修羅の星 9
うーん、何だかキーボードが軽くて、いくらでも書けそう(笑)
作者、こういうのが合ってるのか?
アーメリゴ合州国と、とうとう戦闘状態に入ってしまった陽昇国。
宣戦布告はされているため、不意打ちがどうのこうのと相手国から文句を言われる筋合いはない(そもそもアーメリゴ合州国からの宣戦布告だ)
緒戦は、なんとか勝つには勝ったが、相手の機動部隊、なかんずく、戦艦を中心とした部隊を討てなかったことが、この先の戦争に響いてくる。
とりあえず相手の最前線基地であるブラックパール港を焼き尽くし、貯蔵されていた物資や弾薬、食料などを利用させなかったのは良かった。
なんとなれば戦艦や重巡洋艦は燃料を大喰らいする。
バカでかい排水量を持つだけあり、それは海に浮かぶ巨大な砲台。
重巡洋艦すら巨大砲塔を数門持つのに、戦艦ともなれば巨大な副砲が数門、更に巨大な主砲を数門持つ。
こいつが火を吹けば(斉射)下手すると数十km先へも砲弾が飛んでいくことになる。
戦艦の主砲に耐えられるのは同じく戦艦の鋼鉄の防壁のみ。
戦艦はヘビー級ボクサーと同じ。
足を止めて(航行状態からでは撃てない)副砲や主砲を撃てる状態に持っていかなければ主砲を売った反動でひっくり返る事も予想されるくらいだから。
しかし、長い航海の後、最前線で補給が受けられると安心した矢先に港が襲撃されたと報告が入る。
徹底的に破壊しつくされたブラックパールポートは港内部に停泊していた中巡、軽巡、駆逐艦部隊が全滅。
資材や食料、燃料タンク群も徹底的に破壊され補給地どころか島影すら変形しているとのこと。
残り少ない燃料で、どうやって後方基地まで帰投するか戦艦部隊を率いるブルドッグことサミュエル准将は悩んでいた。
「おい、副官。お前の立てた計画通りにやってきたら目の前で燃料や食料、資材を山と備蓄していた基地が焼かれたぞ。何が、隠蔽と欺瞞情報で陽昇国海軍は最前線基地を見つけられないでしょう……だよ、このやろう!欺瞞情報なんか何にもなりゃしない。敵さんは、しっかりと備蓄基地を見つけてたじゃないか!それも俺達の目の前、あと、ほんの半日でたどり着くってところで、ぜーんぶ、いいか!ぜーんぶ焼かれたんだよ!サントフラークの海軍基地まで戻ろうにも残りの燃料なんか3割もありゃしねーぞ。いっそ、このまま燃料の続くまま突撃して、どっかの島に乗り上げてよー、固定砲台とするか?!俺達は死ぬか捕虜確定だけどな」
えらい、べらんめえな指揮官もあったものだ。
まあ、これで勇猛果敢な点はあるが下士官や下級兵達から慕われるように自分より下の階級の者たちには優しい親分肌。
まあ、だからこそ敵艦隊に囲まれて絶体絶命という時に真正面への撤退戦などという馬鹿げた、しかし結果的には最高の作戦となった過去も持つわけだが。
最高指揮官に文句を言われた副官にして艦隊参謀、ジャックナイフの如く切れるという思考能力を持つサー・ジョン・リップ大佐が心外だという表情で言葉を返す。
「准将、こんなことは想定済みです。どのみちブラックパールポート基地は水深が浅すぎて戦艦部隊は入港不可能でしたから。少々、ここで待つとしましょう。そうすれば敵艦隊の方から、こちらへ近づいてきますから……アウトレンジからの一方的な主砲の暴力というものを見せつけてやれば良いのですよ。ちなみに大形輸送船部隊が6時間後に、こちらへ来る予定です。敵艦隊を撃ちもらしたら、それこそ輸送部隊がやられかねませんよ、頑張ってくださいね」
敬礼するとリップス大佐は戻っていく。
サミュエル准将は独り言のごとく、
「そういうことかい。あの島自体が、でっかい囮だったてぇわけか」
今度は声を張り上げて周りの者たちに、
「おい、てめーら。戦争の本番は、これからだ。なんとしても敵の先鋒、俺達で潰すぞ!急げよ、もう少しで互いの識別圏に入るはずだからな!」
あいにくだが准将は気づいていなかった……
陽昇国には魔導力が使えなくとも機械的に高空へ上がる手段が有るということを。
陽昇国も同盟国である帝国の大使や武官以外にはヘリコプターの実機は見せなかった。
将来的にアーメリゴ合州国は参戦してくるだろう、それも敵として……
その予感があったのかも知れない。
ともかく准将殿が配下に号令をかけた時には、もう戦艦部隊は、その位置と全容とを陽昇国の重巡部隊に知られていた。
重巡 加山、これは甲板をヘリ発着に特化させた偽装空母とでも言うべきものだった……
かたや戦艦部隊、かたや重巡までだがヘリ部隊をもつ特殊艦隊。
海戦の時は刻一刻と迫っていた……




