もうひとつのフロンティア その7
ようやく合体完了。
しかし、その後が……船名は?
ようやく3ヶ月掛かってフロンティアとガレリアの合体用具が完成する。
これでドッキングポートで接続されてた2隻は、一旦、ドッキングを解いて離れ離れになる。
離れるとは言うものの、ここまで巨大な宇宙船だと互いの重力で引き付け合い、ゆっくりとだが近づくことになる。
そこを利用して合体固定用具を使うことになる。
「オーライ、オーライ!後部が離れ気味だぞ、フロンティア。もうちょいスラスター吹かしてくれ!……よし!そこだ」
俺の指示でフロンティアが定位置につく。
同じようにプロフェッサーの指示にて、ガレリアが定位置につくと、そこから合体作業が始まる。
まず、両巨大船が船倉を開き、合体固定具を放出する。
その形は、見たところ巨大なる土管。
いや、本当だよ。
土管の形はしてるけどコンクリート製じゃないからね。
いわゆる、円筒形ってやつだよ。
その巨大版だな。
ガレリアは独楽状なのでよくわからないがフロンティアと比較すると、その直径の大きさが理解できる。
フロンティアの半分ほどの直径の円筒をパーツで宇宙空間に吐き出し、そいつを搭載艇を繰り出して2隻の合体用に使うために組み立てている。
直径もデカイが長さも相当なもの。
とはいえ、あまりに長すぎて棒状になると、そこが弱点になりかねないため、あまり長さはとらないみたいだ。
一つ一つが緻密に組み合わさっていくが、なにしろフロンティアの搭載艇を全て使っているために、なにやらアリの群れが大きなエサを加工しているような感じを受ける。
時間がかかるのは当然だが、なにしろ超の付く人工頭脳が3体もいるんだ。
これほどの大規模工事なのにミスが全くない。
見ているとパーツが踊っているかのようにキレイな軌道を描いて組み合わさっていく。
しかし、数時間とかで終了するようなものじゃないので俺は早めに現場監督を切り上げ、休息タイムに浸る。
ここで驚くべきは、いくら宇宙空間とは言え、これほどの大規模工事だというのに全く騒音の類が聞こえないこと。
まあ、音を伝える気体がないのだから当たり前なんだが、俺は、この静けさを感じて、しみじみ思ったね。
「大規模工事になればなるほど宇宙空間のほうが効率も騒音対策も良くなるよな」
と。
太陽系での惑星開発現場の騒音なんて、ありゃ人間の耐えられる限界でしたよ、今から思えば。
ということで、またまた時間は飛んで、1ヶ月後。
ようやく2隻の合体用接続円筒が完成した。
その頃にはフロンティアもガレリアも合体に伴う自身の船体改修も完了しており、合体作業を残すのみとなっている。
今日は、その合体作業の実行日。
シミュレーションも何回も実行してミスのないように欠点は潰してきているが、アクシデントは現場の常。
何が起こるか分からないので俺もフロンティアの船倉部分から現場の監視だ。
まずはガレリアの合体円筒接続改修部分が開き、それに合わせて巨大円筒とガレリアが、ゆっくり回転していく。
あまり速すぎてもダメなのでガレリアは速度を落し気味、円筒は、それに合わせてという形を取る。
いいぞ、いいぞ、よーし……
3,2,1、0!
合体円筒部分の接合部とガレリアの改修部分がガッチリと噛み合い、1つの複雑な形が出来上がる。
ここで回転モーメントを消すために、しばらくガレリアは反対方向へスラスターを吹かす。
フィールドエンジンは使わない。
下手に使うとフィールド効果が円筒部分全てを覆うわけではないため、支障が出るのだ。
ゆっくり、ゆっくりとガレリアの回転が収まっていく。
よし、止まった!
次にフロンティアも合体用円筒接続部を開き、こちらもスラスターと反動推進エンジンで徐々にガレリアに近づく。
ゆっくり、ゆっくりだ。
最終段階だから、ここでミスったりは出来ない。
OK、OK、コースもいいぞ……
「フロンティア、ストップ!少しだけ、円筒部と接合部がズレている!もう少し離れてくれ!……そうだ。そこから微調整……ちょい右上、もうちょい……よし!接合部、入った!」
合体完了!
これで、ガレリアとフロンティアは、見かけ上、1つの超超巨大宇宙船となった。
ちなみに形の大まかなものを表すと、
♂
これに近い。
まあ結果論であるのだが。
もしも、本当に身長1万メートルなんて生命体で人型がいるのなら、この宇宙船は武器だと思われるだろうな(笑)
ということで無事に宇宙船2隻は合体工事が完了した。
「マスター、ところで、この宇宙船の名前、どうします?」
「そうだ、主。今までのようなフロンティアとかガレリアとかの個体名ではダメだろうから、新しい名前が欲しいな」
うわ、そうだった!
か、考えていなかったわけじゃないぞ……
どうしようか……




