フロンティア、試しを受ける その1
ちょっと、今までとは雰囲気変えます。
フロンティアの新しい冒険を、お楽しみ下さい。
これからしばらく、貴方の目は貴方の身体を離れて、この不思議な物語に引きこまれていくでしょう……
「おい、フロンティア?!何なんだ、この異常な振動と、フィールド推進でも消せない慣性を伴った衝撃は?!」
「わ、分かりません!周辺の宇宙空間に異常は認められないのです、マスター!ただ、この宇宙船フロンティアのいる時空間が変になっているとしか考えられません!」
「何だと?おわっ!」
俺は横殴りの衝撃に吹っ飛ばされて、コントロールルームの壁に、したたかに身体を打ち付けてしまう。
フィールド推進のフロンティアに、こんな馬鹿な事態が起ころうとは……
あれは、この事件の前兆だったのかも知れない……
俺は、前夜に見た悪夢の事を、思い出していた……
「それじゃ、当分は異常も何も起きなさそうなんで、俺は寝るとするよ、フロンティア」
「はい、大丈夫です。私が船の制御とモニターは続けておりますので、マスターは、ゆっくりお休み下さい」
「プロフェッサーは?いないようだが」
「彼は彼で、このところのアンドロメダ付近の銀河集団スターマップを作成中です。当分は、これに集中するでしょう」
「あ、そうか。了解だ、じゃ、おやすみ。何かあったら知らせてくれ」
「はい、マスター」
という会話があって、俺はいつものように、宇宙船とは思えない寝心地のベッドで寝てたんだが……
久々に悪夢を見たのだ。
これは、夢だよな。
俺は、そう感じていた。
何もない空間……
しかし、宇宙空間のような無の空間かというと、そうではない。
何もない、だだっ広い空間が俺の回りに広がっている。
そんな感じだ。
その中に、俺という人間が一人だけ存在している。
俺の中の別人格が、これは完全に夢だと伝えてくる、が、俺には、ただの夢だとは思えなかった。
〜 地球人よ。お前は、まだまだ未成熟な種族であり、個体でありながら無謀にも己の所属する宇宙を超えようとしている。お前は、その行動に値するものかどうかの試しを受けねばならぬ 〜
テレパシーだという事は分かる。
分かるが、これは俺よりも、ずっとテレパシーを使い慣れた存在、言うなれば俺が武道の初心者だとするなら、この存在は有段者、いや師範クラスだろうな。
それほどの格の違いを感じるテレパシーである。
〜 ほう、儂の使う念話と、お主の使う念話の格の違いが分かるか。未熟な地球人だと思ったら少しはできる奴じゃったか。それなら、この試しも切り抜けられるじゃろう。良いか、力でねじ伏せようとするなよ、それは最悪の結論じゃぞ 〜
何か試練に遭うのか、俺は。
今までも力や武力に頼ろうとは思わなかったさ。
トラブルってのは根本的に解決しなきゃ、その場しのぎじゃダメなんだよ。
〜 ほほう、今までの道中でも武器には頼らなかったか?まあ良い、お主が起きて、しばらくしたら、この船ごと試しの世界に放り込む。そこで、見事、問題を解決して見せい!さすれば、これからの旅も見守ってやろうぞ 〜
見守るって、あなたは神様ですか?
こっちは宇宙探検で忙しいんですけれど……
〜 儂が上位者だという事は、うすうす理解しているようじゃな。儂は、お主のいた太陽系や銀河系、アンドロメダを含む銀河団の守護をしている存在じゃ。普通、あまりに存在平面が違いすぎるので、こんな事は滅多に無いんじゃぞ 〜
ふむふむ、銀河団の守護者ですか。
いわゆる「宇宙の卵の管理者」ですね?
〜 鋭いの。そう考えてもらって構わぬよ 〜
それで、その守護者あるいは管理者が何故に私ごとき存在に「試し」など与えます?
私は宇宙船フロンティアで宇宙を旅してるだけの存在ですよ?
〜 いや、その宇宙船フロンティアが問題なんじゃよ。その宇宙船は銀河団空間の調査用に作られておるじゃろう?儂の管理する銀河団から出る事のできる存在というのは実は特別なものになる 〜
はい?
あなたは管理するだけじゃなくて規制もするんですか?
〜 普通の宇宙船が銀河団から飛び出るような性能を持つと思うかね?そんな性能を持つ宇宙船を造れる文明など、ほんの僅かな可能性にすぎないほどの数しか無いぞ 〜
まあ、そりゃそうですよね。
理解は出来ます。
ということは自分の所属する銀河団を飛び出るような存在は、あなたと同等の存在となる、ということでもあるんですか?
〜 お主、本当に、あの未開で未熟な地球人か?とてつもなく頭が切れるのぅ。ま、ぶっちゃけ、そういう事じゃ。儂の管轄を飛び出すということは儂と同等の思考存在と認めるという事と同じ。じゃから、その前に銀河団を飛び出す資格があるかどうか試させてもらう。そういうことじゃ 〜
理解は出来ます。
凶暴な性格や、侵略者として銀河団を超えるものが出てきたら、それこそ「宇宙の迷惑」ですからね。
〜 飲み込み早いんで、こちらも楽じゃ。では、お主が起きて数時間後、試しに入るぞ。覚悟しておけよ 〜
ガバッと飛び起きたのが、数時間前。
嫌な夢を見たと、その時には思ったんだが、あれ、夢じゃなかったんだな。正夢だった……
全面モニタ表示に変化が起きる。
宇宙が絞りこまれているような、そんな渦巻き状の模様が見える。
ブラックホールではないのが救いだが、それの中心にフロンティアは吸い込まれていく。
嘘だろ?
フロンティアほどのエネルギーがあっても抵抗できないのか?!
中心部へ接近すると、その衝撃で俺は気を失ってしまった。
船は、どんどん近づいて……消えてしまった……
まだまだ、土台を借りるリクエストは受け付けてますからね。
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