。

腕が痙攣する寸前だったことは述べておきたい……

まあ、嬉しい痛みであったが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ