古いロボットとは呼ばせねえ! 8 その後
古いロボットとは呼ばせねえ!
これにて完結です。
さて、次は、何処へ行こうかな?
ここが、最後の戦場だと悟ったのか、普段は戦場には全く出てこない「女王」が登場した。
その大きさ、優に100m超え。巨大ロボットすらかすむ。
(身長57mも、かたなし)
武装としては特に何もないようだが、その巨大さだけで武器になる。
機動兵器隊も、なすすべがない。
(身長3mも無い機動兵器で、どうしろと?)
どんな兵装で攻撃したって、焼け石に水。
相手が動くだけで地震が起きるのだから、どうしようもない。
下手に倒してしまったら巨大地震発生である。
女王は、己の最期を知っているかのごとく暴れる。
働きアリも兵隊アリも精鋭アリも、お構いなし。
全てを踏みつぶして、戦場は都市に迫る。
「くっそー!俺達のロボットさえ使えれば……」
「無駄ですよ、無駄。相手が巨大すぎますって。それこそ、素手で振り回しただけで、僕らのロボットなんて潰されます」
「ロボットヒューマン隊でも、さすがにあれは相手にできんな。もう、これで最期か……」
そこに、一筋の光が差し込む!
強烈なテレパシーが全員の脳内に響き渡る。
《よく頑張ったな、星の民達。最期の仕上げは、こちらにまかせろ!》
空を見上げれば、月かと見まごうばかりの巨大なる衛星クラスの星が鎮座している。
こんな光景は、もう夢物語か?
空を見上げる全員が、そう思った。
よくよく見れば、あの巨大なる「女王」すらも、もう一つの月とも言える星を見上げている。
観察していると、もう女王に侵略する気力は無さそうだ。
複眼でよくわからないが、何かを諦めたような顔つきである。
いや、何かを悟ったのか?
「ギ、ギギー、ギギギ」
もう、諦めはついた。
運命を受け入れる、と言っているような表情である。
巨大なる星は、攻撃をためらっているような、何かを待っているような、そんな時間が流れる……
そこへ、一隻の単座宇宙船が飛び込んでくる!
その宇宙船は、女王と、巨大衛星の間に入り、攻撃を阻止しようと動く!
宇宙船から、天使のような宇宙人が現れ、巨大衛星に呼びかける。
「私は、この「女王」と呼ばれる生命体を、違法だと理解しながらも、研究所から持ちだして孵化させてしまった研究者です!お願いです、宇宙船フロンティアのクルーたち。女王への攻撃は止めて下さい!」
《今、攻撃しないと、この危険生命体は貴方の星まで食いつくすかも知れませんよ?それでも庇いますか?自分の命だけでなく、この銀河の全ての生命にとっての緊急問題になっているのに?》
「はい、それでも、です。私は個人の探究欲・名誉欲に負けて、この生命体を産みだしてしまいました。その責任は全て私に有ります。こいつに責任はありません、そして、こいつは恐怖と同族が失われる哀しみに目覚めました。もう簡単な会話までこなそうとしています。フロンティアよ、これでも、こいつを危険生命体と呼びますか?銀河の危機だとして葬り去りますか?」
《検討に値する問題だと思います。が、我々だけでは判断しかねますので、こちらへ女王ともども収容します。主張は貴方の星で》
「あ、ありがとう!フロンティア、ありがとう!」
「ギ、ギギギギギギ」
女王も、この場での破滅はないと悟ったのだろう。
深く礼拝するように、フロンティアを拝む。
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あの大破壊と抵抗との日々から、はや数十年。
今、この銀河は開発ラッシュに湧いていた。
研究者と女王(最初の実験体だと分かり、特別に死刑は免れた)は、この銀河を破滅一歩手前に導いたことを償わせるために、群体生命としての特色を活かした罪滅ぼしをすることとなった。
女王は働きアリと兵隊アリを生み出す許可を得ると、処理不能の廃棄物を食料として(放射性廃棄物だろうが猛毒性の廃棄物だろうが、この生命体にはエネルギー源でしか無い。毒物などで体調は変化しない)配下を産みだし始める。
それを次々と教育機械にかけて一般常識と教養、会話などが可能なレベルに知能を引き上げていく。
もちろん女王も知能を引き上げられ、もう会話などはスムーズにこなせる状態である。
自己判断が可能なレベルまで知能が上がったら女王より担当の星を指示されて、その星の開発作業に向かう。
その作業を行うことにより女王が認められるのであれば、群体としての行動により、その作業に従事するのが働きアリや兵隊アリの役目。
もちろん作業現場では女王からの指示もないため、自己判断に任せられる。
面白いことに、兵隊アリ1体に対し働きアリ5体がグループとなって行動していく。
誰に教えられてもいないのに自然と、そうなる。
作業効率も、もちろん、グループ単位のほうが上。
グループに対して作業指示とか変更は担当者が行うが、それ以外のルーチンワークになると何もしなくても作業割り当てが決まるようで現場からも好評だとのこと。
人間が居住可能な星に関しては短時間で開発が終了してしまったため、女王と博士(当の研究者だが女王の親と認識されているために人間と群体生命体との橋渡し役となり、博士となった)に相談すると、
「おや?まだまだ我々が働ける星は、いっぱいあると思いますが?」
「そうだな。完全生命体に近いんだから、極寒や高熱など邪魔にならんだろう。それこそ太陽表面でもない限り大丈夫なはずだな」
という提案により、地表温度500度や地表温度ー260度というような太陽から最遠の星までが開発対象になり、莫大な資源が約束される。
こんな話、耳に入ったら誰でも飛びつくだろう。
「うちの星でも群体生命体に来てもらえないだろうか」
とか
「開発を諦めていた星が救われる!是非とも群体生命体に来て欲しい!」
というリクエストが入るのは時間の問題だった。
そして再び時間は数十年、遡る。
「よっし!これで、この問題は片付いたな。まあ、この銀河は技術も科学も進んでいるんで、あえて宇宙救助隊の事は話さなくていいだろう。今回のことで星系同士が手を取り合わないと大変なことになると身を持って知ったんだから、この銀河の統一機関ができるのも時間の問題だろうし」
「マスター、感謝と歓迎のパレードに来て欲しいって通信が、とてつもない量で来てるんですが……無視ですか?」
「異星人、異銀河の者が表に立たないほうが良いんだよ。勇者なんて不要さ。そんなものに頼ってちゃ、いつまで経っても依存心は無くならないぞ」
「はあ、そんなもんですかね?」
「本音を言うと……面倒くさい!さっさと次の銀河へ行くぞ!スタコラサッサと逃げるんだ」
「それが本音ですか、我が主……まぁ、いつものことですが貴方って人は……」
「いいんだよ、それで。この銀河は、この銀河の人たちが守るべきなんだから。ほれ、目標は、あの銀河だ!」
今日も宇宙は平和である。
ps、この銀河が、アンドロメダ・銀河系連合評議会の目に止まるのは、それから数百年後。
この銀河の宇宙船が宇宙嵐に遭い、アンドロメダに流されたことで発見されるのだが、それはまた別の話。




