銀河団を渡る旅 その7 文明程度を変える話 中
うう、やっぱり予想通り、上下で終わらなかった……
後一話で、この話、終わるかなぁ…
前々回で振った伏線につながります……
通常の勤務時に、それは起こった。
ドン!
という、突き上げのような音と振動、その数秒後に、激しくて強い揺れが、これでもかと襲い来る!
ビルは倒れ、道路はめくれ上がり、山は崩れ、海に近い埋立地は水のように液状化して、一部の根本対策済み以外の建造物は地面に呑まれていく……
その10数分後、とてつもない巨大津波が岸辺を襲い、港より10Km近く離れた地域も津波により建物が根本から持って行かれる。
幸い、この地域は震災地域とは山脈で隔離されていたために、そうは被害が酷くなかったが、ラジオやテレビから送られてくる現地の様子は、とても正視できるものじゃないものがある……
その時、社内放送が響き渡ることとなる。
「社員の皆様、落ち着いてください。ただいま、巨大地震が、ここから40kmほど離れています、$$市にて発生し、その影響で津波被害も発生しております。
その件にて、ただいま、社長より緊急の告知がありますので、そのまま、静粛に、お聞きください」
「あー、社長のクスミ0001である。ただ今発生した大災害の救助作戦を、我社の総力を結集して行う事となったので、ここに告知する。そして、ここに有志の救助隊員を募集する。ボランティアではあるが、当然、有給扱いにし、我社の最新開発機器の実践使用の機会もあるので、ふるって参加を希望する。では、参加希望者は30分後に社屋の前まで集合するように。以上だ」
僕は、放送が終わるか終わらぬかのうちに、エレベータに乗っていた。
ちなみに、うちのエレベータは特別製らしく、どんな災害があろうとも故障やケーブル切断とは無縁だと保証され、大災害があろうとも社内移動はエレベータを推奨されているほどだ。
社屋も、どんな設計なのか知りようもないが、巨大地震でも最初の突き上げだけのショックで、後は微細な揺れのみ……
俺達って、巨大な防災ドームにいるのか?
などと噂されるくらいだ。
さて、災害救助へ自主希望した者達は、どうしても社内での作業上、必要な人員を除いて全員だったようで、約60名。
バス、あるいは車両を用意して、集団で行けるとこまで行くのか?
などと考えていると……
社長が来て、開口一番。
「今から社内の最高機密を開示する。まあ、他人に話しても冗談だと思われるのが常だと思うが、口外はしないように」
はい?未来を実現してる会社だから、空飛ぶ車でも来るのかなと思っていると……
うわ!
これ、いきなり目の前に現れた、これって……
「社長、これって、あの、空中に浮いてコンタクトも拒否してる巨大宇宙船に、そっくりなんですが……サイズを除いて」
そう!
いきなり僕達の目の前に現れた、大型バスの大きさくらいの球形宇宙船が2隻。
まさか、これが我社の最高機密?
「分かるものもいるな、そう、これが我社の最高機密にして、最大最高の開発品だ。さあ、ステルスが効いてるうちに乗り込め!現場へ行くぞ!」
有無をいわさず、僕達は球形宇宙船に詰め込まれる。
約60名も居るにも関わらず、居住性は悪くない。
駆動方法は想像がつく。
フィールドエンジンだ。
これでなきゃ、こんな代物、空中へなんか浮かせられない。
フヨフヨと、乗り込み終えた宇宙船から空中へ。
眼前に見える巨大宇宙船と同じくらいの高度になると、瞬間的に移動し、あっというまに災害現場へ。
まずは高空からの現場確認。
酷いものだ、堤防は全壊、道路も使用不能、鉄道も船も、地震と津波で全て破壊されてしまっている。
僕らは、グループごとに、ポイントを決められて降ろされ、まずは人命救助と災害現場の整理を始めることとなる。
「社長は?どこに行きますか?」
と聞いたら、緊急に対処すべき物件があるので、そちらへ飛ぶという。
それも家族で。
子供など連れて大丈夫なんですか?
と聞いたら、笑顔で、
「大丈夫!これでもベテランだよ、君たちよりも!」
と、自信満々!
まあ、あの社長が危険地帯と分かって乗り込んでいくのだ、大丈夫だろう。
僕らは、精一杯、自分たちのできることをやった……
やり過ぎたかも知れないな、正直。
僕らが使用した、宇宙船に積まれていた救助用具や資材は、とんでもないものだった。
強化外骨格は、簡易のパワードスーツ。
重さ数トンの船をも、いとも軽々と持ち上げて、災害ゴミの撤去を素早くやってのける。
僕の使った殺菌灯は、当てるだけで怪我や傷口の殺菌ができる優れもの。
泥水すらも瞬間的に殺菌し、飲用可となる。
他の救助班が重宝したのは、以前も述べた超薄型の発電シート。
これで救助テントを作ると、そのままミニ太陽光発電所に早変わりする。
ちょっとしたテレビやラジオの電源なら、充分に使用可能だ。
朝に起きた地震災害は、もう昼には、こういうわけであらかた片付くこととなった。
しかし、これからが正念場!
普通の救助隊や消防、警察組織は、いまだ現場には到着できない。
僕らは、行方不明者の捜索隊と、道路や鉄道復旧の部隊に分かれて作業することになった。
まあ、僕らはまだいい。
緊急案件とかで危険地帯へ向かった社長たちは、どうなったんだ?!