機械生命体との遭遇その2 成り行きで救助しちゃいましたが、どうします?
まずは、前回からの続きで。
で、結局、関わっちゃうんだね、これが……
主人公だけに。
《とある一兵士の独白、続き》
ああ、そうさ。
我々の文明は、あいつら機械文明から見たら幼稚な文明どころじゃなくて生まれたての赤ん坊みたいな文明だったという事さ。
俺達は、ようやく自覚した。
宇宙ってのは様々な生命体や文明に満ちているってのをね。
でも自覚するのが遅すぎた。
あいつら機械文明は後でわかったことだが侵略の意図も無ければ俺達を虐殺や奴隷にするために来たのでもなかった。
ただ単に、あいつらの「恩人」と言われる先史文明人のための土地と住居を開発しに来ただけだったんだよ。
それだけ、ただ、それだけだったんだ。
でもって問題は、その星に、たまたま俺達がいて文明を発展させていこうとしてた。
問題は、それだけだったんだよ。
あいつらの話じゃ他の恒星間駆動を会得した文明は故郷の星にこだわらず新しい星に積極的に移住したり宇宙空間そのものを住処と定めたりしているそうだ。
で、俺達は、そのどれでもないタイプだった。
故郷の星に、こだわりぬいて、そこから離れるのを嫌がったんだよ。
どうなったかって?
ご想像通りさ。
20年の期限が過ぎたら、あいつら機械文明の開発機械集団が俺達の星にやってきて強制的に俺達を恒星間移民船に放り込み始めた。
頑強に抵抗した奴もいたが全て無駄。
気がついたら俺達&&%%78星の元住民は全て恒星間移民船へと詰め込まれて、移民船は勝手に発進していた。
俺達は、慌てて仮の船長と船団スタッフを選び出し、移民星として候補リストに表示されていた星の、どれかに向かうこととなった。
無理やりにでも納得した奴は好きな移民船に移乗し、その移民船と共に新しい故郷の星へと向かった。
どうしても納得できなかった奴は……
テロリストになったのさ。
俺も、その兵士の1人だよ。
宇宙空間から眺める故郷が次々と景色や色を変えて開発と建築物で埋め尽くされていくのを見るのがガマンできない奴らばかりだった。
俺達が、どんな武器を使おうが(あいつらから貰った武器もあったよ)あいつらの機械体には、ほんのかすり傷くらいにしかならないのは理解してる。
でもな、それが少しでも俺達の故郷をあいつらの開発の手から守れるなら、例え数時間の工事の遅れでも引き起こせるなら俺達は何でもやった。
宇宙空間からの大質量(隕石って奴だ)落としから始まり、巨大口径レーザの宇宙空間からの砲撃、太陽エネルギーを収束させての電磁砲撃もやったよ。
でもな、それでも数時間の行程遅れにしかならなかった。
いっそ、星ごと破壊するか?
などと言うやつまで現れても不思議じゃないだろ?
俺はさ、その計画に乗ったんだよ。
今じゃ、バカみたいだと思うけどな。
でかい隕石に巨大なエネルギー発生器据え付けて、そこに俺が1人だけ残る。
共犯者達に惑星の重力圏まで引っ張ってもらって、大気圏に突入したら、エネルギー発生器をオーバーロードさせる。
消そうとしても消えない核の炎で惑星ごと火の海……
って結末だったんだがな……
ここに俺がいるってことで計画は失敗したと察してくれ。
さすがに、こんな計画は事前に察知されてた。
あいつらも警備艇は配備してたのさ。
仲間は捕まり、俺は隕石から引っ張りだされ、エネルギー発生器は取り外されて処分されちまった。
俺達、実行犯はどうなったか?
何もなかったよ。
刑罰も何もないんだ。
移民船団へ戻されそうになったんで俺だけが単独で逃げて超小型の搭載艇に乗って逃げまわってたんだ。
「さて、どうしようか?何か意見は?プロフェッサー、フロンティア」
「わが主、これは立派な星間戦争であると考えます。うかつに手を出すと巻き込まれますよ」
「マスター、これは些細な諍いです。彼を元の移民船団に戻すべきだと考察します」
うーん……
どちらの意見も正当だな。
しかし、この戦争(?)に俺は何か根本的な誤解があるように思えて仕方がないのだ。
あ、彼というのは俺達が数度目の跳躍後、目の前に漂っていた搭載艇を救助してみたら乗員が1人の兵士だった、というわけだ。
言葉の問題はフロンティアとプロフェッサーが数時間で解決してくれた。
フロンティアの膨大な言語データベースに地球語を合せて、全く未知の言語ではあったが翻訳機を作ってくれた。
今ではローカルな習慣以外の言葉は、ほとんど翻訳できるようになっていた。
星の名前「&&%%78星」とか、翻訳不能な単語もあるけど。
俺は言葉が通じるようになってから異星の兵士と語り合った。
彼らの文明は、地球で言うと20世紀から21世紀の始まりに当たるような、宇宙航行が現実的でない文明段階だったらしい。
そこへ、一気に文明程度の違った恒星間航行を日常とする機械文明がやって来たら、そりゃ軋轢にもなるわな。
文明違えば常識も違う、ましてやタンパク質生命と機械生命の理解しがたい溝もある。
この一件、タンパク質生命の文明程度が、あまりに低かったがために致命的な争いにならなかったことが救いかな?(元の星の住民たちにとっちゃ、救いでも何でも無かったりするんだが)
兵士の彼と話していて、ちょっと面白いことが分かった。
彼らの文明も、いや、彼らも別の星からやってきたらしいのだ(そういう伝承が残っているらしい。ただし、その伝承には宇宙船とかは使わずに身体一つで彼らの先祖はこの星に来たらしい……どうやってかは分からないが、と兵士の彼は言っていた)
俺は、フロンティアとプロフェッサーには悪いが、この件に口を挟むことにした。
そう、俺の意思を告げると両名とも、
仕方ないなぁ……
と言いながらも了承してくれる。
俺は兵士の彼に聞いた、彼らの故郷の星に向かうことにする。
ちょいと遠回りになるが、なに、これからの長い旅だ。
興味の赴くまま、あっちこっち寄り道も楽しいさ。
数光年先の目標なので、すぐに到着だ。
進路、&&%%78星!
出航!




