フロンティア、試しを受ける その2
今回、SFとしての制限は取っ払ってます。
(神に値しうる存在が出てきた時点で、SFであることは放棄します)
ということで、よろしく(笑)
ここ、どこだ?俺は、不思議な感覚をおぼえていた。
何か、見たことのあるような無いような、それでいて、本能の奥底に訴えかけてくるような……
〜 まずは、リーダーのお主からじゃ。良いか、力で解決しようとするのは愚の骨頂じゃ。それを忘れるなよ 〜
夢で聞いた声だな。やっぱり、あれは普通の夢じゃなかったか。
俺は自分の周辺を確認する。草原というか、原っぱというか。
ぐるっと見渡しても、人影が見えない。しかし、俺は感じ取っていた。
あちこちに、人の気配と思考がある。上手く隠してるつもりだろうが、テレパスでサイキッカーの俺にはお見通しだ。
殺気が、ぐぐっと膨らむ。仕掛けてくるな……と感じた瞬間!
「!!!」
声にならない程の小さい叫びで、隠れている全てが苦痛を示す。
暴力はいけないと言われているが、襲われるのが分かっているのに抵抗しないのはバカと自殺志願者だけだろう。
隠れている地面の小石をサイコキネシスで浮かせ、弁慶の泣き所にぶつけてやったのだ。
痛みでこらえ切れなくなったか、数人が飛び出てきた。
スネの一番痛さを感じるところに、こぶしより少し小さな石をぶつけてやったら無理もないか。
「こいつ、何か妖しげな術を使うぞ!」
「何者だ?!ここいらじゃ、見たこともない服装しとるぞ!」
「ともかく、捕らえろ!まずは捕らえて、お館様の所へ連れて行くのじゃ!」
はい?お館様?俺は、お館様と呼ばれる人間を知っている。
子供の頃、昔の歴史ということで習った憶えがある。しかし、まさか?
言葉も、俺からすれば古めかしい言葉遣いだ。
こうやって文章に直すと平板だが、かなり訛りも入っている。
それにしても不可解だ。宇宙における定数、いわゆる時間定数は、過去へ行くことを不可能としている。
今までの例外は、球状生命体の祖先たちだけだろう。
俺の予想が当たっているなら、ここは、俺の種族、いわゆる「日本人」が大昔に戦い合って領地を奪い合い、日本を征服して統一しようとしていた頃の日本列島だ……
それにしても、お館様が、何処の誰かによって対応は変わるな。
激動の一生をおくった奴でないことを祈るだけだが……ここまで考えた俺は、抵抗せず大人しく捕まることにした。
捕らえろというからには、殺されることもあるまい。
まあ、殺そうとしてきたって武田騎馬軍団くらいでは俺は殺されんがね。
俺は両手を上げて、抵抗の意思のないことを告げる。
「俺はお前たちに抵抗するつもりはない。さっさと、お館様という人のところへ連れて行け。俺は、その人に会わねばならんのだ」
俺の宣言にも関わらず、簀巻き状態にされた俺は、戸板に乗せられ、とある豪奢な武家の家に連れてこられる。ちなみに所持品も検査されたが、服は宇宙服仕様で頑丈だし、所持品も別に無かったため、そのままの格好だ。
「親方様ぁ!あやしい奴をひっ捕らえてめーりやした。こいつが、お館様に会わせろっつーんで簀巻きにして身動きできんようにして持ってきやした!」
さて、誰が出てくるのかいな、と。しばらく待っていると、こりゃまた貧相な小男が出てきた。
あれ?こいつの顔、見た記憶があるぞ?
「こりゃ、おめーら。せっかく殿様が奥方とえーかんじになっとるのに、庭先をさわがせたら、だちかんぞ!御勘気に触れたら切り捨てられるぞ、こりゃ!」
あ、思い出した。
「木下藤吉郎殿ではないかな?」
興味が出たので聞いてみた。小男のおどろいた顔、いやー、あれは見ものだった。
「わしなんぞ、殿づけせんでもええぎゃ。お前さん、見たところ間者ではなさそうだの。そんな目立つ服装の間者なんぞ、わしゃ見たことねーわ」
さもあらん、宇宙服だからね、これ。地上で着てたら目立つ目立つ!
「ということは、この屋敷は織田信長公のお屋敷で間違いないかな?」
「そうだぎゃ、織田の殿様の家だぎゃ。おめーさん、どこかの国の使者かの?朝鮮?明?」
こんなおかしな格好しているのは、外国人だろうってか?まあ、大昔の常識じゃ、こうなるか。
「いいや、俺は日本人だ。こんな格好にも理由がある。まあ、話したところで分かってもらえるとは思えないほど奇妙な理由だがな」
「ほぉー、まあ、しゃべり方も、どことなく関東訛りが感じられるが、まあ、異国人よりはまともな言葉遣いだな。おい下人達。この方の縄、ほどいてやれ。あやしい格好はしとるが間諜ではねーじゃろ」
ということで俺は簀巻き状態から開放されて、木下藤吉郎に案内され、お館様、つまり織田信長のもとにお目見えする事となる。
さて、これから先、宇宙の管理者は俺に何をさせたいのだろうか?
間違えてしまえば俺達の銀河系を含む銀河団内部でしか調査・探検は許されないんだよな、これ。




