(7)
それからというもの。
治安維持ギルド員、認定試験の日がやってきた二人は、期待と夢を胸に村を出た。
村の者達は揃ってクロヴィスとリノアンを盛大に見送った。元気に振る舞う者、涙を流す者……様々で、その様子からも二人が愛されているということは言うまでも無かった。二人の旅立ちは村にとっても一大イベントであったのである。
「うう、こっちまで目頭が熱くなる思いでしたね。兄さん」
「ああ。だけど、悲しい顔はしていられないぞ。俺達の始まりはこっからだ。まずはなんとしてでも合格する! 俺達ならやれる!」
「ですね!」
村の住人達の振る舞いに感動するリノアンであったが、クロヴィスの励ましを受けてすぐに元気になる。
二人は新緑豊かな山道を歩いていた。足取りは軽やかである。
二人が目指す先は、聖都セトルトンに存在する治安維持ギルドである。毎年新人の募集を行っており、クロヴィスとリノアンも今回の試験に懸けているわけだ。
「おや、橋の所に誰か居ますね」
歩き続けて幾らか時間が経った頃。
二人は大きな川の前に辿り着いていた。この川を越えていかなければ聖都に行くことが出来ず、川の上には石造りの大きな橋が存在している。
その橋から川の流れを見下ろす、一人の男が居た。クロヴィスよりも少し高い身長で、黒縁の眼鏡を掛けている。頭はツンツンとした黒髪が四方八方に伸びていて、顔、体型共に痩せ形である。歳もクロヴィスやリノアンと同じ程度に見えた。
「こんにちは!」
「こんにちはー」
「ん、こんにちは」
その男へと勢いよく挨拶をするクロヴィス。続けて挨拶するリノアン。そして黒縁眼鏡の彼も二人につられて挨拶を行った。
「川の流れを見ていたんですか?」
「ああ。ちょっといい景色だなと思って、なんとなく見てたんだ。すごいだろ、この光景」
言われてクロヴィスとリノアンは川の方を見る。確かに、彼が言うように橋の上からの川の景色はすごかった。透き通るような綺麗な水が轟々と音を鳴らしながら流れていく。二人も思わず、目を奪われる光景だった。
「もしかして君たちは……聖都に行くのか?」
眼鏡の男は気になった様子で、二人に尋ねた。
「ああ。俺達はこれから聖都の治安維持ギルドに行くつもりなんだ」
「そこで、試験を受けるつもりなんです」
「へ――」
二人の答えを聞いて、眼鏡の男は驚いている様子だった。信じられないような顔で目を開けたり閉じたりしている。
「ってことは……君たちは俺のライバルってことか」
「え、もしかして……あなたも今日の試験、参加されるおつもりなんですか?」
「まあね。一応治安維持ギルド員志望なんだよ。面白い偶然だな」
肩をすくめて答える男。
男の返答は二人にとっても意外であった。早速、自分たち以外の志望者に遭遇したのだ。
「俺はクロヴィス・フリーウェル。光の属性持ちなんだ。よろしくな!」
「私はリノアン・フリーウェルと言います。闇の属性持ちです。私達、兄妹なんです」
「きょ、兄妹!? へぇぇ……兄妹ねぇ、兄妹揃って属性持ちとは……すげぇなぁ」
二人の素性に目を見開く男。
属性の出現は全く持って不確定な要素であり、親が属性持ちだったからといって属性持ちが産まれるわけでは無い。現にフリーウェル夫妻は両方とも属性を持っていなかったりする。にも関わらず闇の属性を持ったリノアンが産まれたりする……というわけだ。家族に何人も属性持ちがいるというのは、希な例だ。
「こっちこそよろしく。俺の名前はレイ。レイ・ミクトラントだ。地の属性持ちさ」
クロヴィス、リノアン、レイはそれぞれ握手を交わした。