名も無き星からの船 その十一
ようやく、ここまで来ました。
タイピングは驚くほど進むけど、本当に時間を進めるのが大変!
作者本人も、いらだちます。
僕は、いや、僕らは焦っていた。
居住区に保安班が乗り込んできて僕らを監視し、異能力で異星人とコミュニケーションさせまいと宣言してから12時間が過ぎた。
異能力検知器は、どれも安全範囲内から逸脱するような動きはないようだ。長老が手向かいするな、と異能者の皆に宣言してくれたおかげで保安班の誰も捕縛や電磁バトンによる制圧は行っていないのが救いだ。
でも、制動噴射のための小型水爆の爆発は間隔が短くなっている。
そろそろ、宇宙船フロンティアとのランデブー速度に近づいてきているようだ。
僕らは、異星人との対面に顔を出すことはおろか、テレパシーによる交信、千里眼による現場の幻視すらも禁じられた中で、じりじりしながらも、その時を待っている状況だ。
「保安班リーダーさん、非常事態だということは理解していますから、このままの状況は受け入れましょう。でも、船内カメラでの異星人との初の会見場面だけは見させて貰えませんか?どうせ、他の居住区では映像を配信してるんでしょ?」
僕は、せめてもの情け、と提案すると、保安班リーダーは、どこか(たぶん、先頭部グループの人だろうな)へ連絡入れて、ちょっと押し問答やってた。
だけど、すぐに回答はくれた。
「坊や、いや、今はサミーだったか。君の提案は通ったよ。手近なスクリーンに、今から他の居住区でも見られている共通映像を映すから、それで我慢してくれ」
リーダーさん、いい人だったようだ。
死神なんて呼んでて、ごめんなさい。
しばらくすると、先頭部の映像が映る。
もう、レーダーなんか不要だったみたいだ。
宇宙船フロンティアの航行映像が、世代宇宙船のコントロールルームからも容易に見える。
一言……
巨大な船だった。
全長は、この世代宇宙船と同じくらい、およそ500kmはあるだろう。
それが球形なんだ、あの千里眼の能力は確かだった。
こちらのように、どこが前後か左右、上下なんてありはしない、ほぼ完全なる球形の小惑星。
コントロールルームがどこかも分からないし、どのように推進しているのかも理解不能(噴射口も、爆薬排出口も無かった)
船長以下、さすがの先頭グループも、想像を超える宇宙船(と言っていいのだろうか?)を目前に、驚きが隠せないようだ。
まあ、市民の中に居る過激派も、この超科学の産物を一目見れば、フロンティアに敵対しようなんて考えは無駄だと思うだろうけどね。
仮のお父さんだった人の意見では、この速度でもフロンティアは世代宇宙船とランデブーしようと思えば可能らしい。
でも、こちらが対応できないから危険ということで、もう少し速度が落ちるのを待つようだ。
「一号宇宙船へ、こちら宇宙船フロンティア。ずいぶんと速度は下がったみたいだな。ランデブーについて、そちらの都合はどうか?」
通信が入る。
副船長らしき人が答える。
「宇宙船フロンティアへ、こちら一号宇宙船。こちらからも、そちらの船体が見える。しかし、こちらとそちらでは、宇宙船の形が全然違うのだが、ランデブー可能なのか?」
僕もそう思う、フロンティアの、どこにドッキングポートやドッキングベイなどあるんだろうか?
しかし、フロンティアでは、そのように考えていないようだ。
「一号宇宙船へ、こちら宇宙船フロンティア。ドッキングするわけじゃないから大丈夫だ。こちらの搭載艇で、そちらを訪問する。そちらの搭載艇、あるいは作業艇の発進口はどのくらいの大きさだろうか?それに合せた大きさの搭載艇で行く予定だ」
え?
搭載艇で来るって?
じゃあ、今の速度じゃ危険なんじゃないか?
と、僕と同じ意見だったらしい副船長が、
「それでは、もっと速度を下げないとダメだろうな。そちらの搭載艇の速度では作業艇の発進口に来ることは自殺行為だ」
しかし、相手の返事は想像を超えていた。
「大丈夫だ。こちらの搭載艇は最低でも亜光速まで出せる。さすがに&%$航法が可能な物は小型と超小型には少ししか無いが」
今の言葉にならなかったものは恐らく「光を超える航法」だろう。
僕らの科学力が生み出していない物に対しては、相手の言葉が通訳できないんだ。
すごい、すごい!
今、僕達は、前人未到の体験と知識、そして力を持つ、まさに「神の如き存在」を相手にしているんだ!
「それでは、ランデブー体制に入ろうと思うが、いかがか?宇宙船フロンティアへ、一号宇宙船より」
「こちらは問題なし。そちらの船長より、作業艇の発進口の規格をもらった。これなら、小型搭載艇で充分に通過できるだろう。では、30分後に会おう!以上」
「こちらこそ、楽しみにしている。お待ちしているよ、宇宙船フロンティア。以上」
通信は終わった。
いよいよ、異星人との対面が待っているのか!
スクリーンに映った画像とは言え僕も異能者の皆も、そして僕らを規制している保安班の人たちまで、その異様な雰囲気に飲まれている。
10分ほど後、宇宙船フロンティアの地面としか思えない一点が開き、小型搭載艇と向こうが呼ぶ物が発進してきた。
僕達は、その搭載艇の動きに息を呑む。
どういう原理かしらないが地表に現れてフヨフヨと漂っていたと思ったら、いきなり見えなくなったんだ。
いや、言葉を変えよう。
僕達の目には追えなかったんだ。
多分これを撮影しているカメラが、あまりの速度差に付いて行けなかったためだと思うんだけど、それほど急な加速をして、その搭載艇は次の瞬間、僕らの目の前にいた。
こんな馬鹿げた加速を僕らの世代宇宙船の作業艇にやったらどうなるか?
作業艇はバラバラになり僕達の体は一瞬で押しつぶされてしまう。
科学力の違いは、ここまでの魔法じみた違いになるのか……
ここで数分かけて搭載艇と世代宇宙船の速度差を最小にすると、また、フロンティアの小型搭載艇はフヨフヨと揺らぎながらも静かに作業艇発進口へと入っていった。
船長以下、先頭グループは万が一の事態を考えた非常人員以外を残して、先頭部から作業艇区域へ移動し始める。
カメラも先頭部の物から通路部分へと切り替わり、船長達の行く先を追う。
数分後、作業艇区画に到着した先頭グループは作業艇区画のハッチを開ける。
区画内に入るのは船長一人のようだ。
他にも護衛の為、数人が入ろうとしたが船長が止める。
「危険はあるまい。ここで危険なのは彼ら異星人の方なんだから」
船長、あなたは偉大だ!
やっぱり、船長職を任されている人です!
安全を確認したのか、それから数分後、小型搭載艇のハッチが開き5人の影が降りてくるのが見えた。
逆光になってしまい姿形はカメラに映る映像では、よく見えない。
ようやく船内照明に当たるところまで来ると2名はロボットだと判明する(こちらの技術水準のロボットじゃない、完全なアンドロイドと言ってもいい超高性能なタイプだ)が3名は、まだ宇宙服とヘルメットを取っていないから、よくわからない。
数十秒後、ロボットの一人が船内の空気は安全だと告げると、ようやく3名はヘルメットを取る。
僕達に、そっくりじゃないか!
どこが異星人なんだ?
しかし船長は間近で、その顔を見たようで非常に驚いている!
しばらくして、僕にもその理由が分かった……
彼ら異星人は2つ目だったんだ!
僕らのように額に感覚器としての「目」があるわけじゃない。
その痕跡すらも認められないツルツルの額をしている。
僕らは、しばらく、あっけにとられていた。あまりの驚きに。
坊やの仮の名、シャーラック、とかにしたら良かったかな?と思ってます(笑)




