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聖地へ来た! M87星雲 その六

クトゥルー神話みたくなってきましたが、これはスペースオペラです(笑)

宇宙を駆け巡るお話が好きな方、もうしばらくお待ちください。

まあ、あれもコズミック・ホラー(宇宙規模の恐怖)と呼ばれてましたっけ(笑)


あの、地下の巨大なる穴の中から逃げ帰ってきた日より我々、地下遺跡探検隊の者達に奇妙な事態が起こっていた。


日常的には何ら問題はないのだが夜、就寝時に悪夢を見るようになった。

飛び起きても朝の目覚め後にも何も夢の内容は憶えていないのだが、とにかく悪夢には違いない。


しばらくは各々の個人的なトラウマかと思われたのだが地下探検に行った者すべてが、その後に悪夢を見るというのは、ただごとではないと思われた。

私は、これは由々しき事態と考えて、この建物と遺跡の主である提督に報告する。


「ほぅ、それで毎日のように悪夢を見ると。しかし、その夢の内容を誰も憶えてないというのは、おかしいな」


提督が、かなり考えてから言葉を出す。


「そうなんです。おかしなことは、まだありまして……悪夢の内容を誰も憶えてないにも関わらず全員が残り時間が少ないと思っているようなんです」


私は報告に付け足す。

そうなのだ、あれから全員の心理テストを行った結果、ある一定の焦りがあるとのこと。

その焦りの内容を詳細に聞き取り試験したところ、全員が大なり小なり何かの時間がないと焦っていることがわかった。


「これは……いや、まだ決めつけをする段階ではないな。ともかく、ここにいるから悪夢が襲ってくるのかも知れない。数人、ここから離れた場所へ一時でも離れさせよう。そうすれば、この遺跡に原因があるかないか分かるだろう」


提督の薦めに従い、数人ここから離れた場所へ移す。

実験を兼ねているので一人ひとりの移された場所は違う。

比較的、遺跡から近い場所や、ここから数100km以上離れている場所や、海をわたって違う大陸へ移した者もいる。


一週間後、移動した者達が悪夢を見るかどうかの結果が送られてくる。

まとめた物をレポートとしてみたが遺跡から遠くなるほどに悪夢は薄れていくようだ。


ちなみに私だが未だに悪夢に悩まされている。

とは言え、まだ体力も精神力も衰えるほどではない。


「ふむふむ、これを見る限り、悪夢の原因は遺跡だね。直接な原因を推測するならば君たちが帰りに聞いた、ある音。具体的に言うなら、その音のぬしが悪夢の原因だろうよ」


提督は断定するように言っているが、これで断定などできるわけがない。

微かではあるが我々は、あの音を確かに聞いた。

今から思えば、あまりに深い闇を覗いたための幻聴であったのかも知れない。


「提督、これで穴の底に何か居ると考えるのは早計ではないですか?そもそも、あの微かな音そのものが幻聴であった可能性も捨て切れませんよ」


私は提督に忠告する。

しかし提督は、


「そんなことはあるまい。音は、あの時、地下の大穴にいた全ての人間が聞いているのだ。それに遺跡や横穴に植物以外の生命体がいなかったのも気にかかる」


ここで私は気がついた。

提督は何かを知っている!

我々、ここにいる研究者たちが知らない情報と知識を、この目の前に居る男は知っているのだ。


それが何かは、まだ分からない。

推測も出来ない。

しかし遺跡の中に植物以外の生物がいなかったこととの関連性、穴のそこからの微かな音の報告を聞いた時の即時撤退の命令、そしてレポートを読んだ後の奇妙な発言。

科学者の発言とは思えぬ奇妙な断定発言。

これは何を示す?

分からない。

私には、さっぱりわからない!


「提督、ずばり聞きます。貴方はいったい何をご存知なのですか?」


もう格好つけてる場合じゃない。

失礼に当たるかも知れないが単刀直入に聞かせてもらおう。


「うむ、気がついたか。君は天才レベルの切れる頭脳を持っているようだな。しかし惜しい!今の境遇からだったら私の伝手で有名国立大学や著名な博物館の研究室にも入れてあげることが可能だ。しかし秘密を聞いてしまったら君は陽の下を歩けなくなる」


「待ってください。私は名誉や資金を要らないとは言いませんが少なくとも自分は現場へ出向いて遺跡や遺構、化石などを回収・保護するほうが好きです。何を聞いても覚悟はできています」


私の事を気遣ってくれるような提督の言葉。

しかし、いまさら遅い。

私にも意地がある、その意地にかけて、この妙な悪夢など些細な事だと告げる予感がする。

予感は当たった。

しかも悪い方に……


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