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聖地へ来た! M87星雲 その十四 最終話

最終話です。

その後の話は、この次に書きますね。


我々は太古の昔より邪神と呼ばれて恐怖の対象となっていた。


我々が世に出ると決まって我々を目にする生命体たちは、恐怖にかられて逃げ出したり、恐怖のあまり狂ったり、恐怖に耐性を持つ生命体にあっては我々に攻撃をしかけて一部の眷属や下僕達は殺戮されたりした。

さすがに我々の上位種にある者達は実体がない者達が多いため、そのような虐殺からは逃げ延びたが、それでも相互にコミュニケーションが取れない状態では、お互いが相手を知性体と認識していなかった悲惨な事実があるため双方が相手を大量虐殺しても良心の呵責をおぼえなかったという哀しい事実が続いていた。


いつしか我々の上位種の一部には果て無き争いの果てに双方が絶滅する未来が見えたのであろう、圧倒的な力を持つが繁殖力が無いに等しい我々に対し、この宇宙の生命体たちは、か弱いが繁殖力に置いて遥かに我々を凌駕するものだと判断し我々全ての異次元生命体に対し、はるかな未来に、この宇宙に生まれた生命体たちとのコミュニケーションが成立することを願い永久に近い眠りに付くことを命令する。


遥かな願いであり、ささやかな願いであり、かなわぬ願いであった……

たった一人の、この銀河の生まれではない生命体……

我々に比べて、あまりに弱く、あまりに小さく、あまりに未熟と考えられた生命体の、後で聞いたら命を削るが如き挑戦の賜物として奇跡が起きるまでは。


我々の、上位種ではないにしても中位の下くらいの力を持つもの、永久の眠りについて数億年、世界に対して関心すら失っていた同族に対し、その特異な生命体は、その眠りから彼を叩き起こし怯むような気持ちもなく、その小さな身体からは信じられぬテレパシー能力を発揮し、我々異次元生命体との歴史始まって以来のコミュニケーションを成立させる。


怪物と呼ばれ邪神と呼ばれ、畏怖と恐怖の塊、宇宙の恐ろしさの実現化、様々な名称が我々につけられていた。

それもこれも相互コミュニケーションが全くと行っていいほどに成立しなかったからである。


しかし、この小さき生命体の挑戦により太古からの悲願が達成された。

小さきものの説明によると、我々と、この宇宙の生命体との思考の次元が違いすぎて小さきものの以前に挑戦した者達の脳が、いわゆる焼き切れた状態になってしまい失敗したのだそうだ。


過去に挑戦した勇者たちには敬意を表する。

と共に、この小さきものの存在がなければ、そして、この小さきものが銀河と銀河の遥かな宇宙空間を跳んで、この星系、この星へと来ていなければ未だに我々は果てなき夢の旅路をたどっていたことだろうと考えると、この世に我々を超える存在、いわゆる「神」の存在を確信するのだ。


この小さきもの、優秀な技術者でもあるようで我らと人類(この星を支配する生命体の種の名前)の会話を仲介する装置を作り上げてくれた。

これがあれば、ささやかな誤解はあるにせよ、お互いの殲滅戦などという愚かしい行為は避けられるだろう。


ちなみに人類との共存と友好を望まぬ者達も我が同胞の中にいる。

哀しいことだが事実である。

彼らの主張は、人類を含む、この宇宙の生命体は我々の奴隷となるべきであり、劣っている種である。

よって共存ではなく支配者として我々が宇宙を制覇すべきだと声高に叫ぶ。


馬鹿な、愚かな。

我々の繁殖力は非常に低い。

その代わり、下位の同胞は死ぬこともあるが中位以上は、ほとんど不死である。


そんな我らが、この無限の宇宙を支配し制覇する?

無理難題を言っていることが彼らには分かっていない。


宇宙の一部は確かに制覇できるだろう。

そのまた一部は支配できるかも知れない。


しかし、それからどうする?

未来永劫、支配し続けるなどという愚かな事が可能だなどと考える時点で彼らは狂っている。

だから友好同盟を締結した人類に、こちらから提案する。


「我らの眠りを覚ますために撤去した呪術具を、こちらの過激派の眠りを深くするために使って欲しい」


と。

この提案は実行され過激派の暗躍は影を潜めた(それまでは強力なテレパシーで眠りの中からも邪教信者や狂った科学者や芸術家などに影響を与えていたのだが、呪術具が増やされたことにより、その活動も低下して完全な眠りについたようだ)


現在、我々は人里離れた場所に隔離され一般の人類とは隔絶された場所にいる。

まあ、分からないでもない。

つい最近まで邪神やら怪物やらと呼ばれていた存在が実は知的生命体であり人類と友好関係を結んだ、などと言われてもハイそうですかと納得できるものではない。


これは我が方の過激派と同じようなものだ。

今までの常識を覆すような発表をしても信じるものは少ないだろう。


まあ、気長にやるさ。

数億年の眠りに比べれば数十年や数百年など一瞬だ。


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