お次は精神生命体との遭遇。 え?幽霊って言わないか、それ……
星の先住民と機械生命体とのトラブルを解決した主人公。
意気揚々と、次の進路設定に入りますが……
トラブル巻き込まれ型だって事に自分で気がついてないのなあ?
さて、と。
お次は銀河系の縁まで行ってみようかね……
などと3人で談笑してると突然フロンティアの船体に衝撃が走った!
揺れすら滅多に感じない船体に衝撃が走るなど普通じゃない。
俺は至急、原因調査と被害報告をフロンティアに命じる。
しばらくして、フロンティアから報告が入る。
「マスター、船体の被害は、ごくごく軽微です。それこそ、かすり傷もありません。スペースデブリ排除用のバリアシステムが張られていたので、それにより衝撃は受けなかったと思われます」
「お、それは良かったな。で、原因は分かったのか?」
「それが未だに不明です。現在手持ちの搭載艇の半数を出して調査に当たっておりますので短時間で衝撃が発生した原因が判明するかと思われます」
「ふむ……衝撃が発生した空間地点は把握してるか?」
「はい、今の船の現在位置から、そう遠くない地点です。ただし、その地点には何も存在しません」
「え?何かの爆発だとかデブリが小惑星に当たったとか、そういう話でもないってことか?」
「はい、その通りです、マスター。ここいらは星区と星区の間でデブリそのものも余り存在しない文字通り「何もない宇宙空間」です」
「ふーん。何か面白そうな匂いがするな、この一件」
「マスター、重ねて言いますが、くれぐれも自重して下さい。この船の乗員でタンパク質生命体なのはマスターだけです。つまり一番ヤワな生命体がマスターだと言うことなんですから」
「ああ、それは分かってるさ。じゃ、搭載艇を10機ばかし護衛につけてくれ。あと、俺の補助とバックアップにプロフェッサーを連れて行くよ。それなら大丈夫だろ?」
「本当なら、搭載艇を全てガードに付けたいところなんですけどね。了解です、危険を感じたら、すぐさま本船に引き上げるって事で許可します」
「まあしかし、お前も保護者かい!ってくらいに頑固だね。ま、いいや、プロフェッサー、出るぞ」
「承りました、わが主。お伴します」
万能搭載艇(マニピュレータまで搭載してるんだよ、こいつ)は本当に万能な搭載艇だ。
これで恒星間駆動エンジンくらい装備してればな……
あっという間に、衝撃の発生源と思われる空間地点へたどり着く。
様々なソナーやレーダー波を使用してみるが反応なし。
一体、何が原因で、あんな凄いショックウェーブが出たんだろうか?
その時、第六感が働いたとしか思えないのだが……
俺はフロンティアに向けて、こう発信した。
「フロンティア、搭載艇を全て下がらせてくれ。これはロボットや機械生命体では、いくら探っても原因に辿りつけないと思う。幸いにして俺はタンパク質生命体にして強力なテレパシーやサイコキネシスが使えるエスパーでもある。今から俺のやり方で、ここに存在しているが見えない物とコミュニケーションを取ってみる」
「マスター、危険だと判断したら、すぐに回収作業に入りますからね!」
「ああ、構わない。では護衛の搭載艇も調査用も全て引き上げてくれ、頼む」
しばらくして、この空間には俺とプロフェッサーの乗った搭載艇しかいなくなる。
さて、先祖返りだか何だか知らんが、ここまで強力になったテレパシーだ。
宇宙空間の裏側に隠れていようが何だろうが一点集中なら届くだろう……
《この空間に隠れてる奴、出てこい!こちとら、とっくに分かってるんだよ》
テレパシーを放った途端、俺の人間としての本能に警鐘が鳴った。
何か、何かが出てくる!
《おう!これは数億年ぶりの強い声であるな。はるか昔、宇宙を旅していた時を思い出してしまったではないか。ん?そちか、あの強い声の持ち主は。がっはははは、愉快愉快、愉快じゃのう、全く》
《私は地球人、楠見 糺と申します。して、貴方様は、どちらのどういう御方でありましょうや?》
《おう、なかなかに礼儀正しいの。少し言葉の使い方が間違っているようじゃが数億年ぶりに出会ったタンパク質生命が、わしの言葉と同じような思考言語をしておるのは偶然とは言え僥倖じゃった。わしか?わしは、今は遠く過ぎ去った過去に存在しておった生命の残り香よ。一時期は、この銀河宇宙全てを支配するほどの勢力じゃったが種族としての寿命が尽きて、わしのような精神生命体を造り出す事が、その生命体としての文明・エネルギーを全て注ぎ込む作業じゃったようじゃ。生まれてすぐの時期には見るもの聞くもの全てが美しく・楽しくての、銀河系も飛び出して、アンドロメダやマゼラン星雲まで往復しておったよ》
《そのような圧倒的存在ならば、なぜに、このような辺境の宇宙空間に隠れているような事になったのですか?》
《別に隠れておったわけではないぞ。前周期の宇宙収縮に巻き込まれて逃げようにも空間まで折り畳まれてきてな……仕方がないから再度の宇宙誕生まで防護壁を兼ねた空間を設定して、そこに眠っておったのだ。いやしかし、今度の宇宙も美しいのう。そちのような強い声の存在が宇宙の再誕時から、あれは数億年経った頃かの……わしの近くへ事故で流されて来て、しばらく一緒に宇宙を旅して、そやつを故郷の星に帰してやったことがある。あの時の宇宙は騒がしくて素晴らしかったぞ》
うわお!
この宇宙が誕生する前から生きてる(?)精神存在か!
宇宙が晴れてから数億年って……
まだ初期の銀河が生まれてすぐの頃だよな。
そんな時代に超強力なエスパーが存在して、この「神のような精神体」としばらく旅をして故郷の星に、だと?!
どんな生物だったんだろうな?
《聞けば聞くほど驚きの連続ですよ。もしかして、あなたは「神」と呼ばれる存在なのではないですか?》
《いいや、残念ながら、わしは神ではない。宇宙の一周期よりも長い時を存在しているし思考するだけで物質を創り出せる能力もあるが、それは、わしを創った創造者達の種族にこそ贈られるべき称号だろう。わしは「神の使徒」であると考える》
《それにしても、驚異の存在です。あなたも、あなたを造り出した創造者の種族も》
《今回、ちょっと寝相が悪くてな。空間壁の中で寝ていたんじゃが、うっかりと精神体を拡張しようとして空間壁と衝突したんじゃ。外に影響は出なかったと思うんじゃがな》
《ちょうど我々の船が近くに停泊してましてね。あまりの衝撃に驚いて調査に来たというわけです。いわゆる「のびをされた」わけですね》
《そうじゃな。でもって、わしはもう少し寝ようと思う。すまんが、このポイントのことは秘密にしといてくれんか?約束してくれるなら、わしと創造者の種族の歴史を、わしが知っているだけ話してやるぞ》
《え?!願ってもないことです。このポイントのことは我々だけの秘密にしておきますので、ご安心を。では、どちらでお話しを伺いましょうか?》
《ああ、それなら、わしの分離体を、そちらの船に転送しておく。いちおう、そちと同じタンパク質生命体としての肉体を与えておいた。パートナーとして使ってやってくれ。では、な》
現れた時と同じく突然に気配が消えてしまった。
精神生命体が寝床の中で伸びをして、こもってた部屋の壁に手足が当たって大きな音がしたって事かい、今回の事件は。
と、忘れてた!
あの精神生命体の分離体とやらが……
もう目の前にいたよ。
「お初にお目にかかりまする、ご主人様。妾の中にあるデータ・知識・能力は、全てご主人様のためにありまする故、いかようにでもお使いくださいませ」
あ、デフォルトが日本語なのね。
さすが神の使徒……
じゃなくてだな!
なんで、俺のパートナーになる存在がメイドカフェの店員の格好した少女なんだよ?!
俺の女性の好みは……
はい、モロに直球ど真ん中・ストライクです、ちきしょう!
心の底まで焦りと、目の前に理想の女性が出現したショックで、俺、当分使い物にならんぞ……
嬉しいけどさ!




