銀河のプロムナード 皇帝と英雄の戦い2
2つの銀河の歴史が、また1ページ(笑)
「司令……隣接銀河の縁に着きました。指令書では、ここで侵略戦争……じゃない、帝国領土拡張行動を起こせと書かれていますが……何をしようにも、物資もエネルギーも底をついているのですが……どうしましょう?」
銀河帝国侵略艦隊(正式名称は帝国領土拡張艦隊)第一大隊旗艦の艦長は、やっとのことでたどり着いた隣接銀河に対する武力行動など出来るわけありませんと説明する。
だいたい、侵略行動に出るためには補給も考えた戦略が必要なのに今回の長征では補給艦隊などあるわけもなく、ほとんど手弁当だけで往復一年以上もかかる旅に放り出されてしまったようなもの。
直轄軍司令官が、なんとか常駐軍の予備燃料までかき集めてくれて隣接銀河への片道燃料は確保できたが、根本的な物資や燃料不足は解消されるわけもなく、行った先で物資も燃料も何とかしろと送り出された、名ばかりの侵略艦隊。
「はぁ……まずは向こうとの交渉から、だな。しかし考えようによっちゃ、これは幸運かも知れないな。なにしろ、あの皇帝の目が日常的にある宇宙では、交渉するより先に急襲爆撃してから最後通牒を出せと言われたものだ。自分だけが正しいと思いこんでいる最高権力者が、名にしおう大馬鹿では戦争すら赤っ恥の連続になる」
艦隊司令が、ようやくまともな交渉からの戦闘行為ができると笑みを浮かべている。
予告もなしの急襲爆撃と徹底的な破壊戦術は、銀河帝国を最終的な勝利者にはしたが、後が大変だった。
徹底的な破壊からの復興は、負けた方には何も残らない。
必然的に勝利者である帝国側からの持ち出しで、新しい帝国領となった星へ復興資材と大金が注ぎ込まれていく……
銀河平定後の帝国に資金も資材も燃料も残らないのは自業自得というものだった。
「では司令。これからの行動をご指示願います。とは言うものの、もうすぐ待機ポイントに駐留するための燃料すら尽きますので、早急にお願いします」
副官が行動計画を急かす。彼には、刻一刻と減っていく各艦の燃料ゲージが報告され続けているのである。
「よし、まずは早急に補給を確保しよう。艦長、この付近の通信から一番テクノロジー的に高いだろう星を選んでくれ。できれば近い星系が良い。燃料を確保できなければ我々は行動不能になり、戦闘どころか帰ることも不可能になる」
艦長が通信部門へ指示を飛ばして数時間後、とりあえずの目的地が決定する。
「ここなら、今の燃料でも充分に寄港可能ですね。では、砲艦外交と参りましょうか」
副官が、思ったよりも手近な星になったので喜んでいる。
艦隊は、その威容からは想像も出来ない内容(燃料ギリギリ、食料も資材も兵器すら最低限度のものしか無い)で、目的地の星へ向かう……
一方、その目的地では一人の老人(年齢的には。見た目には中年、というところだ)男性と、こちらは見るからに中年男性二人が深刻に話し込んでいる。
「シュン様、情報局でも数分前にキャッチしました敵対勢力の大艦隊、そのお力で既に察知されていましたか……問題は、この大艦隊が攻撃的なものかどうか?ですな」
情報局長が話を切り出す。宇宙軍司令長官が後を受けて、
「そうですな。穏便に話ができるようならともかく、出会い一番で主砲を撃ってくるような艦隊ですと、否応なしに、こちらも撃ち返す事になります。はぁ……ようやく銀河が一つになって戦争も無くなったと言うのに何で今さら、こんな大艦隊が現れるのやら……それにしても何処からやってきたのでしょうかね?」
その質問にはシュンが。
「まだまだ遠いんで少ししか読めなかったけど、あの大艦隊の司令官?らしき人物が銀河帝国皇帝のことを考えていた……この銀河には、もう帝国制をとっている星も星系も無いから、そうなると答えは一つ。お隣の銀河だろうね……跳躍航法の暴走事故で、何隻かこちらで救助した隣接銀河の船があるけど、惑星同盟軍とかいう小さな勢力と、圧倒的に大きな銀河帝国軍とが、未だに内戦やってるらしい。まあ、大勢としては銀河帝国側の圧勝なんだろうけど。今回の大艦隊は、もしかすると、こちらへの侵略を目的とするかも……」
双方の内情は分からずとも必然的にぶつかることとなる2つの勢力代表であった……




