もうひとつのフロンティア その5
毎度毎度のお楽しみ(笑)
起承転結の「転」です。
俺達一行は、まだ宇宙船ガレリアの見学中。
「フロンティア、あなたにとっても参考になりませんか、この船の装備は」
プロフェッサーがフロンティアに語りかける。
珍しいな、こんな場面。
普段のプロフェッサーなら、違いは違いとして認識するだけでアドバイスのようなことはしないのに。
「ええ、私の救助装備に足りないものがあると言いたいのでしょう?プロフェッサー。もう、一目見た時から理解してますよ」
おや?フロンティアも理解済みとは。
「フロンティア、聞かせてもらっていいかな、その、今のフロンティアの救助装備に足りないもの」
俺も興味が湧いてきた。
実際、宇宙震の現場にて不要な装備はないと思えるくらい、フロンティアの救助装備は充実している。
今の装備で足りないものは、ちょっと思いつかないほどである。
「マスター、お答えします。ドリルに関連する地中装備ですよ。私の現在の救助装備は例えば土砂災害でも浅い箇所なら対処できますが、地下数十m以上の深さですと対処不能です。ガレリアには救助用の地中装備になる設備がありますので、これを参考にすれば鉱山や地中での遭難、あるいは地下都市の災害にも対処できるようになりますね」
そういう事か。
「しかし、ドリルを装備すると言っても大変じゃないのか?救助用機材とガレリアの資源探査用機材とは全くと言っても良いほど思想が違うぞ。生命体を探す地中用装備など聞いたこともない」
俺の疑問にガレリアが答える。
「それなら解決できると思う。幸い私の地中探査用装備は少し改造すれば救助用装備に転換できるはずだ。詳しい性能評価や改造箇所はフロンティアと相談しなければいけないが、大丈夫だと思う」
すごいな、やはりフロンティアの同族船だけのことはある。
「では、ガレリア、フロンティア。早速ですが地中災害のための救助用装備について、ご相談したく」
プロフェッサーがうながす。
「しかし、一つだけ問題がある。今、私の装備は、ほんの一部しか動作承認されていないため、私自身でも動作させることが出来ない。仮でもいいから主を持たないと、その設備動作の承認も出せないのだ」
ガレリアが、ちょっと悔しそうに言う。
そうか、フロンティアの場合は、最初、これほどの装備は持っていなかったため、俺とのコンタクト時にも最小のエネルギーだけで大丈夫だったが、ガレリアの場合は装備を持ったままだからな。
自分の装備が自分じゃ動かせないとは、手足を縛られたまま泳げと言われるようなものだろう。
どうしたら良いものか?
と、俺が考えていると、プロフェッサーが、
「良い提案が有りますよ、ガレリア。まあ、フロンティアの承諾も得なきゃいけないので、2人、2隻ですか?で、ご相談という事になるかとは思いますが……」
プロフェッサーが、こんな切り出し方をするということは、良い提案ではなく何か企んでいる時である。
伊達に長年、一緒に行動してるわけじゃない。
ロボットやアンドロイドとは言え少しづつ違う考え方や性格があることは理解してるからな、俺も。
「何でしょうか、提案とは。マスターを譲ることは無理ですが、それ以外なら多少の力はお貸しできると思いますが」
「提案とは何だ?プロフェッサー。私の主に関することだよな、それは」
フロンティアもガレリアも、けっこう興味津々の様子。
提案というか悪巧みというか、プロフェッサーの爆弾発言が飛び出すのは次の瞬間だった。
「何、簡単なことです。フロンティアとガレリア、別々の宇宙船と見るから、マスターや主が、それぞれに必要になるのです。でしたら、フロンティアとガレリアを1つにしてしまえば良いではありませんか」
「「「な、なんだと?何を言い出すんだ、プロフェッサー?!」」」
思わずユニゾンしてしまったではないか!
こんな巨大宇宙船、どうやって1つにしろと?!
何を言いたいんだ、プロフェッサー!
プロフェッサーの爆弾発言!
その趣旨は?
待て次回!(笑)




