機械生命体との遭遇 その後 ところで、様々な星と時代へ移民してたんだよね?
一応、トラブルは解決しました。
読者様の一部から質問があったようですので、解答編として書きました。
主人公が機械生命体に検査・分析されなくて良かったですね。
今、俺達は機械生命体文明の末端星区に当たる星系にいる。
もう少し恒星間駆動を吹かせば、もう全く別の生命体文明の支配・管理している星系に入る事になる。
前回のトラブル介入行為の反省と改善点を協議しているのだ。
まあ、本質的には介入とトラブル解決は止めないけどね。
「マスター、今回は結果的に最良の解決となりましたが基本的に全く理解できない文明というのもありますので、介入はよく考えてからにして下さい。でないと、私の持っている兵装をフルオープンにする可能性もありますよ」
うおーい!
フロンティア、なんつーこと言い出すかね、こいつ。
ただでさえ膨大なエネルギーで銀河団の宇宙空間も疾駆できる性能なのに、その兵装なんてフル解除した日には……
「兵装を全てロック解除して使用したら、星系が一つ消滅しそうだな」
冗談のつもりだったんだが返事が予想の斜め上だった。
「いえ、中規模のブラックホール位、私が本気を出せば潰せますよ」
南無阿弥陀仏……
そんな日がこないことを祈るだけだ。
「ところで、わが主。今回の事で質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「おっ?珍しいな、プロフェッサー。どんな質問だ?」
「はい。今回の事件で機械生命体文明の先史文明たるタンパク質生命体文明が超巨大ブラックホールのエネルギーを利用して星間移民をしたということは間違いないようですが、それに使われたはずの恐らく巨大なエネルギー吸収システムとタイムトラベルシステムは、どこにあるのでしょうか?」
「それはな……あの超巨大ブラックホールの中さ。先史文明も自分たちが作り上げたタイムトラベルシステムが悪用されたら大変なことになるという事は理解してたみたいだから、最後の1人が未来へ到着したら、その数100年後くらいにはブラックホールに飲み込まれるくらいの近い位置に設備を作ったと思うよ。そうすりゃ設計図も設備も何も残らずにブラックホールの中。すっきりと消え去るだろう」
「理解しました。もうひとつだけ疑問があるのですが、わが主」
「なんだ?ついでだよ、回答してやろう」
「先史文明の子孫って、あの星の先住民だけだったんですかね?」
「ははははは、そんなわけないだろうが。今の機械生命体文明ほどの大きさはないにしても相当に大きな文明圏を作っていたと考えられる先史文明だよ。ただし彼らは恒星間駆動や銀河間駆動などに関心が薄く時間移動に研究の情熱をかけてたみたいでな。先史文明人の足跡そのものは故郷の星系から離れた星には無いんだ。でも太陽系を考えてみれば分かる通り、一つの星系でもテラフォーミングや宇宙コロニーの使用で相当に人口は増やせるからな」
「という事は膨大なる人口があったということですよね。それを分散移住させて何がしたかったんでしょうか?」
「リスクを最小限にしたかったのかもな。その星にしか無い風土病やウィルス。あるいは恒星のエネルギーそのものが揺らぎが大きいものだと、あっという間に移民団が全滅だ」
「わが主。これだけは聞かなければならないことだと思われます……地球人は、もしかして、その先史文明人の子孫なのでは?」
「さあて、な。地球や太陽系の事を先史文明人が詳細に知っていたのかどうかは今じゃ誰も知らない。だから地球人は先史文明人の移民の血が入っているのかも知れないし、そうじゃないかも知れない。もしかして、この俺のテレパシー能力が地球人として異様に高いレベルにあるのも、ひょっとして先史文明人の遺伝子が発現したかも?全ては推測の世界にしか過ぎないよ、プロフェッサー、フロンティア」
しかし、そう答えながらも何故か俺自身、その回答が真実だと納得している点が。
そう、それは俺が脳開発を最終段階で止めた時に頭の中に響いた警告が記憶の底に残っていたから。
正確に、その警告を言葉にしてみよう……
[気をつけろ、気をつけろ。遠い昔に滅んだ我々の二の舞いになるな。全ての脳領域を解放して神となるのは足元にある巨大なる穴に気づかずに一歩を踏み出すようなものだ。知らないもの、分からないものは自分で探し、解決しろ。全てを知るな、甘い罠に気をつけろ]
である。
時間と空間を全て解き明かした先史文明人、もう未来が見えないと理解するといちかばちかの時間移民しか無かったのだろう。
種族が99.9%以上死に絶えても、わずかに残った未来の可能性に賭ける、そんな事しか残されていなかったのかも知れない。
その結果の一部が機械生命体文明であり、違った結果の一部が地球という辺境星系で俺という結果になったのかも。
「未来は誰にも分からないさ、超古代の過去に生きてた先史文明人の考えも、な。さて!次の進路は、と……」




