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ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く  作者: 稲葉小僧
銀河団を超えるトラブルバスター
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銀河団を渡る旅 その1

新しい章、新しい話の始まりです。


前人未到の新しい銀河団では、何がガルガンチュアクルー一行を待ち受けているのか?

それは、作者も分からなかったりする(笑)


一年間の、ほとんど何もない宇宙空間の航海は、しかし、あまり退屈しなかった。


この時とばかり、俺は2隻の宇宙船(巨大合体宇宙船ガルガンチュアを構成するフロンティアとガレリアのことだよ)の船内構成や動力源、武装や内蔵装置類にしても習熟しておくことにしていたので、毎日が退屈する暇もないほどに忙しかったのだ。


銀河団を超える旅は、フロンティアにとっても主たる命令を実行するための絶好の時間と空間を与えてくれる。

フロンティアは、嬉々として観測と測定に勤しんでいる。


一方、ガレリアは、星も何もないために資源探査任務が一時停止状態、暇なようで。

俺は、この時とばかり、ガレリアへ質問する。


「ガレリア、こういう時でないとゆっくり聞けないからな。改めて質問したいんだが、君らの主動力って、どういうものだ?エネルギー源は?」


ガレリアは、待ってましたとばかりに笑顔で答える。


「主よ、その質問を待っていました。マスターとして知っておいてもらいたい第一のことですが、外部へは秘密となっています。マスター権限を持つ者へ知らせるのは大丈夫ですが、それ以外の者への公開は禁じられています。まずは、それを知っておいてもらいたい」


おっ?!ユア アイズ オンリー ってか。


「大丈夫。ここまで異質な技術で造られている宇宙船なんで、そういう秘密があっても不思議じゃないと思ってたよ。公開はしないから安心してくれ」


「はい、了解しました、主。では、まずは銀河間駆動までのエネルギー源と、その駆動方法から、お話しましょう」


ん?


「ガレリア、今、おかしな言い方したな。惑星間、恒星間、銀河間までの駆動方法と、銀河団を渡る駆動方法、エネルギー源は違うのか?」


「その通りです、主。フロンティアも私も、駆動方法とエネルギー源は同じように造られています。まあ、これが、形や大きさは違えども「兄弟姉妹船」と言われる所以ですが」


「へぇ……そうなのか。動力部分と駆動部分は、同一の工廠で造られたんだな、そうすると。根本が同じだから兄弟姉妹船という事か」


「そうです、主。では、詳しい話に移りますね……まずは、銀河間駆動までの比較的短い距離の駆動方法の場合ですが、これは主の銀河でもよく知られている「跳躍航法」を使います。まあ、エネルギーの規模が違いますので、一緒にできないほどの差はありますが。これに要するのは、いわゆる「物質=エネルギー変換」動力となります」


「ふむふむ、いわゆるウランやプルトニウム原子炉のようなものかい?」


「まあ、同じような原理ですね。ただし、どんな物質もエネルギー化するのと、その逆も可能という点での違いはありますが」


「え?あー、そうだった。デブリや小さな流星群を捕獲して、船内の空気や備品、食料も作ってるんだったな」


「そうです、主。ただし、銀河団を渡るような大距離の場合、跳躍航法では、やろうと思えば可能ですが、跳躍後に出現する地点の計算時との誤差が馬鹿になりませんので、跳躍航法は使いません。同じく、跳躍航法までに用いる物質=エネルギー変換動力も、必要とするエネルギー量の問題で、使えません」


「そうか……考えてみれば、その通りだな。じゃあ、どんなエネルギーを使って、どんな航法で銀河団を跳ぶんだ?」


「その前に、主。主は、多元宇宙理論というのをご存知か?」


「ああ、この宇宙と同じような、けど、少しづつ違う宇宙が、無限に近い数で存在してるって理論だろ?でも、その宇宙同士は出会うことはないはずだが?」


「正解です、主。実は、銀河団を渡るような巨大なエネルギーを要する場合には、我々の主動力が自動的に、次元間差動エネルギー発生装置へと切り替わります」


「次元間差動エネルギー発生装置?なんだい、それは?」


「詳細は、理論段階からお話しなければならないのですが、手っ取り早く言うと、多元宇宙の無作為の一宇宙と、この宇宙のエネルギーや温度、明るさ等、何でもいいから差が出るようなものを選んで、その差を利用してエネルギーを産む装置です」


「その、任意の宇宙からエネルギーを貰ってるわけじゃないんだよな?」


「はい、主。その宇宙のエネルギーが、この宇宙より大きなエネルギーであればそれも可能ですが、相手の宇宙のエネルギーが、こちらより小さい可能性もありますので、どちらにしても利用できる「差」の方を選んでいるわけです。効率は確かに下がりますが、こちらと向こうの宇宙に影響を与えにくいという事で、このようなエネルギー発生方法を選択しました」


「ふーん……面白いね。さすがにシリコン生命体の考えた宇宙船だけのことはある。遠未来の宇宙の事も考えているというのが凄い発想だな」


「お褒めに預かり恐縮です、主。製作者も、さぞかし岩の影から喜んでいることでしょう」


「製作者は、亡くなっているのかい?」


「いえいえ、存命だと思います。個体寿命が数億年の種族ですので」


「あっそ……しかし、凄い技術力と発想力だよなー。あ、銀河団を渡る航法は?」


「はい、主。それはこれから、お話します。このような巨大エネルギーを使い、どうやって銀河団を渡るかというと、超空間の小さな球体を作るのです」


「ん?超空間って、異物が侵入できないからバウンド、跳躍するだけなんだろ?超空間の球体?」


「跳躍航法は、この宇宙を突き破って超空間の弾力性に飛んだ壁に体当りするような航法ですね。超空間の球体を作る航法は、それとは違い、宇宙船を超空間の泡のような物で囲むのです。もちろん、目に見えるようなものじゃありません。しかし、この泡で包まれた空間は、超空間と同じ特性を持ちますので、その中でのアインシュタイン理論は通用しません。光速の限界も、ほぼ無いと言えるようなものとなります」


「だから、銀河団を渡るような超遠距離を跳ぶ場合には、このような跳躍に頼らないほうが誤差も出ないから良いということか」


「正解です、主」


「でも、じゃあ、なんで普通の銀河間を渡るのに、この航法を使わないんだい?」


「はい、主。ただ単に、消耗するエネルギーの多さと、効率の問題ですよ」


「ん?あ、そうか!跳躍だと、瞬間的にはエネルギー消費が多いが、跳躍してしまえば後はエネルギーを消費しない。それに比べて、超空間の球を作るこちらは常に大きなエネルギー消費を強いられるのか」


「はい、大正解です、主」


「しかし、そこまで違うのかい、この航法を使った場合のエネルギー消耗率は」


「はい、主。計算上では100倍、実際に使用した場合の消耗率は、超空間球の質の問題で、およそ150倍近い差が、跳躍航法との間にあります」


「質の問題?なんだい、それ」


「理論上で考えられる超空間球と、実際に作ることのできる超空間球とでは、その空間の質に差があるのです。理論的には超空間内部では光速は無限大になるはずなのですが、今の私達の技術レベルでは光速度が有限の物しか作れません。そのため、球体の維持にも余計なエネルギーが必要になるのです」


「ふーん……ここまでの未来技術で造られた宇宙船にも技術力の限界があるのか……」


「まあ、今の超空間球でも光速度の限界は、この宇宙の1000万倍ですけどね」


「そこまで出せるなら何の問題もないと思うけど……あ、もしかして、フロンティアとガレリアが行う予定だった超銀河団を跳ぶ実験ってのは……」


「はい、ご明察ですね、主。この、超空間球の質を上げる実験です」


ふー、とんでもない種族だな、シリコン生命体って。

しかし、将来的には、この問題を解決しないと管理人に許可を貰っても超銀河団を渡る事は不可能……か。

俺は、まだまだ遠くに見えるけど、着実に近づいている目標の銀河団を見ながら、そんな事を思っていた。


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