銀河のプロムナード マリーのため息
銀河のプロムナード、2話め。
私、予言の巫女姫、マリーです。
ガルガンチュアが私を残して、この星系を去ってから幾年月……あれから10世紀近く経っちゃったんですね。
さすがにガルガンチュアにいた頃に摂取してた食料の効果が300年前に切れちゃって、貰った箱を開けるかどうか、つまり「不老で相対的不死に近くなるか、それとも普通に老いて死ぬか?」の究極的選択を迫られてしまいまして……開けない選択肢を選んでたら、今、ここに私はいないんだけどね(笑)
箱を開けたら黒い雲のようなものが一瞬見えたんだけど、それも私の顔の前で消えちゃって……でも、それから老いることも身体が調子悪くなることも無くなっちゃって、見た目20代後半のまま現在も巫女姫宮殿にいます。
あ、以前に住んでた住居は、なぜか分からないけれど「聖地」とか「巫女の力を分け与えられるパワースポット」だとか言われて一種の観光地になっちゃってる。
今現在、私に会って予言を聞けるのは、ある程度の限られた人数しかいないの。
まあ、セキュリティの問題で、あまり大勢の前に出るのも問題になるんだけど……600年前くらい前に巫女姫就任400年記念とか言うので大きなグラウンドを借り切って30万人ほどの観客集めたこともあったんだけど、その時にテロリストやら暗殺者やらがワラワラと……自分のことは予知しないけど観客の安全のためにと予知能力使ったら、出るわ出るわ死者重軽傷者が万単位!
SPさん、地元警察、地域の保安軍、はては星系軍まで駆り出してのテロと暗殺阻止。
ものすごい騒ぎになっちゃったけど、それをメディアが、
「予言の巫女姫が、ありとあらゆる災悪を自分の元へ呼び込んで浄化してくれた!」
なんて持ち上げちゃうもんだから余計に盛り上がっちゃってね……それから、銀河評議会の偉い方たちから言われたの。
「貴女の存在が、いかに重要なものか理解しました?これに懲りて、大衆の前に出ようなんて無謀なことは金輪際、しないでください。貴女が亡くなられたら冗談じゃなく銀河を割った大戦争が勃発します!」
とか真顔で言われちゃって……それから、普通に買い物にも行けなくなっちゃったのよねー。
必要なものがあれば、お側に控えてる者たちに言って下さい、すぐに揃えますから。
なんて事になっちゃって、住む所も、このバカみたいに広い、見た目ピラミッドみたいな家に半ば強制的にお引っ越し。
以前の住居に残してた家具とかは、大家さんに処分してくださいって言ってたんだけど地域政府のお役人が巫女姫の持ち物を勝手に処分できないだろうと部屋ごと政府で借り上げて(100年単位での自動更新だから、もう買い上げてるんじゃないのかな?)巫女姫の住んでた部屋とか言って観光地化しちゃってるのよ。
でもって私の日常は一ヶ月に数件の未来予知だけ。あまりに個人的、狭い範囲の予知は、もったいないって話みたい。持ってこられる依頼も、この星系で起きそうな地域戦争とかが最低基準で、それより上の銀河的な経済指針とか星震や宇宙震のおきる地域の特定だとか、そんなのばっかし。
あー、昔の占い屋台は個人的な話ばっかりで楽しかったなー。まあ、それもこれも、あのガルガンチュアとクスミさんのせいで、今、こんなんなってるんですが。あ、不満じゃないのよ、そうじゃないの。
ただねー、今でも時々、思っちゃうのよね。あの、クスミさんの最後の選択。
一緒に行くって方を選んだら今頃どうなってたんだろう?
さぞかし面白い事件が次々と起きてたんだろうなー。
未知の未来を予想するのが予知能力だから、私が選ばなかった未来を予知することは出来ないんだけど、ね。ガルガンチュアとクスミさん達、今頃は、どこの宇宙を跳んでいるのやら……
私が一緒に行けなかったんで、代わりのクルーはいるんでしょうか?
今頃、どんな星、どんな生命体や文明に出会ってるんだろうなー……
もう遭うことはないんだろうけれど、でもね……
とある銀河の至宝と言われる予言の巫女姫は、今日も夜空を眺めて少しばかりのため息をつくのでした……




