トラブルバスター、解説する
一応、武力否定のはずの楠見とガルガンチュアの、行動説明です。
緒戦を無傷(どころか、圧倒的な恐怖すら相手方に刻みつけて)で勝利したガルガンチュアは、終戦条約に調印(楠見ではなく、ここでは郷が調印式に出席した)し、
* その支配体系に口を挟まないこと
* 希元素発生装置を各惑星に一台づつ設置すること(メンテナンスは不要。装置のエネルギー供給も不要だが、生命体の居住区からは安全確保として一定の距離を置く、そんな場所を要求し、設置する)
以上の項目のみ要求し、それ以上は無いと宣言する。
ただし、装置の撤廃や破壊等が試みられた場合、哀しい事態が起きるので承知してくれと言い残して去ろうとする郷に、
「え?支配権の確認だとか、抵抗運動の監視組織だとか、様々な事はどうするんですか?」
と、星系代表たち。
郷は、こう言い放ったという……
「そんなこと、こちらは関与しません。抵抗運動?まっとうな社会と政治組織があるなら、そんなものは芽が出るか出ないかのうちに社会が摘んでしまうはずです。無くならないのであれば、根本的な問題があるってことでしょうね。では!」
例によってデータチップが渡され……なかった、今回は。
もう、ガルガンチュアからの技術データが無くても跳躍航法は実現されていたし、植物生命体としての巨大な意識体は、各惑星の災害救助や危機管理を実現していたからだ。
ガルガンチュアは、次の星系に向かう。
「さて。もう集合意識たる植物生命体は、この戦争の意義と役目を知っているはずだから、さっさと、その他の生命体たちに救いを与えに行こうかね」
軽く言い放つ楠見。
「主……あなたは銀河を救う計画を実行するのに、なぜ、悪役の真似をするのか?普通に説明して、希元素発生装置を置かせてもらえば済む話じゃないか」
ガレリアが不満を漏らす。
まあ、今回の作戦に不満があるのは、楠見以外の全員のようだが。
楠見は、仕方がないなぁ、とでも言いたげな表情を見せ、説明する。
「性急だとは思う。しかし、これは必要な作戦だ。第一、ここの最上位にある植物生命体の集合意識は賛成している。ただ、彼らのテレパシー能力は弱すぎて、支配下にある獣や昆虫たちとのコミュニケーションが全面的には不可能なんだそうだ。集合意識とコンタクトして話し合ったんだが、種族的に弱肉強食だから、圧倒的な武力を見せつければ話は早いだろうってのが結論だったよ」
フロンティアが疑問を口にする。
「テレパシー能力が弱い?支配者として最高位なのに、どういうことです?それこそ、こちらからRENZを供給すれば良いのでは?」
「ああ、説明が足りなかった。集合意識ってのはリアルな肉体を持たないんだ。だからRENZは対象外。ちなみに集合意識は一種の神として崇められているので、一部の受信能力の強いテレパスが巫女の役目をして言葉を伝えているらしいね」
宗教ってのは厄介なものだよと、楠見はため息混じりに語るのだった……
(ちなみに銀河系やアンドロメダを含めた汎銀河同盟内部で一部だが楠見の名が宗教的な情熱をもって語られていることはガルガンチュアでは知られていない。知らないほうが幸せな事実というものは、たしかに存在する……)




