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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
銀河団を超えるトラブルバスター
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銀河団を渡る旅 その6 文明程度を変える話 上

ふしぎな会社の、ふしぎな技術力の一端。

宇宙航行すら未だ実験段階の文明を、どうやって変える?


球形宇宙船が、僕らの町の頭上に浮かびだしてから、もう半年。


政府と軍は、何らかの反応を引き出したいと、毎日のように手を変え品を変えて、コンタクトをとろうとしている。

しかし、あまりに近すぎる接近を中止させて近くの空港へと強制着陸させることだけを実行する宇宙船には、コンタクトの意思もないと見られる。

あるいは、何かのタイミングをはかっているのだろうか?


僕は、毎日が楽しくて仕方がない!

仕事の一環と言われて、一週間に数時間、教育機械にかかる時間が取られているのだが、これが凄い効果なのだ。

一ヶ月もすると、入社時に全く理解不能だった開発品が、どんな理論で、どんな性能を目指して、どんな回路や機構を使うか、理解できるように頭脳が明晰になっているのが自分でも分かる。


おかげで、民生品の開発も、高性能のレース用エンジンをデチューンして信頼性と整備性を高めたりするように、どこをどうすれば良いかが自動的に閃く。

僕の頭脳、どうなってるんだろう?

いつの間にか、僕は民生用の製品開発部でリーダー格になっていた。


「今回の民生用転用品は、超高性能品として開発されていた、極薄型の太陽光発電セルだ。社長や重役方からの話だと、元々は宇宙ヨットに使われる予定のものだったと聞いているが、今の文明程度では宇宙ヨットは製作不可能なので、まずは、こいつを地上で使う発電用に切り替えたいと思う。では、ここから民生用への転用に必要な事柄を抜き出そう……」


僕がリーダーとして、まず意見を述べる。


「まずは、あまりに薄いので、耐風性が問題となるな。他には?」


開発品は、あまりに光=電力変換効率が高効率なので、このままで市場へ出すと、独占市場になりかねません!

とか、

宇宙用ですから、かなりセル一枚が大きいです、これでは地上での設置に制限が多すぎます。

とか、様々な意見が出る。


僕も入社するまで知らなかったブレーンストーミングという手法で、出てくる意見を批判も制止もすることなく、どんなに下らないと思っても全ての意見を出尽くすまで言わせる手法だと、先輩に言われたものを使って自由に意見を出させる。


出てくる出てくる、最終的に100を超える数の改良点が出された。

まあ、その中には下らない意見も多かったが、目の付け所が変わっていて、そんなところもあったか!

などという眼から鱗が剥がれるような着眼点のものもあった。


最終的に、民生用品として、もっと量産性の高い、通常の他社製品の2割ほど上の変換効率を持つ、住宅の屋上や屋根に設置できるスペースを考慮したセル幅を持つ製品を目指すことになる(耐久性のアップとして、厚さは倍以上になるが、ちょっとやそっとじゃ壊れない、割れないセルにするのも忘れない)


でもって、我社の常なんだが、超の付く高性能品が前提としてあるために、デチューンされた民生品は、あれよあれよと言う間に開発が完了する。

業界内部でも、希望とする製品の開発期間が早すぎると言われているらしいが、その秘密は、より高性能の製品が、もうあるからに過ぎない。


ただひとつ残念なことは、この開発品を我社の製品として世に出せないことだけである。

パートナー企業と話し合って製品の価格も決めるんだが、開発元だけあり元の製造価格を知っている……

これが、良心が痛むこと、このうえない状況を見る。


化粧品業界か?!

と叫びたくなるほどに、製品価格が高いのだ。

あ、市販品と比べて高いわけじゃない。

価格的には、市販品と同様、あるいは性能が上の分だけ少々高いくらいだ。


しかしねー。

開発元だけに、もっともっと、それこそ半額にしたって随分な利益が出ることを知っているんだ、こちらは。

ただし、それをやってしまうと、市場が混乱するから実行できない……


悶々とした思いが募るが、それを話せるのは、社長宅で、休日におじゃましている時に愚痴るくらい。


「社長ー、いい加減、我社の影響力を、もっと強めませんか?もっと安くて高性能な製品を我社のブランドで発売しましょうよー!」


「またその話かい?オットー1258君。まあ、君が社会に良い物を安く提供したいのは理解できるが、それを今の時点で実行すれば、数年後には我社だけが生き残って、後の全世界の会社は潰れるよ。それでもやれと?」


う、また論理で来たな、社長は。

分かってるんだ、分かってるんです、理屈では。


「でもねー、社長。これは理屈じゃないんです。企業人としての理想というか、使命というか何と言うか……」


「ははは、理解はできる。しかしな、圧倒的に力を持つ者が自制しなくなったら、社会の混乱だけじゃ済まないぞ。経済の混乱は戦争すらひき起こしかねん。私は、それだけは避けたいんだよ。しかし、文明の発展も促したいので、こんなことになってるわけだが」


「じゃあ、社長が目指す未来ってのは、いったいどんなものなんですかー?」


「うーむ……少なくとも、今の文明程度じゃ不満だね。少なくとも、この恒星系の全てに宇宙船が行き交い、開拓と探検が日常になり、そして、付近の恒星系へ行く試験船さえも日常的に見られる状況にするのが……できれば、さらにもう一歩!」


「はい?!それって遠い未来の世界ですよー。あまりに夢を見るのも現実逃避になるかと思いますがー……」


「ふっふっふ、遠い未来だと思うかい?まあ、見ててご覧よ。あと10年も経たないうちに、この世界は大きく変わるから……」


この時には、酒の上の冗談だと思っていた……

本当に、冗談だと思っていたんだ……


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