お仕事の毎日です。 6
とりあえず木星お仕事編は次くらいで終わらせます。
今回ちょっと仕掛けました。
(意図的です。だって木星ですから……ほら、2001年が欠かせないじゃないですか)
あれぇ?
あ、すいません。
書類精査をやってて、ちょっと驚きの発見があったもんですから。
今日も職場で書類の精査、のはずだったんだよ、これが。
その日報や報告書の中に、ちょっと意外なもの、見つけてしまった。
まあ、俺でなきゃ分からないくらいの違和感ってのかな?
普通に書類整理してたら絶対に分からんわ。
でもって上長に申請して、俺は今、木星の海を飛んでいる……
というか、メタンの海を進んでいるというか。
表現が難しい。
ともかく、その気になった箇所の報告があった地点へ急いでいるわけ。
俺が気になったのは木星調査団(探査団だ、規模も目的も)の1人が書いた報告書の中に磁北や磁南極以外に磁気異常が顕著に認められた地点があるという書き込みがあったこと。
普通なら何かの液体金属物か固体金属の鉱脈だろうと思うが、この表現に引っかかるものを俺は感じ、その地点へ向かっている。
メタンの流れが強い箇所や超大型のメタンの渦があったりするので位置測定用小型衛星(GPS)からの信号をメタン流予測システムからの至近予測データと合成して危険なところを避けながらメタンの海を進んでいるわけ。
正直に言おう。
俺のテレパシー能力に引っかかるものがあるのだ、その地点に。
事故なら、人間ならば救助要請を出さねば。
しかし、そんな、ごく最近まで未探査だった木星のメタンの海深くに人間がいたなら、そりゃもう死んでるだろう。
しかし俺のテレパシー能力が反応するということは、それは何かわからないが生きているという事であり……
さすがに、ここまで条件揃うとオカルトじみてくる。
なんだろうか、この感覚。
地球標準語のテレパシーなら俺にも理解出来得るものだろうし、そうではない何か生物としてのヒトの本能に訴えかけるような、そんなテレパシーだ。
ずいぶん近くなってきた。
リスクはあるが、ここで脳領域解放と行こうかな。
《誰だ、あるいは何物だ?救助を求めるなら何とかしてやる。そうでなければ、その要望を示せ》
俺は、ここで訓練して、ずいぶんと強化されたテレパシーを送る。
これで反応なきゃ気のせいだろうな、と思ってたら!
《よ、う、や、く。み、つ、け、て、く、れ、た。あ、な、た、に、あ、い、た、い。ワタシ、は、う、ご、け、な、い。エネルギー、が、た、り、な、い》
わお!
返事あり!
しかし、こりゃ人間とは随分と思考形態が違う生命体のようだ。
言語の形態が完全に違う生物が無理やり人間の思考を真似たような感じを受ける。
まあ邪悪な思考じゃないのは感じたので『彼』(仮に、そう呼ぶ)のところへ行くことにした。
おお、ずいぶんと深いところにいるようだ。
木星探査用の特別シップじゃなけりゃ、とっくの昔に圧壊してるところだぞ。
さあ到着。
《すぐ近くへ到着した。姿を見せられるなら見せてくれ。ダメならコミュニケーションだけでもとろう》
《わ、る、い、が、ワタシ、は、う、ご、け、な、い》
《エネルギーがないと言ってたな。欲しいエネルギーの形態は?》
《で、ん、し、の、い、ど、う、に、よ、る、エネルギー、こ、う、か、ん》
ん?
電子の移動によるエネルギー交換?
あ、電気エネルギーじゃないか。
なんとかなる、それなら。
《どういう形でエネルギー補充をしてるんだ?それさえわかれば何とかしてやれる》
《あ、り、が、と、う。か、ん、た、ん、な、の、は、ヒカリ、だ》
ははーん、太陽光発電装置みたいなもんだね。
このメタンの深海じゃ、さすがに光は差さないか。
じゃ、こちらの探査ライトを強くして、と。
《これで、どうだ?そちらの方へ光を放射したぞ》
《よ、わ、い、け、ど、た、し、か、に、か、ん、じ、る。も、っ、と、ち、か、く、へ、き、て、ほ、し、い》
まだ弱いか。
まあ、メタンの海だから減衰は仕方がない。
では少しづつ進めるか……
そろそろと、木星探査用シップを相手に向かって進める。
無機生命か有機生命か、まだ分からんが、こいつは人類初の知的生命体とのファーストコンタクトになりそうだ。
うぉっと!
突然、相手が視界に入ってきた(レーダーじゃ撹乱されすぎて分からんのよね、ここじゃ)
この相手、無機生命でも有機生命でも無かった。
でかい!
馬鹿でかい宇宙船。
それも人工的なテレパシーを使えるほどのテクノロジーを使って作られたもの。
どんな恒星、銀河を旅してきたのだろうか、こいつは。
まあ、とりあえず欲しいというだけの光を浴びせてやることにする。燃料は、まだまだあるんで、しばらくは保つ。
《あり、がと、う。すこ、し、かい、ふく、して、きた。きみ、は、わた、しの、おん、じん、だ》
《気にすることはない。侵略者で無い限り困っているものには手を差し伸べるのが俺の性格でね。お礼に君の持っている知識を俺に分けて欲しいんだ》
《おやすい、ごようだ。もうすこし、したら、わたしは、うごける、ようになる。そしたら、ここをぬけて、うちゅうくうかんへ、でられる。そうしたら、きみに、おおきなおくりものを、あげよう》
《いや、そんなものを貰っても俺1人じゃ使いきれないさ。それより君の知識、地球人の知らない星の知識が欲しい》
《ふふふふ、よくのないやつだな。まあいい、そのときになれば、このおくりものの、かちに、きづくだろう。おどろくなよ》
なんだろうね、その贈り物って。
俺は、その時は贈り物よりデータや知識に気が回っていた。
そう、知識やデータは、その贈り物に付随するものだと気づかずに、だ。




