銀河団を渡る旅 その3 とりあえず、腰を落ち着けよう。
とりあえず、巨大合体宇宙船は検査とチェックに入り、他のクルーは落ち着き先を決めます。
さて、主人公たちに気付いた、その星の住人たちは……
今夜は晴れていて、下界の灯りも少ない。
絶好のコメットハント日和だな。
僕は、いつもの反射式望遠鏡を、いつもの方角へセットして、夜空を眺める……
ああ、いつか僕も、あの宇宙へ行けたらなぁ……
ありゃ?
ボケっとしてて、何かを見間違えたかな?
天体望遠鏡で眺めている宇宙空間が、何だか歪んだみたいな……
そんな馬鹿な?!
しかし、このレンズは特注で、端へ行っても歪みがほとんどない最高級品のはず。
その証拠に、その空間部分以外は、普通に恒星の光が見えているし、付近にある小惑星も最大倍率にして影になっている……
と、すると……
今、僕が見てる、この空間の歪みは何なのだろうか?
巨大な衛星クラスの物体が透明な物質でできているとすれば、このように縁が歪むのも理解できる。
しかし、そんな馬鹿な!
一応、小惑星の配置図は手に入れているので、ここに衛星クラスの物体など存在するはずがない。
こりゃ、何だ?
天文台の知り合いに電話して、この付近の空間をサーチしてもらうように要請するのだが、
「あのなぁ、そんなタワゴトで天文台の通常業務を変更するわけにゃいかんのだよ」
一言のもとに、上司に断られたらしい……
向こうから謝罪電話がかかってきた。
こちらも、完全な認識じゃないから、すまなかったねと相手に謝ったのだが、そうすると、どういうことなんだろうか?
しばらく観察していると、そこから小さな物体が飛び出した!
驚きだ。
巨大なる衛星規模の物体は、そうすると母艦?
飛び出したのは、搭載艇?
まあ、そんな空想話に浸る僕でもなかったが、ふと気になって、飛び出した小さな物体を追いかけることにした。
しばらく観察していると……
とんでもないことに気付いた。
この小さな物体、完全に宇宙を飛んでいる!
しかし、その飛行原理が全くわからない。
なにしろ、制御された飛行ルートなのだろうが、化学ロケットの噴射炎も見えなければ、それよりも高度なイオンエンジンロケットの独特な色の噴射も見えない。
しかし、こうやって見ていても速い!
なんらかの宇宙航行方式を使用しているのだろうが、何だろうか?
それに、もっと奇妙なことに気がついた。
通常の宇宙ロケットのようなデザインではない。
球体のロケットなど、聞いたことがない。
空想物語世界のことだろうと思っている(いた)僕は、過去の自分にビンタを食らわせてやりたい。
こんな現実があるんだぞと、過去の自分に言い聞かせてやりたい。
ちょっと待て。
この、小さな球形宇宙船(もう、推測でも何でもない、事実!球形の宇宙船だ)って、目的地が……
僕らの星じゃないのか?!
角度と速度のベクトルを天体図に書くと、目的地が、ズバリ!この星だと示される。
おいおい、この宇宙にいる生命体、それも知的生命体は数少ない、今の時点では僕らの星が、銀河広しといえども時間的には唯一なんじゃなかったのかい?!
興奮してきた。
おっと!
倍率を低くしても外れるようになってきたな、目標が。
こりゃ、ものすごい速度なのかも知れない。
天体望遠鏡から、低倍率ではあるが広角の双眼鏡に切り替える。
もう、双眼鏡でも見える。
天文台の知り合いに、方角を知らせて、確認しろと言ってやる。
もう、ここまで見えるんだ。
見間違いじゃない。
すぐそこまで来た!
月軌道の内側へ入ってきた。
深夜なのに、あっちこっちでラジオやテレビの画像・音声が聞こえ始める。
「……みなさん!今すぐに東の空をご覧ください!明るい月の光に照らされて、謎の飛行物体が、この星に向かって飛んできます!宇宙人の乗った宇宙船か?あるいは、今までデータになかった彗星、流星なのでしょうか?!幸い、この星に近づくにつれて速度が落ちているようですが、まだ安心は出来ません!」
おいおい、彗星?流星?何を馬鹿な!
今さらだろうが、宇宙船だよ、宇宙船!
もう、双眼鏡も不要。
大気圏内に入って燃え盛るかと思いきや、急激に速度を落として、今や夜空の風景の一つと化した、球形宇宙船。
各国政府も必死になって連絡をとろうと試みているらしいが、未だにナシのつぶて。
こうして、僕らの星に異星人がやってくることになった……




