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聖地へ来た! M87星雲 その五

なんだか、恐怖短編のような展開になってきましたが、これはスペースオペラです(笑)

もうしばらくは地上と地下での描写が続きますが、我慢して下さいませ。

作者は、スペースオペラを忘れたわけじゃありません(笑)


我々は横穴を通信が届く限り進んでみた。


鉱物と若干の植物は見つけたが(洞窟に生息するような植物たちだ。これはこれで大発見には違いない、おそらく新種ばかりだから)

ほとんど、いや全くと言っていいほどに生物・動物とは出会わない。


これはおかしい。

植物のある地点なら他の生物(虫やイモリやカエルのような小動物とか)がいるはずだし、それがいないことがおかしい。

まあ、どこかのペーパーバックのように洞窟内に原始時代の植物や恐竜がいる、とかいう話じゃないのは科学的だが。


一応、横穴の限界点を目指して歩いて行く。

果たして次の日の昼ごろ(時計を持ってきて正解だった。時間の感覚がわからないからな、地下だと)になると我々は大きな湖に到着する。


この水は砂漠が緑に覆われていた頃の太古に降った雨水が地中に染みこんで造られた地下の巨大湖だろう。

通常は地下にも水路があるため河のように地下水路が流れているのだが周辺の地盤が固かったのか、太古の雨水が貯められたまま湖水になったと思われる。


一応、水質検査キットも持ってきていたため様々な水質試験を行うが、汚れのない澄んだ水だと分かっただけだった。

これは人間が飲んでも害はない。


あるいは、何か生物がいるか?

とも思ったのだが、やはり岸の周辺に少々の植物が見られるばかりで、他に生物は見られない。


投光機の一番大型のものを数台用意して反対側の岸を照らしてみると、やはりというか光る石の反射が見られる。

水の流れも全くないので、これは行き止まりだな。


探検隊は穴まで引き返すことにした。

食料は、まだまだあるし、水は、この湖で補給したし、余裕で探検が続けられる。


有線電話(無線は湖までは届かなかった。まあ障害物が多いから当たり前だが)を使い、提督に連絡する。


「提督、湖を見つけました。地底湖ですが、やはり生物は見つかりません。少々の植物が見られるだけです。横穴は、この湖で終わりのようで湖水に流れはありませんので我々は穴まで戻ります」


報告を終えると提督から返事が来る。


「ご苦労様。地底湖の発見は貴重だな、それと地底の植物も。できれば地底湖の水と地底植物のサンプルが欲しい。土付き根付きで採取してくれないか?」


二つ返事で了承する。戻る途中で植物サンプルと土壌サンプルを採取していく。


2日かけて横穴の端に到着する。簡易エレベータは、これ以上、降下できない。


地上へ戻ることを提案し全員の賛成を得る。

ふと思いついて巨大なる竪穴の土壌サンプルも採取しておこうと考える。


横穴で採取したサンプルよりも岩盤が固いので苦労したが何とか採取に成功する。

我々は暗闇の中、簡易エレベータを上昇モードに切り替えて地上へ戻る道すがら、穴の周辺を観察することにする。


ふと気づく。降りる時には完全なる静寂だった竪穴に、かすかだが何かの音が聞こえる。


この発見を他の研究者たちに話すと皆、注意深く音を聞き、確かに、微かではあるが何かの音が聞こえると言い出す。

私は、とりあえず提督に報告しようと無線電話のスイッチを入れる。


「提督、新発見です!下降時には静寂そのものでしたが、上昇している現在、何か微かな音が聞こえます!穴の底の生物の音かも知れません」


提督の返事は予想を裏切るものだった。


「そうか……今はともかく君たちの生命を一番に考えよう。エレベータの上昇速度を最大にしたまえ。そして穴の最上部に辿り着いたら何も考えずに地上目指して上がって来なさい。いいか、できればサンプルは欲しいが君たちの生命が一番だ。最悪サンプルも機材も放り出して構わん!」


何なんだ、この提督の焦ったような命令は。

ともかく我々はエレベータの上昇速度を最大に切替え、下降時の数倍の速度で上昇していった。


しばらくしてエレベータが停止。最上部に着いたようだ。


我々は素早くエレベータから降りて、エレベータの電源を切る。

その後、荷物も必要なものを選択し最大限に減らした軽い荷物で地上を目指す。


穴を蓋している近代部分の遺跡にたどり着く寸前、私は気づいた。気付いてしまった……

エレベータで聞いた微かな音が、未だに小さいけれど確かに大きくなっている事に。


我々は何かに追われるように、その音から一目散に離れて安心な地上に出たいと願いながら、できるだけ早足で遺跡を地上目指して上っていく。

あの穴の蓋から、もう数10m以上、ビルで言うと10階分以上は上っているにも関わらず、あの音が自分たちのすぐ足元まで迫ってくるようで我々は恐怖にかられていた。

数時間後に地上の光が見えた時、我々はへたばってしまっていた。


驚いたことに探検隊の出発地点に提督が迎えに出ていた。

提督はホッとひと安心したように表情を緩ませると、我々を労ってくれた。


私は大事な土壌サンプルと水サンプル(水筒の水だが)植物サンプルを提督に渡すと自分の部屋に行こうとして……

竪穴の土壌サンプルも採取したことを忘れていたので、それも提督へ渡す。


「ありがとう。しかし、君たちの命が大事だ。サンプルなど捨ててくれても良かったのだぞ」


提督は言うが、喜びは隠せない。


「いいえ、サンプルがなければ、この探検行の意味が無くなります。これを持ち帰ることにより地下遺跡の謎に迫れるかも知れません」


私の言葉に、うむ、と頷く提督。


「では、このサンプルを至急、調査解析班に回そう。ご苦労だった、しばらく休息を取り給え」


提督に言われて自分の部屋へ戻るが、寝付こうとしても、あの微かな音が耳について離れない。

あんな音は生まれて初めて聞く。

どんな生物、あるいは生命体が立てる音なのだろうか?

興味と、微かだが「恐怖」も感じる。

その夜は何とも言いがたい悪夢にうなされ、何度もベッドから飛び起きた。


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