銀河のプロムナード 太陽系の新人類達 たまにゃ愚痴ぐらい言わせて!
新しい章ではないですが、太陽系で増えてきたエスパー達のひとコマ。
仕事が忙しいのも結構なんですが、それが前任者のあまりに高い結果を見せられると……
僕は超能力者だ。
いわゆる、エスパーという人種になるんだけど、突然変異とか先祖帰りとか、そういうことじゃない。
僕が生まれる10年ほど前だけど、超能力者として生まれる子供の比率が急に増えたらしいんだ。
学者さんとやらの解説だと、これは人類が進化するって兆候らしい。
まあ、僕らの前に、先駆者としての偉大なエスパーがいて、その人が人類の精神的な成長と進化の可能性を広げたらしいんだけど……
その人って、今は地球にも太陽系にも銀河系にも、いない。
今は、銀河系を飛び出して、この銀河団も後にしてるようだって聞いたけどね。
まあ、そんな偉大すぎるご先祖様(生きてる人に「ご先祖様」ってのは変だけど、こればっかりは仕方がない。僕らには200年位の寿命しか無いけれど、彼の人の寿命は、数万年に及ぶらしいからね)に申し訳ない子孫のエスパーの一人としては、
「あまりに重いですー!」
の一言を送りたい。
だってさー、あの人、たった一人で太陽系も銀河系も、その他の星雲、果ては、この銀河系を含む銀河団も、平和と安全の宇宙空間にしちゃったんだよ。
僕ら太陽系エスパーの子孫たちが、銀河系のみならず、お隣の大小マゼラン雲やアンドロメダ銀河、すこーし離れたアンドロメダ周辺銀河連盟の獣人たちにまで多大なる期待を背負わされちゃうんだもの。
太陽系人類だって分かると、どこでも、いつでも、誰でもが異口同音に僕らに聞いてくる。
「フロンティアは、いつになったら帰ってくるんだ?」
「伝説の地球人は、いつになったら戻ってくるんだ?」
僕らにはわからないよ。だって彼の伝説の地球人が太陽系を飛び出したのは、まだ太陽系人類が、
「宇宙にいる知的生命体は人類だけなんじゃないか?」
なんて真面目に考えてた頃、太陽系しか開発と探検の対象にならなかった頃、太陽系人類が恒星間跳躍航法を知らなかった頃なんだから。
その時から数えると、もう、200年は過ぎてるんだよ。
僕ら子供のエスパーが銀河系に社会見学や修学旅行、大人になったら研修旅行や出張で遠くの星に行っても、どこでも大歓迎される。
確かに僕ら太陽系エスパーの技術者集団は正確にして素早いトラブルシューティングと対応がウリだけど、それでも、この歓迎ぶりは変だよね。
一介の技術者が派遣されてきたに過ぎないのに、星系の偉い人たちが視察に来るくる!
一仕事終わると上司どころか星系のおえらいさんたちから歓迎会に出席要請され、仕事が終了すると送迎会に出席要請される始末。
僕ら、伝説のトラブルバスターじゃないって、いくら言っても聞き入れてくれない。
果ては、どのようにトラブルを解決するのか秘訣を聞かせてほしいと懇願される……
トラブルシューティングってのは秘訣とか秘密があるわけじゃない。
書類をじっくりと精査し、現場へ何度も行って確認し、そして、過去の事例と首っ引きで解決方法を探る。
これしかないんだよ。特定の人物や秘訣で解決するようなものじゃない。
それを、伝説の地球人は、とてつもないスピードで、どんな難問題もスパスパ解決してくれるんで超常的じゃない普通のエキスパートたる僕らは困るわけだね。
送れるものなら、思念波の大波として伝説の男に送ってやりたいよ……
「あなたのおかげで、僕ら後発のエスパー技術者集団は、困ってるんだー!トラブル解決は時間がかかるんだと教えてやってくれー!」
「ハックション!ハックション!おっかしいな?体調に異常はないんだが……誰か、噂でもしてるのか?」
「マスター、銀河団空間で何をブツブツ言ってるんですか?」
「主よ、あまりに何もない空間が続くので調子が狂うのか?我が工廠での新型合金の開発作業でも見るか?」
「いや、大丈夫だ。なんだか、すごい恨みの念を感じたよ。気のせいだろうとか思うが……」
銀河団も含む宇宙は、今日も平和である。一部のエンジニアには、そうでもないようだが……




