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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
超銀河団を征くトラブルバスター
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助けが要るなら、こちらへどうぞ 3(最終話)

短い話になっちゃいました。

さて、お次のネタは……


数十機の球形船が、その宗教団体住居の地下より発進していったが、もとより災害規模に対して、そんなものは焼け石に水。

しかし、いつの間にか直径50mの球形船は、その数を増やしていた。


増やしていたどころの話ではない。

実際には航空機も飛べない成層圏の、ほぼ宇宙空間に近い高度に巨大な母船、直径5kmほどの球形船が浮かび(大災害の最中に降りてきていたらしいが、その時には人々は天を仰ぐ余裕すら無いので確認は無理だったろう)そこから無数とも言える小型球形船を吐き出し続けていた。


完全なロボット船だろうか、その母船から吐き出された無数の小型球形船は数隻が集団となり、あらゆる方向へと散っていく。

目的地へ到着すると救助資材と機材が勝手に放出され、機材の中のロボット救助隊らしき集団が救助機材や資材を用いて瓦礫を撤去し、死者以外を治療し、そしてとりあえずの避難所として人々や動物を対象に住居を構築し始める。


それは圧縮された住居とでも言うのだろうか……

材料はわからないがパックされている1m四方の立方体をロボットたちが瓦礫撤去後の空き地へ運ぶと、そこで圧縮袋(?)の開放操作を行う。

瞬時に元のサイズに戻る住居は、ポン!

という破裂音に近いものを響かせながら、次々とパックを開けるように、そこに構築(設置?)されていく。

恐る恐る、その設置された新住居に近寄り、中をのぞく被災者と動物たち。

人には住居、動物たちには馬小屋とか牛小屋に近い簡素な建物を提供するようで、言葉を発しないロボットたちは次々と作業を進め、それが終了すると、これまた何も言わずに球形船で去っていく。

ただし、その地区の警察や政務を執り行う部署には、予め(御子ではない声で)災害救助に向かうと連絡があった。


「危険な場所には近寄らない、崩れた、倒れた家屋やビルにも近寄らない。人命救助だけに徹していただきたいのです。あとのことは我々がやりますので手を出さないで下さい。くれぐれも、これだけお願いしますね……あ、そうだ。作業に関して何の代償も金銭も不要ですので。質問や疑問があっても後にして下さい。災害復旧作業が終わりましたら団体を代表して声明を出しますので」


これを聞いていた役所や警察、軍の救助隊は、瓦礫撤去や道路の復旧は何も手を付けず、ただただ人命救助に走り回っていた。

後に球形船の圧倒的な技術を目のあたりにした軍の救助隊や消防組織の隊長クラスは、こうメディアのインタビューに答えている。


「あれは、とてもじゃないが人にできる技じゃないと思ったね。高層ビルがまっぷたつに折れて倒れているものが、みるみるうちに片付いていくんだ。道路も幹線から裏路地まで、あっという間に舗装までされて行くんだ。おまけに俺達が救助しても、もう手遅れに近いと思った重傷者が、数分後には息を吹き返してるんだ。次の日には容態が安定し、命に別状なしと判断されていくとは無茶苦茶な事だぜ。こんな集団、率いているのは新興宗教団体だって?いや、違うだろ。こんなの神様自身が率いてる天の軍団じゃないのか?天使ってロボットだったっけ?」


もう、答えも支離滅裂になっている。

災害復旧には、一ヶ月かかった。

惑星規模での大災害である。

よくもまあ一ヶ月で復旧できたものだ。

ようやく終わりか、と皆が思った時、大活躍が一段落していた御子が言葉を発する。


「まだです。まだ最終の災害は来ていません。太陽が膨れ上がり、とてつもない高熱と宇宙線が、この星を襲うのです……が、しかし、何も心配しなくて良いのです。空の彼方の大いなる存在が、その巨大なる御手を差し伸べて、太陽を沈静化してくれるでしょう。我々の知らぬところで偉大なる存在は、その巨大な力を振るうのです」


その言葉で、あらゆる天文台が太陽へと、その注意を向ける。


数日後、太陽黒点の異常な数値が報告される。

それまで変わること無く輝いていた太陽が、その一瞬(太陽にすれば一瞬、それは数年にも数十年にも及ぶかも)だけ牙を向く兆候を見せる。

しかし、その数時間後に太陽黒点は正常な数値になり、通常の輝きを取り戻した太陽はいつもの優しい顔を見せる。

御子は、その翌日、声明を発表する。


「この星の子らよ。空の彼方の偉大なる存在により太陽も安定化しました。もう全て終わりました、安心して下さい。そして偉大なる存在からの言葉として今回、私達が使った船や機材のデータを全て公開します。この団体も解散しますが、これは、この星が次の文明段階、宇宙文明へと向かう基礎となるためです。私も、これにて、この星を去ります。これからは、あなた達が、この星を見守るのですよ……」


そこまで言うと御子と呼ばれる少女はキラキラと輝く光に包まれ、その場から消え去った。

慌てた教団員たちが、あとの3名を探すと、そこには一枚のデータチップだけが置かれていて、3名の姿は無かったと言われている。


データチップにあった様々なもの、特に宇宙航行すら可能な球形船のデータと、それに必要なエンジンとエネルギー炉の設計図と理論は、あまりに時代を超越しすぎていて、それが解読されて試作宇宙船が誕生したのは、それから数十年後にもなった。

ただし、それから星系内に宇宙船が飛び交うまでには、それほど時間はかからなかったそうで。


この若い宇宙文明に、もう一つの秘密、跳躍航法の理論とエンジンのロック解除の栄誉が与えられるのは、いつのこととなろうか……

それこそ、神ならぬ身に分かろうはずもない……


「あーっ!久々に別の姿になりました!大人の姿ってのも良いものですね。たまには大人の姿になりましょうか?キャプテン」


「やめてくれ、ころころと変身しまくると誰が誰やら混乱する!しかし、エッタ、今回はご苦労さま。ライムとのコンビで働いてもらったけど、うまく行ったな」


「私は本来、ご主人様のような方にお仕えするのが通常任務なんですけど。ご主人様やゴウさんのコピーを使ってみましたが、けっこう面白い生活でしたわ、御子って」


「俺のコピー人間とはね。師匠と俺がガルガンチュアに居残りするって決まった時には、どうなるかと思ったけど、あの星、大丈夫ですかね?」


「太陽の不安定化は太陽制御装置を打ち込んであるから大丈夫だとしても問題は国家間か……惑星統一国家になるのは、いつになるかねぇ……データチップを渡すのは早すぎたかなぁ」


巨大なる合体宇宙船は今日も宇宙を旅する。

まだ見ぬ星、文明、そしてトラブルを求めて……


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