戦いの銀河 その二
ガルガンチュアが、戦争状態の銀河へ出現します。
無敵だけど戦いたくないガルガンチュア、この戦いの銀河で、どう動く?
戦いの場に無敵ではあるが平和の使者が迷い込む。
宇宙の歴史が、また新しい1ページを記す……
「マスター、ちょっと残念な報告があります」
何だ何だ?!
ガレリアもフロンティアもトラブル報告なんて聞いてないぞ。
「フロンティアか。今はフロンティアが先頭だったな確か。何か跳躍先のトラブルか?」
「はい、跳躍先というか、予定していた跳躍先とポイントが違うと言いますか……」
「え?このガルガンチュアのパワーと跳躍制御技術があってもポイントがずれる?そんな大距離を跳んでないだろう」
「主、私が答えよう。ここの銀河空間は銀河系のある銀河団宇宙とは違い、跳躍ポイントが自由に設定できないようだ。ちょうど主の銀河系で使われているジャンプサークルに似た構造を持った空間となっており、ガルガンチュアも、その空間に引きこまれてしまった。近くに脱出ポイントがあるため船体にダメージはないが」
何だって?!
この銀河団は初めての経験だらけだな。
魔素の充満した星もそうだが今度は自然のジャンプサークル空間構造か……
「ちょっと待て、跳躍のポイントが制限されるということは、そのポイントを独占したものや勢力が圧倒的なアドバンテージを得るという事になるな……まずい事態になるかも知れない……ガルガンチュア、準戦時モードへ移行しろ。非常に高い可能性として目的地の周辺が戦時状態になっていることが予想されるぞ!」
「了解した、主。フロンティアは跳躍制御に専念しているため、私が指示を実行する。防御フィールドとバリアシステムは最高度に設定する。武器システム行使の可能性は?」
「よし、ガレリア、頼む。準戦時なので、とりあえず武器システムは最低限度のものを実行可能状態にしておいてくれ。メインはスタンナーとパラライザー、それが効かない場合は最低出力からのレーザー機銃。それでも駄目な場合も最高出力のレーザー機銃まで使用可能とする。副砲システムや主砲システムは、あまりにオーバーキルだ」
「了解した、主。搭載艇群は出すか?」
「ああ、予定はしておいてくれ。ただし、使用武器はガルガンチュアに準ずる。大型搭載艇に搭載されている副砲は使用不可だ」
「了解。では、今回、搭載艇の1割を放出する予定を組んでおく。これで通常の星系軍は圧倒できるだろう」
おいおい、1割だと?合体してるから、このクラスの巨大宇宙船2隻分の1割。
およそ300を超える数が出る、どこの無敵艦隊だよ!
「ガレリア、言っておくが俺は、この銀河を支配も征服もしないぞ。戦争に巻き込まれるのはゴメンだってことでの武装準備だからな」
「主よ、このような限定された恒星間跳躍航法しか使えない空間を持つ銀河だと、相当に酷い戦争状態になっていると思われるぞ。そんなところに、こんな超巨大な宇宙船が出現したら……味方に引き入れるか、それとも真っ先に潰される的になるか、どっちかだろうな」
「うん、そうだろう……哀しいことだけど、それが人間、生命体の業みたいなものなんだろう。相手と協力して宇宙を開拓していくって考えが浮かぶのは、いつも不毛な争いが悲惨な状況で終わった後なんだ……」
「マスター、出現ポイントとリンク出来ました。こちらが巨大すぎて出現先のポイントとのリンクが難しかったのですが、なんとか同期を取りました。どうやら、ポイントを守る要塞システムのようなもので囲まれているみたいです」
「フロンティア、ご苦労さん。そのポイント以外は掴めなかったようなので、出現ポイントについてはまかせる。出た時にガルガンチュアが実体化するスペースは確保されているだろうな?」
「それは大丈夫です、マスター。大規模な宇宙艦隊の出現や進入ポイントとして利用されているようですので、かなり大きな物体でも許容されるとデータが来ています」
「よし、では、そのポイントへ出る。実体化後、すぐに戦闘となっても良いように準備だけはしておけよ」
「「はい!」」
「では、マスター。数10秒後に跳躍ポイントへ出ます」
こちらは跳躍ポイント防御衛星のメインコンピュータ、フェードラ。
跳躍ポイント情報取得の要請通信があったため、ポイントと、その周辺空間の情報を送ったが、その相手の情報を確認して、さすがの自立コンピュータも驚く。
「こ、このような巨大な宇宙船が造られたという情報は敵味方双方において、また他の弱小勢力においても確認されたことはない……これは外宇宙からの訪問者か?」
相手が、あまりに巨大なため、その仮想戦闘力を計算して、コンピュータは、それが生身の身体を持つなら総毛立った。
とてもじゃないが、この防御衛星の全システムをもってしても瞬時に撃滅状態となるのが計算上でも明らかだ。
で、そうなった場合、相手に与える損害は……1%も無理だろう。
相手本体は全く無傷で最大ダメージでも搭載される小型戦闘艇に対し一部ダメージを与えるのが精一杯。
外宇宙からやって来たとなれば、こちらの想定外の武器を持っている可能性すら大いにあり、その場合、一方的な殲滅となるだろうことは間違いない。
防御システムについても同様だろう。こちらの攻撃が通用するか?というレベルでしか無い。
メインコンピュータは暗澹たる計算結果に、できうるなら絶望したかった。
しかし、まだまだ機械知性としては未熟なため、その感情を自分でも理解すること無く、ハヤシ提督の遺言を忠実に守っていく。
やがて、メインコンピュータに接続された跳躍ポイント監視カメラ群の映像データが実体化していく超巨大宇宙船を捉え始めた。
2隻の巨大宇宙船を合体させたかのようなそのフォルムは全長においては惑星規模と言っても良かった。
「こんな物、敵と認定できるわけがない……戦うにしても相手にならない」
メインコンピュータは、そうつぶやくのが精一杯だった……
跳躍ポイントには、この銀河では想像もされたことのないレベルの宇宙船が、その威容を現していた……




