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銀河のプロムナード 誤植でも聖地 銀河間空間のひとコマ

どうしても入れたかったネタです。

ただし、M78星雲に立ち寄る理由が、どうしても見つからなかったため、このように一話完結の話になりました。


俺は、今、ある種の感動と幻滅を感じている。まあ、それも当然だとは言える。

ある程度は分かっていながら、こんな貧相な銀河へやってきたのだから……


それは数週間前のこと。


「フロンティア、ちょいと寄って欲しい銀河、つーか、星雲があるんだけどね」


俺は関心が有りそうな、でも行きたく無さそうな。

つまりは「お化け屋敷と噂される廃屋へ行ってみないか?」というような気分で話しかけていた。


「おや?マスター、いつもは、どこの星雲・銀河でも良いからトラブルに巻き込まれてる所へ行けーっ!とばかりに積極的なマスターの言葉とも思えないですね」


「いや、行きたいことは行きたいんだが行くと夢が壊れそうな予感がしてな。消極的な提案というか何と言うか……」


「何を辛気臭い発言してるんですか、我が主。いつもは、もっと積極的でしょうが」


「い、いや、行きたいんだよ行きたいんだ。でもなー、行けば確実に子供の頃の夢が壊れるような……」


「ご主人様!何ですか、その行きたいけど行きたくないってのは!どっちなんですか?!」


「キャプテン、私も、この度のキャプテンの発言は女々しいと思います」


うー、みんなで、よってたかって俺をイジメるー。理由はあるんだけど言いたくないんだよー。


「「「「さあ、目的地は何処なんですか?!」」」」


ううう、プレッシャーがプレッシャーが!


「あのな…M78せいうん(ぼそぼそとした小声)」


「「「「はい?!もっと大きな声で!」」」」


「分かったよ、分かりました!行きたいのはM78星雲だ!」


「はい?M78星雲?同じような名前のM87では無く?」


それを言われるとなー、萎えるんだよ、気持ちがなー。


「そうだよ、特徴バリバリのM87星雲じゃなくて、何の変哲もないM78星雲です!俺だって、できることなら早くM87星雲に行ってみたいさ。でも、その前に絶対にM78星雲は寄らなくちゃ行けないの!」


「マスター、ムキにならなくても大丈夫ですよ。しかしまた、何故にあのような、特徴もなければ影も薄いM78星雲などに?」


「あの……な。昔のビブリオファイルでウルトラシリーズってのがあって、だな」


「はいはい、ありましたね、キャプテン。私は某ライダーシリーズが好きですが」


「それにウルトラマンから続くシリーズがあって、だな……」


「はい、ありましたね、ご主人様。着ぐるみ特撮シリーズでも古株の物語が」


「その設定に……だぁーッ!もう落ち込んでるの止め!普通に戻る!ともかく、そのシリーズの設定が宇宙から来た正義の巨人の故郷はM78星雲ってことだったんだ」


「なんと、マニアックな設定ですな、我が主。普通は、もっとエネルギッシュな特徴のある星雲や銀河にするでしょう。こんな、言ってみれば何の特徴もない貧相な星雲が故郷とは」


「いや、それがな。後で調べてわかったことなんだが、本当の設定はM87星雲が故郷だった。M78になったのは台本を印刷した業者が、M87とM78を間違えてしまったせいなんだと」


「ほう、誤植で印刷された台本が本番で使われてしまい、その設定が定着してしまったと。それは歴史に残る悲惨さではありませんか、マスター」


「だから。だから一目見るだけで良いから間違った設定の星雲も見ておきたいんだよ。まあ本命はM87星雲なんだ」


「マスター、分かりました。ではM87星雲が本来の目標ではありますが、途中、M78星雲にも立ち寄りましょう」


「おお、分かってくれたか!さすが、フロンティア」


「ま、このくらいのワガママなら、おちゃのこサイサイです。銀河団を超える本来の任務に比べたら小さなことです」


「なーんか、ちょいと悪意を感じないでもないが……ありがたい。じゃ、それで目標設定頼む」


という毎度毎度のやりとりがありつつも、今、俺は複雑な心境で目の前の銀河を眺めている……

ここが、どこかって?

はい、予想通りM78星雲が目の前にドデーン!と巨大な姿を見せてます。


それにしても、現実は残酷だ……

いくら誤植の産物とは言え子供の頃に胸を熱くさせた特撮ドラマの宇宙から来た巨人の故郷が、こんな貧相な、特徴のない、いわゆる「暗い銀河」だとは。俺は諦念と決別の心境で目の前の星雲を眺めている……


「マスター、念の為、搭載艇群を放って調査させましたが、この銀河にめぼしい文明や生命体はいませんね。銀河自体にエネルギーが少ないと、こうも星系の発展が遅くなるのでしょうか。まさに、星は生きている、銀河は生きている、その見本ですね」


「フロンティア、見飽きたよ。そろそろ、本命へと出発しようか」


「はい、マスター。では、24時間後に出発するようコースを設定し、資源回収搭載艇群を呼び戻します。出発準備ができ次第、マスターに連絡を入れます」


「ああ、頼むな。俺は自室にいるよ。ビブリオファイルの見直しだ」


立ち寄った場所が悪かったかな?今日は気分がすぐれない。

まあ実際に聖地巡礼を星雲単位でやる人間が出てこようとは脚本家も予想しなかったとは思う

が……

現実は空想を超える、か……俺は何とも知れぬもやもやを抱きながら自室へ戻った。

ま、これも宇宙時代のひとコマだな。


数日後には憧れのM87星雲へいく楽しみでいっぱいの俺がいた……


今日も宇宙は平和である。


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