戦いの銀河 その一
新しい話となります。
元ネタは……分かるよね(笑)
ただし、あの作品とは違い、英雄は登場させません。
土台だけ借りて、泥沼の戦争状態を解決させる話にします。
今、宇宙の歴史に新たなページが増える……
「提督、要塞衛星フェードラの攻撃準備、整いました!予想撃滅可能数は敵主力艦隊の、およそ3割に届きます!」
戦闘制御コンピュータの回答を得てハヤシ提督は、その表情も変えずに一言。
「では敵に最大被害を与えるように攻撃タイミングを設定せよ。一撃で敵艦隊の心をも、へし折ってやるのだ!」
コンピュータは最適な攻撃を自らプログラミングする。
「攻撃許可は事前に出しておくので最適な時期で攻撃せよ」
最終的な攻撃許可は人間が出さなければならないので、ハヤシ提督は事前許可を出す。
この銀河では星系から星系への長距離移動は通常の跳躍航法で大丈夫だが、勢力圏を超えるような超長距離移動にあっては拠点となる宙域があり、その宙域にある跳躍ポイントを使えばエネルギーの大幅な節約になる。
ただし、敵対勢力にとっても同じことなので、そこを所持する勢力に跳躍ポイントの防衛は絶対に外せないものとなる。
たった今も、レーダースクリーンには無数の大小宇宙艦艇が表示されている。
それも敵味方の識別表示は敵!
敵の表示以外に識別不能や第三勢力、味方の艦艇の表示は無い……
ポイント守備隊の攻撃衛星フェードラの持つ守備艦隊が迎撃に向かったはずだが……
「守備艦隊は全滅か」
ハヤシ提督はポツリと呟いた。
しかし、これで相手の意図を図るような通信を送ることもない。
問答無用で奴らは壊滅させてやる!
「提督、防御シールド及び攻撃用微衛星へのエネルギーチャージ、完了しました」
これで、こちらの迎撃準備は整った。
迎撃どころか敵の殲滅だがな……
「攻撃許可。限度は無し。敵の殲滅を目標とする。こちらの守備艦隊を全滅させてくれた礼は百倍にして返してやる!」
宇宙に大気はないが、この戦いにより、この宙域では数秒間、音が聞こえる状況になったという……
4時間後には半光速どころか10分の一光速でも、この宙域では障害物への衝突を避けるために使用が禁止された……
攻撃側は7割近い艦艇が落とされ、もう作戦は遂行不可能となり、指揮官の艦船まで失ったためにバラバラになって逃げ去っていく。
一方、守備側。
「司令室も攻撃を受け、この不壊とまで謡われたメインルームまでヒビが入り、空気が抜けている。コンピュータ、今から自立行動を許可する。このポイントを勝手に利用する奴は問答無用で破壊しろ。跳躍ポイントから出てきた艦船だけ通行を許可し、ポイントへ入ろうとする艦船は、その勢力に関わらず破壊、通行許可を与えるな。もう、このポイントは勝手に利用させないように。この衛星システムに入る事のできる奴は軍事と全く関係のないヤツのみとせよ。なお、この命令は私、ハヤシ提督が死して後、すぐに適用されるものとする……」
簡易宇宙服しか用意されていなかったメインルームで提督は、その最後の瞬間まで軍人であったという。
提督が亡くなった後、攻撃衛星フェードラは防御衛星へと、その仕様を変える事となる。
全てはメインコンピュータが判断し、その改変も使用も全て自動化されて無人の鉄壁要塞と呼ばれることになる……両陣営から……
「メインコンピュータ、こちらは銀河市民国師団の指揮艦である!もう、そちらの指揮官は亡くなっている。新しい指揮官と防衛艦艇を受け入れよ!こちらは味方だぞ!」
この呼びかけに対し自立行動を許されたメインコンピュータは、このように答えたとされる。
「こちら拠点防衛衛星フェードラ。最後の指揮官、ハヤシ提督の遺言により私は自立を許された。新しい指揮官も防衛艦艇も不要。我が意志とハヤシ提督のご遺志により、この宙域には、どんな武装勢力も進入を許されない。このポイントは宇宙船の出現ポイントであることは許可する。だが、どのような宇宙船であろうが進入ポイントとなることは許されない。これは、どのような勢力であろうが変わらない」
艦隊は危険性を確認するため自動化された無人の小型搭載艇を要塞に向けて数機射出したが、その勢力圏に入ったが最後、全てが破壊された。
「いかんな、聞く耳もたんというやつだ。防衛拠点としても破壊するわけにはいかないので、これでは打つ手がない……」
新任の指揮官だった准将は引き返す選択をする。
敵にも味方にも使えないということは、こちらにとっては有利だと判断したのだ。
これ以降、銀河市民国からの艦艇は、この宙域を避けて航行することとなった。
逆に銀河皇国側では、これをチャンスと捉え数回の侵攻が行われたが、その全てが失敗し、その多大なる宇宙艦艇と人員、そして戦費を無駄に費やすこととなった。
いつしか、この宙域は不可侵領域となり、どちらの勢力も入れない聖域のようなものと化す。
要塞のメインコンピュータは、その勢力範囲外にあるものはギリギリの距離であろうとも攻撃する意思を見せなかったため、要塞付近には両陣営から外れた者達が自然と集まる事となる。
第3勢力という力になるまでのことはなかったが結構な数の宇宙海賊や怪しい運び屋、そして闇の商人までが集まる一大勢力圏と化すこととなるのに長い時間はかからなかった……




