修羅の星 28
もう少しで終わりますので、ご辛抱を(笑)
友好条約を締結した両国ではあったが両国共に同盟国の問題がある。
陽昇国の同盟国は、かのジャールマン帝国。
アーメリゴ合州国の同盟国はジャールマン帝国に今しも王手をかけられようとしている西部方面と東部方面(帝国基準)の各国。
とりあえず同盟国としての締結はせず2国間での友好条約となったのは仕方がない。
でもって陽昇国の神皇陛下の仲介によりアーメリゴ合州国とジャールマン帝国、超大国と呼ばれる国同士の会談が行われる事となる。
この会談にも、あっちやこっちから邪魔が入り(帝国と戦争やってる当事国からは必死のお願い。当たり前ではあるが合州国と帝国が友好条約など結んだ日には自分たちは見捨てられかねない)それこそ暗殺まがいの脅しすらかけられたが、その辺りは会談中の停戦という形にして落ち着くこととなる。
陽昇国と合州国との友好条約締結後、三ヶ月ばかり後、ようやく合州国と帝国のトップ会談が開かれる事と相成る。
合州国大統領が帝国へ招かれて首都ジャールマニアの大会議場にて会談が行われる。
その後、大統領は帝国政府よりもてなしを受けるが、そこには兵器廠の見学まで含まれていた。
「いかがですか、ネィディ大統領。我が国では最新の研究成果として、こんな物も試作しております」
という同行している帝国皇帝の案内(破格の待遇だ。もう、陽昇国の総理並)で研究所を見学したりもするが……
「皇帝陛下。一体あれは何ですか?」
不思議な形をした物が工廠の床に置かれている。
それは全くの球形。
「ああ、あれですか。はるか昔に、この星に来た神の御使いが乗っていた物の試作品です。まだまだ不安定で実用に耐えませんが一応の試験機としては使えると思っています」
ここで大統領、ピンときた。
「はるか昔に、この星に来た神の御使い……これは以前にお会いした陽昇国の神皇陛下にも同じことを言われました。もしや帝国にも陽昇国と同じ超科学の技術が伝わっているという事ですか?!」
皇帝陛下、ニヤリとして、
「そうですな。御使いが来たと言われるのが約800年と少し前。その頃、あっちもこっちも野蛮人ばかり、もちろん我々も同様ですが……あまりに凄惨で酷い戦いばかりの星に呆れ果てた御使いは一瞬にして皆を気絶させたそうです。そして、いかなる手段か傷ついた者たちも癒やし元に戻し……切られた足や腕すら元に戻ったとの記録がありますな……その後、眠りから覚めた人々に戦いの虚しさ、愚かさを教え込み、そして未来に必要となるだろう知識を詰め込んだ贈り物を、その当時にあった国々へ渡して星の世界へ帰っていったそうですが……800年以上前から存在している国とは我が国と陽昇国、その他にもいくつかあったようですが滅亡してしまった国が多いのは残念です。侵略者にお国の秘宝は渡せませんので破壊……はされていないと思いますが、もう誰も知らない宝物庫へ隠されているのでしょうな」
ようやく納得した合州国大統領。
超大国と自負していた自分たちが情けない、星の知識は800年以上前から、この地にあった。
自分たちの国は、たかだか建国400年足らずで、とてもじゃないが星の知識などという秘宝を貰っているわけがない。
「それで帝国と陽昇国が星の知識を独占したわけですか。個人的に全ての情報を公開するべきだと思うのですが」
あまりの知識と情報の格差に少し怒りを覚える大統領。
しかし帝国皇帝は少しも動ぜず、
「では我々のもつ知識を、そちらにも全て公開したとしましょう……そちらの国で知識の小出し、時代に合った技術として国を守るだけの発明を出し続けられますかな?おそらくですが、そちらの国では公開を止められないでしょう。これ以上やったら一国のみ生き残って他は滅ぶという選択肢を容易に選ぶのが合州国だと思うのですが?」
ニヤリと黒い笑みを浮かべる皇帝陛下。
一瞬で、その笑みは消えたが大統領には、
『ほら、否定できないだろ?お山の猿大将がお似合いの合州国さん』
と言われて反論できない自分がいた。
証拠は陽昇国に落とそうとした(実際に落とした)ウラン爆弾だ。
あれが普通に効力を発揮していたら……
陽昇国の首都は壊滅的破壊、死者と、後に判明したが放射線の影響で早期に死に至る市民が万できかない数になっていただろうと情報部より報告書が来ていた……
言い逃れは出来なかっただろう大量虐殺を行った国として、いつまでも汚名を背負って生きていく事となっただろう。
大統領は、それ以後、星の知識を寄越せと他国に言うことは無かったと言われる。
会談が終了し、共同宣言が出されることとなった。
とは言え未だ同盟国が戦っている相手国であり平和条約を結ぶなどとは口が避けても言えない。
しかし、ここで帝国皇帝が驚きの宣言を出す。
「我がジャールマン帝国は先日からのアーメリゴ合州国大統領との会談により現在実施している西部方面、東部方面の休戦協定を拡大し互いの国の境界を確認した後は終戦としても良いと宣言する。これは互いの確認によるので不満ならば戦いを再開するのもやぶさかではない」
驚いた大統領だったが、
「皇帝陛下のご英断により、この地に平和がもたらされる道が出来た。私は今すぐにでも同盟国を訪問し、この協定と終戦条約を確認するように各国に伝えようではないか!」
またまた大統領は右に左に走り回ることとなるが、その顔には笑みが溢れていた。
ようやく、この星に戦いのない時代が来る、それが嬉しかった……
強情な国もあったが、それでも一年後。
ついに帝国と各国との終戦条約が締結された。
まあ、国土の半分以上を帝国に占領された国もあったが、その地の住民たちが帝国領のほうが良いと叫ぶため元に戻すことは諦めるしか無かったという……




