惑星間航行の日常 圧縮空間ゲートを抜ける
小惑星帯抜けます。
後は木星へ飛ぶだけ!
なんだけど……
数日後、ようやく真っ暗な空間から、星が見える空間へ。
圧縮空間ゲートを抜けたわけ。
公式通信でゲート管理局と、無事に抜けられたことを報告し目的地は木星であることも告げる。
まだゲート管制宙域であるから帆の展開は出来ないが、いつでも出来るように準備だけはしておくよう、プロフェッサーに告げる。
ちなみにゲート通過時に訓練してたESPやサイコキネシスは順調に能力が伸びていた(とは言えテレパシー以外は、ぱっとしなかった。サイコキネシスに関しては伸びも小さい……受動的エスパーのようだな、俺のタイプは。能動的なサイキッカーのように手も触れずに物を動かすのは、まだまだのようだ)
いっそ脳解放抑制メガネを外せばいいのだろうが、そうすると食料が一気に無くなってしまい、生命の危険に直結するので、宇宙空間で、そんなことはご法度。
もやもやしながらも、どうにかゲート管制宙域を脱したため、帆を展開し……
ようとしたら公式通信じゃないチャネルで通信が入る。
こんな宙域で何を?
と思い、応答する。
「はい、こちら宇宙ヨット0111。そちらの船籍と登録ナンバーを示せ。オーバ」
「こちら、未登録船。いわゆる宇宙海賊だよ。停船せよ、オーバ」
ほほう。
この時代に宇宙海賊。
しかしね……
「宇宙海賊、了解した。しかしな、こちらは宇宙ヨットだ。おいそれとは停船できないんだよ、構造上。そちらの位置は確認した。とても、こちらに追いつける速度と位置じゃないのは分かっている。ではな、あばよ!」
通信を切り、プロフェッサーに帆を展開させる。
今までの速度に更に帆を展開したため速度が乗る。
とてもじゃないが、旧式なイオンエンジンの加速力では、この宇宙ヨットに追いつけるわけがないと俺の現在の計算力でも理解できる。
出口を見張ってて、こっちがゲートの管制宙域を出るのを待ってたんだろうが、まさか宇宙ヨットだとは思いもしなかったんだろうな。
通常は大型や中型船だから向こうのエンジンでも充分に追いついて獲物に出来るんだろうが、どっこい向こうより小さくて加速力もゲートを抜けた速度そのものも違いすぎる相手に通用する戦法じゃない。
とはいえ帰りはどうするか考えないと。
こちとら加速力と小ささで勝ってるだけで武器なんか全く装備してないんだ。
あー、こんな時、※※ロックや***シマックのようなコミックヒーローじみたエスパー(能動的サイキッカーでも特S級の、それこそ単体で宇宙戦艦を中心とした艦隊すら相手に出来る化物達)だったらなぁ……とは思うが。
それよりも目的地へ到達するのが肝心。
俺は公式通信にて向かう先の職場である木星へ連絡入れる。
到着予定日時と、それに伴うストッピングパワーが必要なこと、そして、こちらの予定コースをデータで入れておく。
まあ、木星クラスの基地でストッピングパワー用レーザーが使用できないことはあるまいが、もしかしてもしかするかも知れないから、こちらでも自力停止出来るだけのパワーの余力があることだけは確認しておく。
宇宙ヨットは、その間も、木星まで文字通り「すっ飛んで」いくのだった……