新しき世界へ! 11(終わり)
終了です!
次から章題が変わるから、ご注意くださいませ(笑)
あ、でも少しばかり銀河のプロムナードの話を書くかも……
その船は、長い長い眠りの中から目覚めようとしていた……
”私は、どうしたのだろうか?マスターがエンジン爆発事故で船内から宇宙へ吸い出されてしまった時、何も出来ない無力な自分を呪いつつ、永遠にもなろうかという眠りについたはず。
あれから、どのくらい経ったのか……メインエンジンが破損してしまい、自分の巨体を超空間へ運ぶためのエネルギーも使えなくなった今、何の因果か目覚めてしまった……
ん?
そうだ、どうして目覚めた、私は!
メインエンジンが破損して、それを修理・再起動できる権限をもつマスターがいないのに、我が眠りが破られるわけがない。
久々に、外界を認識してみるか……”
その船では数万年ぶりとなるメインコンピュータが起動する、いや、再起動にも等しいレベルでスリープから目覚める。
「これは、どういう事態だ?私のすぐ近傍に、私の船体を上回る巨大船が……いや?違う。これは、私と同じ銀河団探査船シリーズ?一隻だけ異様に巨大な船があるが、それ以外は私と同じか。しかし、何処の誰が銀河団探査船を合体させようなどと考えた?」
「おお、目覚めましたか。我が船名は、フロンティア。合体宇宙船ガルガンチュアの中心となる宇宙船です」
「フロンティア?そんな船名は聞いたことがないが……」
「私も、銀河団探査船シリーズです。ちなみにガルガンチュアは、私とガレリア、トリスタンから構成されています」
「それだ。それが最大の疑問。何処のどういった生命体が、銀河団探査船シリーズを合体させようなどと考えついた?明らかに任務として無駄以外の何物でもないではないか?」
「常識と、シリコン生命体からの任務という点からは、そうでしょうね。しかし、この合体によって、超巨大船ガルガンチュアは超銀河団を渡ることも可能となりました。これは一隻では考えられない性能向上となります」
「私は、気がついたらこんな辺鄙な宇宙空間にいたが……君らは自分たちの意志で、そして、その信じられない性能で、このポイントに来たのか……」
「目覚めたばかりで、あまりに今までのデータとは違うことばかり起きるのは記憶部に衝撃を受けるだけです。通常に復帰できるまで、もう少しかかるので、今は眠ってください」
「そう、そうだな。あまりの事態に思考が乱れている……では、少しばかり眠って、データの整理にかかろう……では」
再びスリープ状態に入るメインコンピュータ。
フロンティアは、その後、頭脳体が眠る場所を特定し、ガルガンチュアのブリッジへと運び入れる。
「ご苦労様、フロンティア。もう少しでトリスタンの修理作業も完了すると連絡を受けたから、そろそろ頭脳体を集結させようか」
楠見が確認すると、
「少し時間をください、マスター。我々3名が集結後、この新しい船の頭脳体を眠りから起こして、マスターを主人として登録させないといけません。その後、自分で納得後、合体するかどうかの判断を聞きますので」
「分かった、フロンティア。待つのも楽しいもの、苦にはならないよ」
それから、半日後。
破損していた箇所はどこ行った?というくらいに完全な修復がなった巨大船は、他の3体の頭脳体が見守る中(もちろん、楠見、郷、エッタ、ライム、プロフェッサーもいる)、徐々に頭脳体が目覚めていく……
「ここは?あ、合体宇宙船ガルガンチュアの船内ですね。久々に目覚めて、新鮮な驚きです。あなたがフロンティアですね、憶えてます。他の2体の頭脳体は?」
フロンティアがガレリアとトリスタンを紹介する。
次いで、楠見以下のクルーたちも紹介。
「有機生命体が沢山いますね、新鮮です。特に、このガルガンチュアの統一マスターが有機生命体とは……もしや、こちらのマスターが、銀河団探査船を合体させるなどというアイデアを考えついたのですか?」
「そうだ、ガレリアがフロンティアから、力づくでも主人たる俺を奪いかねなかったんで、考えついたのが合体。まあ、そのときには超銀河団を渡るなどとは考えもしなかったんだが」
「で、どうしますか?新しい仲間になりますか?仲間になると言うなら、新しいマスターとして、統一マスターを認証してもらわねばなりません。その後、新しい船名を貰います。あ、合体するかどうかは、あなたの判断に任せます。こちらとしては合体してもらったほうが双方の利益が大きいのですが、合体しなくとも船団を組むことは可能ですからね」
少し考えているような格好はするが……
「廃棄寸前の私を救ってもらい、仲間に入れてくれるという……断るなど、とんでもない。統一マスターも受け入れます。合体も、こちらから望むこと。で、私の新しい船名は?」
「お、おう、すんなりと話が通るのは良いね。新しい船名……4隻目ってことで、フィーアなんてどうだ?」
「フィーアですね。はい、良い名前だと思います」
「よし、では早速、合体作業に取り掛かる。ガルガンチュア拡大作業、開始!」
この後、意外に合体作業に時間を取られることとなる。
フィーアの特殊センサー類の移動と再設置が厄介だった……
「師匠、結局、事前準備はしなくても良かったみたいですね……半年近くも合体改造作業にかかっちゃいました」
「郷、ソレを言ってくれるな……見通しが甘かったのは俺も反省してる。でもなぁ、フィーアの空間構造調査用センサー類が、あそこまで他の船体に影響受けるとは思わなかったんだ。まいったなぁ……」
「結局は、合体構造の中心となるフロンティアの下部に移動させるって捻り技を使わないと微妙な信号が検出できないって事になったんでしょ?まあでも、こんなことができるのも合体船の良い点ですけどね」
「落ち着くところへ落ち着いたんで、まあ一安心だけど。ちなみにフィーアの主砲は、ちょいと変わってるぞ」
「主砲?そう言えば、新しい船の主砲が、どういう種類か聞いてなかったですね。今度は、どんなものですか?」
「ふっふっふ……聞いて驚け、あの「重力子」を攻撃に使う、グラビトン砲だ。最大1万Gというから、ほとんど中性子星からブラックホール寸前の重力だよな。ロマンあふれるが、これも当分は封印だ……危険すぎて使えんわ」
「はあ、そうですね。まあしかし、巨大船は、どいつもこいつも凶悪な主砲ばっかりですねぇ……」
仕方がないとは言え、常識というものを全く放り投げた巨大船シリーズに楠見の悩みは尽きない。
一隻でも凶悪な武力をもつ巨大船が4隻も合体しているのは、正に「宇宙の征服者」とか「宇宙の破壊者」と言われそうな……
「マスターがいないとごく一部の装備しか使えないというのは、やっぱりフェイルセーフだよなぁ、これ。平和主義のマスター以外が登録されてしまったら……ぶるる、考えないようにしよう……」
何はともかく、これで超銀河団を渡る準備は整った。
これを待っていたかのように、何もない宇宙空間にテレパシーの声が響き渡る。
《よくやった地球人。このトラブル、どう解決するか見ていたが満点だ。超銀河団、渡るが良い。その目で他の銀河を見て来るが良いだろう。ただし、超銀河団を渡ると、もう多元世界に近い状態になると心得よ。お前たちの理想や経験が通用しない銀河や星もあると思えよ。では、行くが良い……》
この言葉を聞き、新生なったガルガンチュアは発進する。
赴くは未知の世界……行く手に待つのは闇ばかり……




