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機械生命体との遭遇その1 宇宙は戦いで溢れていた

はい、太陽系を飛び出した一行は、新しい物を見たくて、次々と他の星を訪問します。

太陽系外での新しい生命・文明とは、どんなものでしょうか?


フロンティアが、全ての準備が整ったと知らせてきたのが数時間後。

作業用の搭載艇全てを集めて物資収集を行ったらしい。

とんでもない船だ、あらためて思うが。


「マスター、発進準備が整いました。次に行く生命体、機械生命体の文明がある星のお勧めは、こちらです」


「MGC番号しか書かれてないな。名前はないのか、その恒星」


「ですね。太陽よりも2回りばかり大きな星で最初はマスターのようなタンパク質型生命体の文明が築かれていたのですが、恒星の熱量が上がりすぎてタンパク質生命体の生存に適さなくなりましたので、以前の主人達は惑星を脱出しました。残された高度に発達した機械達は自らを改造することをいつしか覚え、数世代の後に、その身体に自意識が芽生えました」


「で、機械だから相当な高熱、真空、宇宙空間にも堪えうる身体を持つ高度な生命体と文明が発達するわけだな」


「はい、その通りです、マスター。この文明は長く続くと推測されますので、私が調査した100万年前から破滅せずに続いているだろうと思われます」


「すごいな、100万年以上続く機械文明か。わかった。そこへ行ってみようじゃないか」


「了解です、マスター。では恒星間駆動のレベル3まで出力を上げます」


「お、そうするということは結構な距離があるってことか?」


「はい。銀河の中枢部に近い星域となりますので」


「よし、発進だ!」


心なしか巨大船に振動が走ったような気がした。

恒星間駆動レベル3でも、これかい。

銀河団駆動って、どんな速度なんだろう?


「発進しました。もう少しで跳躍に入ります。距離がありますので前回のようには行きません。およそ24時間の行程です」


「そんなに遠いのか……銀河は広いな」


「あ、いえ、マスター。言葉を選ぶべきでした。24時間かかる理由は、ただ単に星の密集地帯へ向かいますので、その事前探査と障害排除に手間と時間がかかるからです。これが、同じ距離でも銀河系の縁、ヘリへ向かう方向でしたら、およそ3時間となります」


「は、そうか……まあ、この船にとっちゃ銀河系なんて通過地点に過ぎないんだろうけどね。その高性能な船でも銀河系の中枢部には近寄りがたいってか」


「はい。これほど星の密集している地域での超光速航法は危険を伴いますからね。ちなみに、本当の銀河中枢部へは行けませんよ、マスター」


「ん?何故だ……あ、わか」


「銀河中枢部は超巨大ブラックホールだからです、わが主」


「そうだったな、忘れていたよ」


そんな3人漫才を繰り広げながら目標とする恒星系へ、フロンティアは向かっていた。



《とある一兵士の独白》

俺が、ここで戦い続けて、どのくらいになるだろうか……

もう自分でも日数を数えることを止めてから、ずいぶんと経ってしまったな……

ここで戦って死ぬことに悔いも怖さもないが俺の死が故郷の家族に恵みを与えるものとなれば良いなと思う。

俺の故郷、&&%%78星。

住みやすい、良い星だった。

あいつらが現れるまでは……


100年ほど前に宇宙空間が割れるようにして、あいつらの宇宙船が現れた。

こちらが連絡をとろうとして何度、音波や電波で呼びかけても返事をする気配すら無かったあいつら。

いきなり宇宙空港でもない地点に着陸すると馬鹿でかい機械の塊を放出し始め、その機械達は勝手気ままにその地点から放射状に土地を開拓し、舗装・固定化、その次は建築物と思われる物を際限なしに建て始めた。

最初は統治者の政治家達、次は警察機構、最後に軍隊が派遣されたが、どんな武器(戦術核ミサイルまで使った)を持ってしてもかすり傷くらいしか与えられない事が分かってからというもの、次に出来るのは、あいつらから逃げることだけだった。

およそ10年以上、俺達の星はあいつらに勝手に侵略され放題だった。

そこへ救世主が生まれた。

救世主は、あいつらと俺達とのコミュニケーションが取れない理由を発見した。

それは、


「考え方の基本が全く違う言語を使っているから」


だった。

衝撃的。

あいつらは「死」の概念を持っていない言語を使うのだ。

時間という概念も随分と違う考え方で認識しているらしい。

あいつらの文明の理解は遅々として進まなかった。

お互いの文明の共通点が数式やπ、光速という決まった数値くらいしか無いことが一番の原因。

そして救世主が、ようやくあいつらの正体を看破した。


「彼らは機械生命体、機械文明とでも言うべき社会を持つ者達だ」


機械が意識を保ち、文明すら築くという現実に対応できる人間は少なかった。

あまりに我々と違う外見、思考形態、言語に戸惑うものばかりだった。

救世主は天才的な頭脳と開発力を持っていた。

それから10年かけて、あいつらと我々とのコミュニケーションを可能とする翻訳機を作り上げた。

わが星の期待を一身に受けて翻訳機を持った救世主が、あいつらの一体に向かい、歩いて行った。

その姿は神々しく、モニタを見ている者達も固唾を呑んで祈るばかりだった。

救世主は言った。


「君たちは何故に我々の星を侵略し、勝手に改造して建築物を次々と建てていくのだ?」


雄々しき声で侵略者に向かい、堂々と言い放った。

あいつらは作業体制を崩さずに、顔と思われる部分だけを救世主の傍に移動させると、こともなげに言い放った。


「我々の主人達の居住区を作るためだ。我々を創り、ここまでの文明を持たせる基盤を築いてくれた主人達に我々機械文明は恩返しをしなくてはいけない。この星は我々の主人達が住むに適した星である。すまないが、この星を我々が貰うので元の住民たちには別の星へ移住してもらいたい」


救世主は言った。


「それは無理だ。我々の文明は恒星系を旅するような宇宙船も理論も持たない幼い文明なのだ。この星を君たちにとられたら我々は死ぬしか無い」


「死ぬ?それはどういった概念だ?すまない、翻訳機の調子が悪いようだな。まあいい、おおよそは理解した。では、この星の文明に恒星間駆動の船と跳躍理論をプレゼントしよう。それを使いこなす時間、およそ20年ほどの猶予期間もあげよう」


「いや、それは嬉しいが、そんなことよりも!君たちが別の星を開拓すれば良い話では?」


「無数の調査船を送ったが、わが星系の近傍でタンパク質生命の生存に適している星は、ここしか見つからなかった」


無理やり押し付けられた恒星間移民船の集団と恒星間駆動の跳躍理論を我々がようやく理解して駆使でき、船も扱えるようになったのは期限ギリギリの20年目の事だった。

ことここに至って、ようやく我々は自分達がいかに劣っていたか、幼い文明であったか、思い知ったのである。


フロンティアの面々は否応なしに宇宙戦争に巻き込まれていきます。


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