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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
銀河団を超えるトラブルバスター
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銀河団を渡る旅 その4 おかしな一家

この話から、語りは主人公じゃなくなります。

ようやくエンジンの暖気が終わったと言うことで(笑)


今日は、朝から……いや、早朝から人々が空を見上げている。

見上げている対象は、言わずと知れた、球形宇宙船だ。


もう、間違いないので宇宙船と言ってしまおう。

深夜のニュースでも、


「今まで、この物体をUFO(未確認飛行物体)=ユーエフオー、と呼称していましたが、もう目視確認もできるため、宇宙船と名称を変えることといたします。それでは、特別番組、ファーストコンタクト!?異星の客人との接し方と、コミュニケーションのとり方について、各分野の専門家の方々に、急遽、おいでいただきまして対談と論議を始めたいと思います。政府機関からは外務省の課長さん、文学界からはSF作家、特に宇宙SFを沢山書いておられます作家の方々にお出でいただきました……」


と、様々に適当なことを言ってたが、その議論の核心は、


「コミュニケーションなど可能なのか?言語はともかく、考え方が全く違う、もしくは、生存環境すら全く違う生物だったら、思想を共通できる要素自体が無いのでは?!」


である。

その証拠に、テレビもラジオも、3D映像まで使い、民間団体と政府機関が躍起になってコミュニケーションを確立させようとしているのに、当の宇宙船からは、何の応答も反応も無いのだ。


異星からの訪問客を乗せているであろう巨大な(全長400mを超える球形宇宙船!)物体は、この国の上空500mに留まり、何の動きも見せない。

これはこれで、驚くべきテクノロジーである。

今の僕らの文明程度では、こんな巨大物体を空中の一点に、それこそ張り付かせるように動かずに静止させておくことなど不可能なんだから。


各メディアや、人類ネットワークの書き込みでも、


「ああいった現象を実現できる動力と駆動方法って、想像もつかないですな。ともかく、我々とは全く違うテクノロジーを、当然のごとく使用しているケタ違いの文明でしょう。これは、超光速航法を持ってる事を考えても納得できると思いますよ」


などと言っている。

しかし、もう深夜に登場して、いまや約半日近く過ぎているのに、全く反応なし。

いやがおうにも宇宙船の中の乗務員が気になる……



あの大騒動から一週間が過ぎた。

いまだに高空の一点にとどまる異星人の宇宙船からは何の反応もなし。


数日前に、あまりに過激な企画で有名な某テレビ局が、ヘリをチャーターし、無謀にも宇宙船の近くまで接近しようと試みる番組を実況中継するという、とんでもない事をやった。

あまりに無謀なため、至近距離に行く前に軍の航空機が緊急発進してヘリを宇宙船から遠ざけたのだが、その時に軍の航空機が宇宙船とニアミスしそうになった。


どうなったかって?

UFOの目撃体験記じゃないけれど、計器や操縦桿(フライバイワイヤ方式で、コンピュータ制御だったのがいけなかったようで)が急に無効となり、墜落事故となってしま……うところを、軍の航空機は何か巨大な手に掴まれたかのごとく、空中にて静止してしまったかと思うと、ゆっくりとではあるが、数10Kmも離れた軍の滑走路へと運ばれて、丁寧に着陸させられてしまった。


これは、そのTV局のカメラがドキュメンタリーのように航空機に張り付いて実況中継していたため、何かの特撮映画だと勘違いしてしまった人以外は、これは現実だと、これほど異星の宇宙船と我々にはテクノロジーに差があるのだと思い知らされることとなる。


軍の航空機事故を防いだ宇宙船は、それでも、何も反応を返さず、この星に来てから一ヶ月が過ぎた。


人々は、一部を除いて、何もしない、ただそこに浮かんでいる宇宙船を、背景の一部だと思うことに決めたようで。

朝、仕事に出る前に、ふいに空を見上げると、そのまま視線を戻して仕事に。

帰りには、家に入る前に、つい、視線を空へと上げ、何も反応のない事を確認すると、安心したように家に入る。


例外は、僕のように多大なる興味を宇宙船に抱いた人々と、政府の関係者。

どうやったら宇宙船の気を引けるか、どんな反応でもいいから引き出せないか……考えている。


数日前に、過激派の一部だろうが、宇宙船に向けて手製のミサイルをぶっ放した奴が居る。

僕らが考えたことは、これで僕らの文明が凶暴な攻撃的文明だと、異星人に誤解されないかという事だった。

ちなみにミサイルは、手製にしては性能が良かったようで、宇宙船に向けて一直線に飛んでいき……途中で見えない壁のようなモノに当たったかと思うと、爆炎と多量の煙を発した。

当の宇宙船は、何をされたかと問うような反応も見せず、煙が晴れたかと思うと、見えぬ壁の向こうに傷ひとつ無い宇宙船の、どんな性質をもつ物質かも分からない金属壁が見えるのみ。


ちなみに、この宇宙船、軍の航空機の遠巻きの観測により、ドアやハッチ、開口部らしい物すら見えない、完全なる球形だと、3Dデータが公開された。

着陸するとしても、どうやって着陸するのか?

そして、どうやって人員や補給物資を出し入れするのか?

全くわからない、謎ばかりが増えていく、そこにあるがままの宇宙船だった……


ちなみに、僕の住んでいる独身寮の隣の地所に、奇妙な一家が先週、引っ越してきた。

最新の土木技術と建築技術を使用したという新築の家は、あの宇宙船騒動のすぐ後から建設開始、またたく間に5階建ての住宅兼事務所兼研究所が完成していた。

僕も、気にはなっていたが、宇宙船に気を取られて、あまりお隣さんには注意を払っていなかった。


引っ越しの挨拶に来られて、独身寮の各部屋に、ご丁寧にお土産まで持って来られた気配りの良さにはおそれいったけど。


ご主人は、在野では、ちょっと名のある発明家だそうで。

僕が、


「じゃあ、あの巨大宇宙船の動力や飛行原理も分かりますかね?」


と、冗談半分で聞いたら……


「ふむ、あれを巨大と言いますか。中型搭載艇なんですけどね。まあ、いいです。動力は、完全なる質量=エネルギー変換炉の仕様かと。静止しているところを見ると、フィールド駆動方式ですかね?」


と、なんとも、馴染んでいるような気軽な返答。

よくよく聞けば、実験では成功している駆動方式らしい。

ただ、量産と大型化は、未だ難しいとつぶやいていたが……


在野とは言え、よくもこんな天才を、国家が放置してるよね。

お話して、お隣のコメットハントが趣味の独身者のエンジニアだと説明すると、いつでも家に来てもらって構わないと許可を得た。

でもって、休みになると、ちょくちょくお隣にお邪魔することにする。


お隣の家は、未来技術の可能性の塊だったさ……

社長にして研究所長のご主人や、娘さん二人、副所長にして雑用係の長身の男性の4人が、ところ構わずに発明品を飾ってる。

脳波制御のラジコン模型とか、初期ではあるが人工知性のモデル理論のモックアップだとか、フィールド駆動の試作模型もあった。


おいおい、ここ、産業スパイには宝の山じゃないか?!

大丈夫なのかね?!

ご主人に、その点を聞くと、


「ああ、その点は大丈夫。どんなスパイも盗賊も、絶対にここの試作品や模型を持ち出すことは不可能だよ。私の許可がなければね」


と、いとも気楽な回答。

本当かね?

僕にとっては、宇宙船よりも気になる一家の出現だった……


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